22.呪いさえ無ければ
それから数日が過ぎ。
屋敷には久しぶりの平穏が戻って来ていた。
「うぅ~終わった~~」
「お疲れさまでした」
「ありがと。身から出た錆とはいえ大変だった」
サンポさんが用意してくれたお茶を飲んで一息つきながらここ数日の事を振り返る。
発端はあれだ。
俺の捜索隊として来てくれていた20人。
実際には捜索が始まる前に俺が帰ってきたとはいえ、わざわざこんな辺境の屋敷に来てくれたのだ。
礼の言葉1つで帰らせるのは忍びないから何かお土産を持って帰ってくれと言ってしまった。
俺としては魔獣肉とか近隣で採れた薬草類の詰め合わせになるかなと思ったんだけど。
「まさか全員が子種を求めて来るとは思わなかった」
20人を1日1人で20日も待たせる訳にもいかず。
元々捜索期間は5日程度を予定していたらしいので、ならば1日4人を時間をずらして相手することに。
ニンフ達相手にほぼ休まず3日間動き続けていたので大丈夫だろうと思ったのだけど、あの時は精力を渡す代わりに別のエネルギーを受け取ってたのかもしれない。
ともかく何とか20人全員を相手に頑張った。
ただ今回は本来の子作り候補として来た訳では無いので、成功如何に拘わらず1回だけの約束。
それでも20人中16人も子供が出来たので満足してもらえたのではないだろうか。
出来なかった4人についても『次は子作り候補として来てくれればしっかり相手をする』と伝えておいた。
来るかどうかは本人達の希望と国の意向次第だ。
子作りを希望している人はまだまだ沢山居るらしいし。
そして。
屋敷で働くことになったツゥリさんとカァムさんはというと。
「これを隣町の役場に運んでください。
こちらの手紙は薬師ギルドに。
帰りに買い物もお願いします。リストはこちらです」
「承知しました」
カァムさんは空を飛べる能力を最大限生かして、屋敷と近隣の街を結ぶ運搬役に任命された。
と言っても子供が出来るまでの間なので早ければ今週中にもお役御免となる。
それも見越して今のうちにと仕事を詰め込まれているようだ。
対してツゥリさんは、俺専属の使用人、言い方は悪いけど奴隷という形になり、現在はヤナタさんから護衛の指導を受けている。
「翼人族が鳥人族に劣っているのは飛行能力のみです。
戦いで後れを取ったのはあなたの問題です。
下は森だったのですから森の中を飛べば機動力の差を埋められたでしょう。
そのうえでご主人様を守れる戦闘力を身に着けなさい!」
「はぃぃぃ」
うーん、なかなかにハードな特訓だ。
その合間にちょっとだけ気になっていた事を聞いてみた。
「俺を誘拐した時、翼人族の里に行けば好待遇を約束しますって話だったと思うんだけど、俺の事を翼を捥ぐ趣味がある変態かもしれないって疑ってたんだよな。
それで本当に歓迎されたんだろうか」
「すみません、それただの口八丁で、里に着いたら手足拘束して肉奴隷にする予定でした」
「ヤナタさん。指導量倍で」
「承知です」
俺の質問に正直に答えてくれたツゥリさん。
いや、現在彼女は従属の契約魔法で縛られている為に正直に答えるしかないのだが。
でもそうか。やっぱり安易に誘いに乗るのは危険だったんだな。
「ついでに聞くけど、翼人族の里には翼人族の男性は居ないのか?」
「それはその……私は見たことがありません」
ぎりぎりグレーな回答が返ってきた。
多分公然の秘密という奴なのだろう。
女児しか生まれないという呪いは人族に掛けられたものだという話だ。
なら他の種族には男児が生まれているのではないかという予想は当たっていた。
あれ、でもそれならわざわざ異世界から危険を冒して男性を召喚する必要は無い気がする。
他種族の男性を呼んだ方がこの世界の常識も通じるし良いんじゃなかろうか。
その疑問の答えはヤナタさんが教えてくれた。
「人族の女性は人族以外の男性と子作りすることを酷く拒絶します」
「そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだが」
「それと他種族であっても人族の街で生活していると呪いの影響を受けるそうです」
「なら人族以外は自分の里に戻って子作りしてこいって話にはならないの?」
「それが……これも呪いの余波らしいのですが、男児が生まれると言ってもかなり少ないそうです」
「だから私達みたいな翼の醜い人が優先的に里から追い出される。
戻る為には大きな手土産が必要になるの」
なんとも世知辛い話だ。
やっぱり呪いのせいで生きにくい世界になっているな。
呪いさえ無くなれば新たに勇者が召喚されることもなくなるし、俺も自由に生活できるようになるかもしれない。
ならちょっと俺のできる範囲で呪いについて調べてみるか。




