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異世界は勇者よりも種馬を求めていた  作者: たてみん
2.勇者事始め

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7/10

7.儀式の前に

 ここでの生活の具体的な話をあれこれ伝えたあと、続いて子作りに関する話に移る。

 あ、その前に長丁場になって来たしお茶を淹れてひと休憩入れることにした。


「さて、じゃあ改めて子作りに関しての話をしていこう。

 まず押さえておきたいのは、子作りは1日に1人ずつ、順番に行っていく」

「えっ1人だけですか!?」

「てっきりこの後4人全員が出来ると思ってた」


 あ~やっぱりか。

 残念ながら男は、というと語弊があるかもだから、俺はそんな絶倫ではない。


「何に例えれば分かりやすいか……そうだな。

 1つの畑で繰り返し何度も作物を育てていると土が痩せるって話は聞いたことがあるか?」


 この質問に全員が頷いてくれた。

 良かった。ある程度教育を受けているか農業に携わったことがあれば知っているという読みが当たった。


「それと似たようなものだ。

 俺という畑から休ませずに何度も子種を収穫していたら最初こそ立派な子種が手に入っても後の方は貧弱な子種しか取れなくなる。

 上手くいけば子供は出来るかもしれないけど、貧弱な子種からは貧弱な子供が出来るのは容易に想像が付くだろう。

 それでも良いんだと言うのなら考えるがそうでは無い筈だ。

 だから1日に1人とする」

「「分かりました」」


 よし、これさえ納得してもらえれば後は難しい事は無い。

 と思っていたのだけどこれも押さえておくか。


「ちなみに子作りの儀を1回しても確実に子供を授かる訳じゃないんだけど、分かっているよな?」

「「えっ!?」」


 これもか。この世界の性教育はどうなってるんだ?

 そもそも1回で確実に出来るならここでの生活のルールとかも決める必要はほとんどない。

 なにせ子供が出来たらすぐに帰るのだから『日帰り子作りツアー』で良いのだ。


「えっと、確かに1回で出来る場合もあるけど、どちらかと言うと少数派だからな。

 俺の世界では男女が1:1でも何か月どころか何年も子供が出来ないってケースもあるんだ」


 日本にも不妊で悩んでいる人はそれなりに居た筈だ。

 ただ俺は不妊治療には詳しくないからどうやって改善していたかは教えられない。

 まぁ彼女らがそうではない事を祈ろう。


「皆もそれなりに長期でここに滞在することになる覚悟をしておいて欲しい」

「それなのですがラキア様。

 彼女たちの滞在期間は最大半年と定められています。

 半年経っても子供が出来ない場合は身体の相性が悪かったと判断し、別の勇者の元に向かう事になります」

「なるほど、了解しました」


 サチカさんからの補足を聞いてちょっと安心した。

 昔の日本では『子供の産めない女に価値は無い』っていう考えがあったから、もしかしたらこの世界でも子作りに失敗したら処分されてしまう可能性があると考えていた。

 でも別の勇者に送られるだけならそこまで心配することでも無いだろう。


「さて。じゃあ早速今日から子作りの儀を始めようと思うが、順番はどうする?

 特に早い方が良い、遅い方が良いなどの希望が無ければさっきの挨拶順にするけど」

「「……」」


 4人はお互いに顔を見合わせた後、特に何も言わずに俺の方に頷き返した。

 てっきりヒトエさんは後が良いとか、ミナミさんは先が良いとか言うのかなと思ってた。

 まぁヒトエさんについては緊張とは別にここに来るまでに子作りの覚悟は出来ていたのだろう。


「じゃあヒトエさんだな。

 ヒトエさんは今日一日俺と行動を共にして欲しい。他の3人は自由行動だ」

「「はい」」


 これで今日の所は解散だ。

 皆が大広間から出ていき残ったのは俺とヒトエさんの2人だけ。

 あ~ヒトエさんの緊張具合がビシビシと伝わってくる。

 これは軽く触れただけでも悲鳴を上げられてしまいそうだ。


「ヒトエさん」

「早速、子作りですか!!」

「う~んいや、まだ早いかな」

「??」

「ひとまず場所を移そう」


 俺はヒトエさんを連れて離れの俺の部屋へと移動した。

 といっても部屋の中には入らずに庭が見える縁側に並んで座った。

 肩が触れないくらいには離れているのだけど、それでも逃げたそうな雰囲気だな。


「あ、そうそう。この離れでの会話は他言無用だから。

 俺も話さないしヒトエさんも見聞きしたことを他言しないように」

「わ、分かりました。

 それであのぉ、まだ早いと仰っていましたが、どういう意味ですか?」


 そのままの意味だけど、そうだなぁ。

 どういったら伝わりやすいか。


「何か良いたとえ話がしたいんだけど、ヒトエさんの得意な物って何?

 あ、聞いても良いのであれば職業とか聞いてもいいかな」

「はい。私の職業は『料理人』です」


 なるほど、じゃあ料理で例えるのが良いか。

 ただ俺の料理っていわば男の手料理だからなぁ。

 それほど難しいものは分からない。


「じゃあそうだな。水と小麦粉を混ぜ合わせる時に、一気に混ぜようとするとダマが出来て失敗するよな」

「はい」

「今の俺達はその水と小麦粉だ。

 このまま勢いで子作りの儀をしても失敗する可能性が高い。

 だからこうして一緒に時間を過ごすことで少しずつ混ぜ合わせていく。

 質問をして相手の事を知ったり、逆に自分の事を話して知ってもらうのも有効だろう。

 そうして程良く混ざり合った状態ならその先の工程も失敗もしづらくなるだろうって話だ」

「なるほど。よく分かりました。

 ですがその例えだと赤ん坊はパンですか?」

「ふっくら美味しいのを作らないとな」

「ふふっ、そうですね」


 おっ、やっと少し笑ってくれた。

 この調子なら大丈夫かもしれないな。

 その後も俺達はゆっくりとお互いの話をして過ごした。


「コースケ様。そろそろお夕飯の時間ですけれど」

「はい、今行きます」


 渡り廊下の向こうにそっと顔を出したサンポさんに返事をしながら立ち上がった俺はさっとヒトエさんに手を差し伸べる。

 ヒトエさんも臆することなく俺の手を取って立ち上がった。


「夕飯を食べ終えたら子作りの儀を始めましょう」

「はい。よろしくお願いいたします」


 優しく笑うヒトエさんに俺はこの後の成功を確信したのだった。



儀式の内容は秘密です。

次話は翌朝からになります。

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