17.羽色の違う人達
キーネさんとタッキーさんも無事に子供を授かり地元に帰っていった。
続いて入れ替わるようにやってきたのはこれまた毛色の違う2人だった。
「翼人族のツゥリと申します」
「鳥人族のカァムです。座るのは苦手なので立ったままでのご挨拶をお許しください」
普通の人に近い姿だけど背中に翼を持つツゥリさん。
肩から先が翼になっていて膝から下が鳥の足になっているカァムさん。
なるほどその足では出来て体育座りだろう。
「この屋敷の主の幸助です。
無理に畏まる必要は無いので楽な姿勢で大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
「ですがそのぉ、このような醜い私達を受け入れて下さるのでしょうか」
「醜い?」
言われて改めて二人の容姿を確認するけど、醜い??
俺基準だけど、二人とも西洋風の美女だ。ボディラインも整っているし顔の造形も綺麗だ。
実は脱いだら凄いんですよ、の逆みたいな話があるかもだけど、それは今じゃない。
後は何だ?
「すまない。俺には二人が何を指して醜いと言ってるのか分からないんだが」
「「えっ」」
俺の言葉を聞いて二人とも愕然としてる。
多分この世界の常識的な何かなんだろうと思うけど。
こういう時は年の功に頼るか。
ちらりと横に控えているサンポさんに視線を送ればすぐに頷いてくれる。
「コースケ様。
翼を持つ種族はその多くが翼の色によって美醜を判断するのです。
場所によっては里を追い出されることもあるそうです」
言われて改めて二人の翼の色を見てみる。
ツゥリさんは光沢のある銀色の翼。カァムさんは雀を連想させる茶色い翼だ。
「別に醜いとは思わないけど」
むしろ艶があって綺麗とさえ思うけど、二人の恥ずかしそうにしてる様子からして本人はそう思っていないようだ。
多分生まれてからずっと、遺伝なのだとしたら家族も含めて色々言われ続けてきたのだろうから、俺が何か言ったくらいではその価値基準が変わったりはしないだろう。
ただやっぱり無いものねだりだろうか、翼を持たない俺からしたらちょっと羨ましいくらいなんだが。
「確認なのだけど、その翼をじっくり見せてほしいとか触らせてほしいとお願いすることは、君たちの尊厳を傷つけることになるだろうか」
「え、いえ、お望みとあらば構わないのですが」
「なぜそのようなことをしたいのかお聞きしてもよろしいでしょうか」
「一言で言えば綺麗だと思ったから、かな。
もっと説明すると、俺の世界には君たちみたいに翼を持った人は居なかったんだ。
翼を持っているのは鳥類だけで、触るどころか近づくことすら難しい。
だからちょっとした憧れすら抱いている」
「それでしたら最上級の純白の翼を堪能した方が良いのではないでしょうか。
こんな曇り空のようなくすんだ翼ではなく」
「俺の目には銀色の綺麗な翼に見えるよ」
色の呼び方は生まれた国によって変わる。
同じ黒と白を混ぜた色であっても『曇り空』と表現したり『ネズミ色』『セメント色』『銀色』などなど様々だ。
特に日本人は白を表現する呼び方だけでも200種類以上あると言われるくらい細かい。
そして仮に同じ色に視えたとしても呼び方で感じる印象も変わるものだ。
「カァムさんの翼も暖かみのある優しい色合いだと思うよ」
「そ、そんなことを言われたのは生まれて初めてです」
おっと涙ぐまれてしまった。
でも俺の正直な感想だ。
第一印象の『雀のような』と感じたのは『舌切り雀』などの昔話があるように、日本では雀ほど田舎を連想させる鳥は居ない。
身近にいる野鳥はと聞かれて出てくるのは、カラス、ハト、そして雀だろう。
あ、もちろん地域差はあるが。
俺が暮らしていた所でも多くの雀がちゅんちゅん鳴いていた。
「ちなみに二人の基準でいくとどういった翼が良いとされるんだ?」
「翼人の間では純白と漆黒が至高。次いで金色が良いとされています。
その中間の灰色や茶色は汚れた色とされています」
「鳥人の場合は加えて青赤黄などの鮮やかな原色が尊ばれます」
「そうか。やっぱり価値観っていうのは生まれ育った場所で変わるものだな」
ふたりの話を聞いて真っ先に「目に痛そうだな」と思ってしまった。
個人的にはもっと深みのある色の方が好みなんだが。
そういう意味ではそうだなぁ。
「二人は来るべくして俺の所に来たって事なのかもな」
もちろん純白の翼の女性が来ても受け入れるつもりだが、そういう天使やら女神やらを連想させる女性は他の勇者の元に送られるだろう。
容姿は特にこだわらないと言ったはずなのに俺好みの容姿の人が来るのはもう運命と言っても良いだろう。




