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異世界は勇者よりも種馬を求めていた  作者: たてみん
2.勇者事始め

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8/11

8.屋敷の朝

 翌朝目を覚ますと布団の中には俺一人。

 ヒトエさんは昨夜、子作りの儀を終えて少し休んだ後、小さく「部屋に戻りますね」と言って出ていった。

 廊下には夜中でも仄かに明かりが灯っていたので問題なく戻れただろう。


「っと、あまりのんびりしていては家長としての威厳が損なわれるかな」


 実際この世界での家長がどのように振舞っているのかは知らない。

 早寝早起き、謹厳実直なのが好まれるのか、逆に他の人よりのんびりと起き出すくらいが良いのか。

 まぁ、やりたいようにやるか。

 今の所この屋敷の外と交流を持つ可能性があるのかも不明だし、この屋敷のローカルルールをサンポさん達も交えて決めていこう。

 太陽はまだ高くは無いので寝坊はしてないと思いたい。

 俺は顔を洗って台所に顔を出してみた。


「おはようございま~す」

「あ、おはようございます、コースケ様」

「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか」


 台所に居たのはサンポさんとヒトエさんの2人。

 どうやら朝食の準備をしていたところらしい。

 ヒトエさんは別に朝食の担当では無い筈だけど、職業が料理人って言ってたから自主的に手伝ってくれているのだろう。

 動きに違和感は無いし、体調も特に問題ないように見える。


「今日の朝食は何ですか?」

「川魚の良いのが獲れたのでそれを中心に、あとは畑で採れた野菜でサラダと酢の物をご用意します」


 彼女たちの足元にある桶を見れば、なかなかに大振りの魚が何匹も居た。

 動かないところを見ると既に絞めて血抜きをした状態なのかもしれない。

 ただ野菜の姿がぱっと見当たらないんだけど?


「あれ、野菜はどこに?」

「今ナガエとヒサゲが採りに行っています」


 それはつまり、産地直送、朝もぎ新鮮野菜って奴だな。

 農家や家庭菜園をやってる人だけが味わえる贅沢だ。

 俺も召喚される前は畑で季節の野菜を育てては水洗いだけして丸かじりするなど、新鮮さを堪能していた。

 この世界の野菜は恐らく日本のものとは違うのだろうけど、それでも自分の手で収穫した野菜は美味しく感じられる事だろう。


「ちょっとそっちにも顔を出してみます」


 この屋敷の畑は塀の内側にあり、敷地面積の1/3は畑だ。

 塀の内側に作っているのは害獣対策かな。

 ざっと見渡しただけでもほうれん草のような葉野菜からナスやピーマンなどの実を付けるもの。トウモロコシのように背の高いものもある。

 ただやっぱり葉っぱの形などは違うので勝手に手を出すのは控えた方が良さそうだ。


「えっとナガエさん達は、あ、いた。お~い」

「はいー。ってコースケ様。何かございましたか?」

「いえ。散歩がてら朝の収穫を手伝いに来ました」

「はぁしかしコースケ様にこのようなことをさせる訳にも」

「まぁまぁ。土いじりはこっちに来る前の趣味みたいなものでしたから」

「そういうことでしたら」


 渋々というか『え、勇者が畑仕事をするの』と疑問視された感じだったけど、なんとか受け入れて貰えた。

 野菜の収穫方法について説明を受けながら実際に収穫を手伝う。

 一緒に食べ方や味について聞いてみたけど、これも大きく違いは無さそうだ。

 今手に持っているのもナスのような色合いでキュウリの形をした野菜だけど味はトマトなのだとか。

 そのままでも食べられるそうなので失礼して齧りついてみればなるほどトマトだ。


「と、あまりつまみ食いをしてると皆からずるいと怒られそうだな」

「ふふっ」


 冗談めかして言うとナガエさん達は小さく笑ってくれた。

 収穫を終えた野菜は厨房のヒトエさんに渡し、大広間に向かうとそこには先客がいた。


「おっ、コースケ様。おはようございます!」


 元気いっぱいに挨拶してくれたのはフタさん。

 タンクトップに短パン。更に首にタオルを掛けている。


「おはよう。ランニングでもして来たのかい?」

「ええ。朝の空気の中を走るのは気持ちが良いですよ。

 コースケ様も一緒に走りますか?」

「それは良いな。

 ただ手加減はしてくれよ。俺は戦闘系の職業じゃないから」


 フタさんの職業は確認してないけど、この様子だと身体能力が上がるタイプだと思う。

 そっち系の人と体力勝負をしても勝てる見込みはまずないので釘を刺しておかないとあっという間に置いて行かれてしまうだろう。


「それと今日はフタさんの番だから朝食の後は俺と1日行動を共にして欲しい」

「分かりました。何をするかは決めているのですか?」

「まだだ。フタさんがやりたい事があればそれを一緒にするのもありだと思っている。

 行動を共にする目的は二人の距離を縮めることだから」

「なるほど、そう言う事なら狩りに行きましょう」

「えっ」


 狩り。ハンティング。

 もちろん現代日本人の俺はやったことが無い。

 なので確実に足を引っ張りそうだけど、断る理由にはならないか。

 別に何も獲れなくても食べ物に困ってる訳では無いし。


「それでしたら私もご一緒します」


 朝食の席で今日の予定を告げるとサチカさんが同行すると告げて来た。

 屋敷の外に出ることになるので俺の護衛を務めるようだ。

 あと護衛と言えばモミジさんとカエデさんだけど、二人は朝食を食べた後、馬車で近くの街に買い出しに行くらしい。

 ちらっと他の人を確認したが、特に狩りに興味のある人は居ないようだ。

 あとは、あ、そうだ。

 俺はじっとヒトエさんを観察して、首を横に振った。


「どうかなさいましたか?」

「ええ。残念ながらヒトエさんに子供が出来た形跡はありませんでした」

「そうでしたか」


 ヒトエさんのステータスを確認したところ、状態は正常のまま。

 他にもしかしたら胎児のステータスが表示されたりするかもと思ったけど反応は無し。

 子作りしてから反応が出るまで数日かかるという可能性もあるけど、現時点では出来なかったと判断するしかない。

 ただそれを聞いてもヒトエさんに驚いた様子は一切ない。

 女の勘で気付いていたのかもしれないな。



1話で1人進めようかと考えていたのですが・・・

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