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異世界は勇者よりも種馬を求めていた  作者: たてみん
1.プロローグ

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4.道中の情報収集

 それから幾つかこの世界の常識について話を聞いていると、ゆっくりと馬車が止まった。

 目的地に着いたにしては早すぎる気がするが、何かあったのだろうか。


「(こんこん)失礼します。開けてもよろしいですか?」

「どうぞ~」


 外から扉を叩く音と共に若い女性の声が聞こえて来た。

 俺はサチカさんを放しつつ返事をした。

 すると恐る恐ると言った感じで扉が開かれ、太陽の光と一緒に女の子が顔を出した。


「今から30分ほど休憩です。

 座りっぱなしでお尻痛くなってると思いますし、外の空気をお吸いになりませんか?」

「それは良いですね。ぜひ」


 暗くて狭い空間はそれ程苦にはならないけど、お尻は痛かったから助かる。

 外に出てみればすぐ近くに川が流れている草原で、川で馬たちに水を飲ませるのも兼ねた休憩のようだ。

 今声を掛けてくれた少女の他にもう1人、馬の首を撫でて労をねぎらっている少女も居た。

 どちらも見た目は中学生くらいで、彼女らが御者をしてくれていたのだろう。


「俺は幸助。君たちの名前を聞いても良いかな?」

「はい。わたしがモミジであっちの子がカエデです」


 カエデと呼ばれた少女は俺達の会話が聞こえたのかこちらを見て小さく会釈した。

 人見知り、いや物静かなだけかな?

 逆にこっちのモミジって子は人懐っこい性格らしく、遠慮なく俺に近付いて見上げるように顔を覗き込んで来た。


「……コースケ様は本当に男の人ですか?」

「え?」

「これモミジ。失礼ですよ」

「ごめんなさ~い」


 すぐにサチカさんに窘められていたけど、俺って男らしくないのか?

 あ、いや待て。

 この世界では男は異世界から召喚された人だけ。

 目の前の少女が男を見たのはこれが初という可能性は高い。

 なら男性は物語のなかか都市伝説みたいな幻想の生き物かも知れない。


「モミジさんの考える『男の人』ってどういう人物像か教えてくれるかい」

「えっとね。粗野で乱暴で私達を奴隷のように見下す子作り以外に価値のない生物だって聞いてました」


 誰だそんなことを教えたのは。

 ちらりとサチカさんを見れば慌てて「私じゃないです」と手を振っている。

 まぁ多分この世界の常識、もしくは子供をしつける時の方便なのかな。


『悪い子は男の人に食べられてしまうんだよ』


 的な。いや鬼か化け物か。

 ただそれだと注意しておかないといけない。


「俺が本当にそういう生き物だったらさっきの質問を聞いたら凄く怒ってモミジさんに暴行を加えてたかもしれないから気を付けるんだぞ」

「はぁい。でもコースケ様からはそういう雰囲気は全然感じなかったから大丈夫かなって」

 

 天真爛漫なこの感じ、娘の小さい頃を思い出すな。

 この子も大きくなったら肝っ玉母ちゃんになってしまうのだろうか。

 それとさっきから気になってることがあるのでついでに確認しておこう。


「その背中に担いでるのは何だ」

「これですか?見ての通り戦斧です」


 ブオンと重厚な風切り音をたてながら振り抜かれたそれは、人間くらいなら軽く両断出来てしまいそうな凶暴な光を放っていた。

 モミジさんは軽々と持ってるけど絶対重いよね。

 というかこの細い体のどこにそんなパワーが?

 俺は失礼かなと思いつつ彼女のステータスをこっそり見せてもらう事にした。


名前:モミジ

年齢:14歳

職業:重戦士

職業レベル:11

状態:正常


 年齢は見た目通りなんだけど、職業が重戦士か。

 この職業って今どういう仕事をしているかとは別っぽい。

 ならサチカさんも暗殺を生業としている訳ではないのか?

 ひとまず今は話を合わせておこう。


「凄い力だな」

「えへへ、そうでしょう。

 わたしこう見えても職業が重戦士なんですよ!」


 あ、この職業って本人も分かってるのか。

 なら突っ込んで聞いてみよう。


「その職業って何なんだ? 俺の元の世界には無かったんだが」

「職業は10歳になったら神様から授かる特別な才能の事です。

 わたしの重戦士は重い武具を軽々と振り回せるようになりますし、カエデちゃんのそげひひゅはいへふ~」

「他人の個人情報を勝手に話そうとする悪い口はこれかしら」


 いつの間にかモミジさんの背後に回ったサチカさんがその口を引っ張っていた。

 この反応からしてやっぱり職業はおいそれと他人に話すべきものでは無いようだ。


「その調子で今回の任務の内容やコースケ様の事を少しでも他人に漏らしたらその場で首を刎ねますからね」

「き、肝に銘じておきます」


 うっすら殺気を漂わせた言葉にモミジさんは身動き一つ取れずに返事をした。

 これが暗殺者の能力か。

 サチカさんだけは怒らせない様に気を付けないと。

 俺の職業『勇者』がどういう能力かは分からないけどレベル2ごときでは絶対に勝て無さそうだ。

 それは兎も角ちょっと気になったのだけど。


「俺って極秘事項なんですか?」

「もちろんです。勇者召喚はそう易々と行えるものではありません。

 必然的に勇者様の身柄は希少性が高いのです。

 その結果、近隣諸国を始め他種族や盗賊なども隙あらば勇者様を奪おうとします。

 なので召喚を行う場所、日時、召喚後の移動先など全てが秘匿されます」


 なるほどそう言う側面もあるのか。

 俺はずっと俺達召喚された奴らが安全かどうかを見定められてるとばかり考えていたが、それだけでは無かったらしい。

 ということはモミジさんの戦斧も盗賊などからの襲撃に備えてのものかもしれない。

 

「これも聞いちゃいけないのかもですけど、コースケ様は強いのですか?」

「え、あぁ弱いよ。間違いなくこの4人の中で最弱だ」


 一応護身術くらいは修得したけど実戦経験は無いし、あったとしても対処できるのはナイフを持った暴漢くらいだ。

 決して巨大な戦斧を振り回す相手を想定してない。

 正面から戦えばまず間違いなく負ける。というか即死だ。


「だからもし襲撃があったら守ってくれ」

「まかせてください!」


 俺の頼りないお願いにも軽く頷く彼女は多分実戦経験あるんだろうなぁ。

 やっぱり彼女らに敵認定されない様に頑張ろうと何度目かの誓いを立てたのだった。



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