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異世界は勇者よりも種馬を求めていた  作者: たてみん
3.多種多様な人間模様

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19/24

19.落ちた先は天国か地獄か

 絶賛落下中の俺。

 空気抵抗などを考えても1分と無い筈のその時間は引き延ばされ、世界はスローモーションになっていた。

 多分死に直面した時のあれだ。

 視界の端で意識を取り戻したらしいツゥリさんと。そして慌ててるカァムさんの姿が視えた。

 カァムさんは急いで俺に追いつこうとしてるけど残念ながら間に合わないな。

 先に下の森に突っ込む。


(このまま死ぬのはちょっとな)


 無駄かもしれないけどギリギリまで足掻こう。

 この世界なら即死さえしなければ魔法とかポーションとかで復活できる可能性もあると思うし。

 俺はまだ時間の流れがスローになっているのを頼りに全身に魔力を巡らせつつ接近する樹木を見定める。


(ここだ!)

バキッ


 まずは樹の先端に近い枝を踏み抜く。

 枝はあっさりと折れてしまったけど、それでも多少は落下エネルギーを削れたはず。

 同じように両手両足を使って届く範囲の枝をへし折っていく。

 続いて樹皮を削る勢いで幹に踵を擦りつけてギリギリまで速度を落とし、もう地面が目の前という所で蹴り飛ばして真下への落下エネルギーを横方向に変換する。

 後は反対の足で地面を踏み膝を使ってエネルギーを吸収しつつ転がる。


(よし、即死は回避した。けど)


 多分骨の2,3本は折れたか罅が入ったんじゃないかな。

 まぁ生きてるから良し。

 あとは上手く止まれれば、と考えた所で地面の感触が消えた。


どぼんっ

(げっ)


 水に落ちた。流れの速さからして川か。結構急流だな。

 泳いで岸にたどり着くのは厳しい。

 なにせ落下の衝撃でダメージを受けた手足が満足に動かせない。

 落下死の次は溺死の危機か。


「ぶはっ」


 何とか水面から顔を出し息を吸う。

 ついでに上空に目を向けてカァムさんの姿を探したけど見つからず。

 落下地点は森だし大分転がって移動したから俺の事を見失ったのか。

 ツゥリさんの姿も視えないし、もしかしたらまだ戦っているのかもしれない。

 そして再びの浮遊感。

 今度は滝か。

 俺は成す術なく滝つぼへと落ちて行った。


……

…………

………………


 気が付くとそこは天国だった。

 深い森の奥。木漏れ日が差し込みキラキラと光を反射する泉のほとりで絶世の美女達が羽衣1枚を身に纏ってうふふと笑いあっている。

 しかもその美女たちが俺が目を開けたことに気付いて嬉しそうに笑うのだ。

 落下時の痛みも消えてるし、死んで天国に来たのか夢オチのどちらかだろう。

 ただ、そうじっと見られるのも落ち着かないものがある。


「えっと、俺の顔に何かついてる?」

「あらあら、言葉が通じるのね。流石勇者だわ」


 これまた鈴を転がしたような笑い声と共に返事が返ってくる。

 って、あれ、そうか。俺の事を勇者だというってことは、ここは天国じゃない?


「ひとまず助けてくれてありがとう、で良いのかな」

「そうねぇ。あのまま放置してたら死んでしまってたでしょうし」

「うん。それでここはどこで君たちは何者なんだろう」

「ここは私達の住処。人間たちは私達の事を『ニンフ』と呼んでいるわ」


 ニンフというとあれか。水の精霊的な存在。

 言われてみれば人間離れした整った容姿をしているし、あっちでは水の上を歩いてたりしてる。

 お陰で天国と間違えたんだが。

 よっと立ち上がって気付く。俺裸じゃないか。

 彼女らが一切顔色変えずに俺の全身を視界に入れてるのは精霊だからか男を知らないからか。


「俺の服は?」

「あそこ。ボロボロだったし水吸って邪魔だったから干しておいたわ」


 見れば木の枝に干された俺の服が、所々蔦や葉っぱで補修までされている。

 凄く至れり尽くせりだ。

 ここまでして貰ってお礼だけ言ってさようならは良くないな。


「助けて貰ったお礼をしたい、と言っても俺に出せるものなんて殆どないんだけど何か出来ることはあるだろうか」

「「……」」


 顔を見合わせるニンフの皆さん。

 彼女らは元々ここで何不自由なく生活出来てたんだ。

 特に何もないか、いや。


「子種で良ければ差し出せるけど、要ります?」

「うふふ。人族は呪いの影響でツガイが産まれないんだったわね。

 でもそれは私達には関係のない話よ」

「呪い、ですか」

「ええ、そうよ」


 そう言えば最初に召喚された時にも呪いって話はあったか。

 詳しくは聞いてなかったけど、人族を対象としたものだったのか?

 でもそれだと獣人族や他の種族が俺の所に来たのはなぜだろう。

 何か条件があるのか。

 どうして呪いを受けることになったのかとか、呪いを掛けたのは誰なのかとか、そういうこの世界の話は今まで詳しく知ろうとはしてこなかった。

 無事に帰れたら調べてみるか。

 

「じゃあ子種は要らないですか?」

「ええ。でもそうね。折角元気になったのだもの。

 その精気を分けてもらおうかしら」

「精気……それはどうやって?」

「うふふっ」


 気が付けばすっかり囲まれていた。

 いやその、両手両足をぎゅっと胸に抱え込まなくても逃げないから。

 出来たら1人ずつ相手をしたいんですがダメですかそうですか。

 そして休憩を挟みつつも3日間、彼女らによって揉みくちゃにされるのだった。



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