23.(閑話)勇者たちのあれから
とある王国の会議室。
現在そこでは1つの資料を前に大臣たちがため息をついていた。
「やはり今回も前回同様の結果ですか」
「はい。召喚した勇者31名。
内6名は致命的な問題ありとして初日に処分されました」
「そこはある意味くじ運のようなものです。問題はその後でしょう」
資料には続いて残りの25名がどうなっているかが記載されていた。
『行方不明4名』
『死亡3名』
『心身に異常をきたした者15名』
行方不明というのは誘拐や逃亡など、姿をくらまして生死が分からない者を指す。
この場合、責任が誰にあったとしても警備に当たっていた者たちには厳しい罰が待っている。
だからその人達がわざと勇者を逃がしたとは考えにくい。
以前、警備員の数を今の3倍に増やしたこともあったが効果はいまいちだった。
屋敷周辺に罠を仕掛けたり、いっそ屋敷ではなく要塞のような場所に軟禁するという案も出たが解決には至らなかった。
なので1割程度なら仕方ないという意見も出ている。
続いて死者について。
これもある意味仕方ないと片付けられている。
死因は病死や事故死ではなく全員他殺であり犯人も捕まっている。
犯行の動機も2人は子作り中に命の危機を感じて咄嗟に手を出してしまったというもの。
残りの1人は先にその勇者のところに子作りに行って廃人になって帰ってきた姉の復讐だと供述している。
屋敷の者に確認したところ死亡した3人はいずれもかなり素行が悪かったらしく、彼女らじゃなくてもいずれ誰かが殺していただろうという評価だった。
「問題は残りの15人だ。やはり原因は分からないのですね?」
「はい。各種魔法も駆使して検査しましたが、病気はもちろん、毒や呪いなども検出されませんでした」
「屋敷の管理人たちにおかしくなる前に何か気になる言動は無かったかと確認しましたが全員が何も無かったと回答しています」
「勇者たちが来た世界特有の病気の可能性も考え、それとなく聞いてみましたがそんな病気は聞いたことが無いと言われたそうです」
「う~む、いずれも過去に召喚された勇者たちと同じですか」
勇者召喚から3か月で無事なのは僅か3人だけ。
その3人にしてもいつ異常を訴えるのか分からない。
半年前に隣国で召喚された勇者は既に全員が死ぬか植物人間状態だ。
だから自分達の対応だけが悪い訳ではないのも確か。
じゃあ何が原因なのか。
この議論は各国でもう何年も繰り返し行われているが一向に解決の糸口が掴めていない。
ある国ではもう解決を諦めて、1月経ったら薬物と魔法で思考力を奪い子作り人形として扱っている。
ただそれでも耐用年数は1年に満たないらしい。
室内には再び深いため息が漏れる。
「勇者召喚も安くは無いのだが」
「やはり他種族のオスに協力を求めるべきでは」
「『犬に嚙まれたと思って諦めろ』ですか。
人の尊厳を失ってまで子供が欲しい人はまず居ませんよ」
「隣人としては頼りになるのですが、子作りとなると生理的に受け付けないんですよね」
その言葉に全員が頷く。
種族問題はそう簡単に解消できる問題ではないらしい。
「過去の事例も含めて長生きする勇者に共通の特徴は無いのか?」
「強いて言えば偏食家が多い傾向にありますが例外も居ますからねぇ」
偏食家。要するに子作り相手に求める条件が厳しい勇者の事だ。
例を挙げれば、身長は140センチ未満かつ胸囲はEカップ以上とか。金髪のロングヘアで釣り目で性格が厳しいとか。体重が90キロを超えてないとダメとか。
該当する人物が居ない訳では無いが、この世界ではあまり一般的ではない。
あまりに偏食が酷いと強制コースに切り替えることになるが、そうすると勇者の寿命が短くなる傾向にあるので難しい。
「例外はこの勇者ですね。
偏食家の逆で雑食とでも言いましょうか。
まさか外見にも種族にも頓着しないとは、ある意味理想的な勇者です」
「えぇ。惜しむらくは小食というか1日に1人しか相手をしないそうです」
「出来ない訳ではないのでしょう?
現に先日は事件解決の為に送られた者たちを4人ずつ相手にしたと書かれています」
「はい。しかしその後はまた1日1人に戻っています」
「この者なりの拘りという事なのでしょう。
過去にも様々な拘りを持った勇者が居ましたし、彼らは比較的長生きしていたとの報告も挙がっています」
「偏食もある意味拘りですしね」
何も解決策が出てこない。
それもいつものこと。
「残された手段は召喚の頻度か規模を増やすことか」
「それが難しい事はお判りでしょう」
どちらも召喚術師の負担が大きくなりすぎる。
それになにより規模を大きくすると危険な勇者が召喚される可能性が高くなってしまう。
過去にそれで召喚術師が殺されてしまったことがあるので慎重にならざるを得ない。
あれもダメ。これも難しい。
結局今回の会議も何も進展せずに終わるのだった。




