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異世界は勇者よりも種馬を求めていた  作者: たてみん
1.プロローグ

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3/6

3.屋敷に向けて

最初の想定ではすぐに屋敷に到着するはずだったのですが・・・

相変わらずプロット全無視で突き進んでおります。


 食事を終えた俺はサチカさんの案内に従って一晩の宿となった部屋を後にした。

 複雑な迷路のような廊下を通り抜け遂に建物の外へと出て来た。


「おぉ」


 思わず声が出てしまうほどの抜けるような青空。

 露草の匂いを孕んだ空気は大気汚染とは無縁だ。

 そして屋敷の正面にずらりと並ぶ馬車は数えてみれば23台。

 それを見て思考が引き戻される。

 なぜか。これら全てに昨日召喚された男達が1人ずつ乗り込むと考えると台数が足りないからだ。

 もちろん遅れて到着する馬車もあるかもしれないし明日出発する人もいるのかもしれない。

 でももしかしたらという思いもある。


「コースケ様。こちらです。どうぞお乗りください」

「あぁはい」


 案内された馬車の1つに乗り込むとサチカさんも一緒に乗ってきた。

 てっきりサチカさんが御者をするのかなと思ったけど違うらしい。

 扉が閉まると程なくして馬車が動き出した振動が足元から伝わってくる。


「乗り心地が悪くてすみません」


 謝られても、とは思うけど確かにガタゴトと結構揺れる。

 速度自体は速足くらいだと思うんだけど地面の舗装が良くないのだろう。

 先ほど見た地面は砂利を敷き詰めたものだったし外の道はそれ以下だろう。

 車内に椅子のようなものは無く、床に厚めの布が敷いてあるのでその上に胡坐をかいて座っている状態だ。

 天井付近に明かり取り用の隙間が空いている他は窓の類は無く外の様子は窺えない。


「目的地まではどれくらいですか?」

「夕方には到着する予定です」

「……なるほど。じゃあこっちに来てもらえますか?」

「分かりました」


 この世界の1日が地球の1日とどれほど違うかは分からないが今朝起きた感じ、夜の長さはそう変わらない気がした。

 なら夕方まで10時間くらいはあるのだろうと思って呼び寄せたのだけど。

 何故か俺の前まで来たサチカさんはうつ伏せに寝転んだ。


「どうぞ」

「えっと?」


 促されても彼女の意図がまるで分からない。

 時間があるからここで子作りしましょう、と言う感じでもない。

 仮に求められてもこの振動の中で行うのは事故が起きかねないので断っただろうけど。

 動かない俺を見て間違えたと察したのかうつ伏せのまま問いかけて来た。


「長時間の振動が耐えられないので私に椅子になれ、という事ではないのですか?」

「全然違うというかむしろ逆です」


 どうやら俺はまだ女を椅子代わりにする変態鬼畜野郎だと思われているらしい。

 何とも心外な話だ。

 これでも誠実な男だと自負しているんだが。


「ひとまず起きて貰って。

 俺が言いたかったのは振動が厳しいからこっちに来て俺の膝の上に座りませんかってことです」

「え。ですがそれではコースケ様の負担になってしまいます」

「女性1人くらいなら大した負担ではないですよ。

 むしろ体が安定して良いかなと思うくらいです」

「はぁ。じゃあ失礼して、って本当によろしいのですか?」

「どうぞどうぞ」


 サチカさんは凄く遠慮がちに俺の膝の上にお尻を触れさせた。

 うん、ものすごく軽い。というか体重掛けてないな?

 空気椅子のようなむしろキツイ体勢になってしまっているので仕方なく腰に手を回して引き寄せる。


「きゃっ」

「あ、離れたくなったら言ってください。

 俺も無理にこの態勢で居たいって理由は無いので」

「わ、分かりました」


 少しの間もぞもぞとした後、サチカさんはようやく体重を俺に預ける覚悟を決めたようだ。

 それでもやっぱり重さはあまり感じない。

 むしろちょっと抱き枕感があって楽まである。

 さて、じゃあ後はまだ聞けてないあれこれを質問させてもらおうか。


「子作りに関してですが」

「はい」


 『子作り』の言葉を聞いて意識を切り替えるサチカさん。

 俺としてもその方が話しやすいので助かる。


「子供が出来たかどうかはどうやって判断するんですか?

 俺の居た世界だと特殊な薬品を使うか、子作りしてから2か月くらい待たないと分からないのですが」


 要するに妊娠検査薬を使うか、生理が来なくなったり悪阻が来たり、という話だ。

 この世界にそういった薬があるのかは分からないし、1回子作りしたら1月待って生理が来るようならまたやって、では気長過ぎるだろう。

 そんな俺の心配は、予想外の方向から解決策が提示された。


「異世界から来た勇者さまにはそれが分かる能力があると聞いています。

 確か【ステータス鑑定】と呼ばれているものです」


 ステータスに鑑定って、なんか一気にファンタジー感が出て来たな。

 問題はどうやって使うのか。

 試しにサチカさんを見ながら(ステータス出て来い)と念じてみる。

 するといとも簡単にそれっぽい表示が出て来た。


名前:サチカ

年齢:31歳

職業:暗殺者

職業レベル:27

状態:正常


「あっ」

「どうしました?」

「いえすみません。そのステータス鑑定というのを試してみたら急に目の前に出てきたもので。

 えっと、見た人の名前と状態が分かるみたいですね。

 状態は正常って事は多分まだ子供は出来てないんだと思います」

「そうでしたか」


 危ない危ない。

 咄嗟に名前と状態(だけ)が分かると伝えたけど、ここで間違って「サチカさんって職業は暗殺者なんですね」などと口にしたら今夜のターゲットが俺になっていたかもしれない。

 でもこれで確信が持てた。

 やっぱりこの世界の人達は異世界から召喚した俺達の事を警戒している。

 当然と言えば当然だ。

 常識もまるで違う奴らが来るのだ。

 最悪、強盗や殺人が正義という俺から見たら犯罪者か精神異常者がくるかもしれない。

 そうじゃなければ最初の召喚の部屋にあれだけ大勢の警備を配置する必要もなかったはず。

 だけどなぁ。

 この一見穏やかで争いごととは無縁に見えるサチカさんが暗殺者とは。

 人は見かけによらないとは言うが女性は特に謎だ。

 ちなみに俺のステータスはこんな感じだった。


名前:コースケ

年齢:61歳

職業:勇者

職業レベル:2

状態:正常


 肉体は若返ったみたいだけど年齢はそのままらしい。

 職業が勇者なのはともかくレベル2とは。何かレベルが上がるような事があっただろうか。



ステータスが出ますが、今後そこまで重要視しない予定です。


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