14.毛色の違う人達
気が付けばこの世界に召喚されてから2か月近くが経っていた。
初めてヨナさんの妊娠が発覚して以降、他の女性達も無事に子供を授かる事が出来た。
そして入れ替わりで新たにやって来た人たちもほぼ全員が2回目までに子作りに成功していた。
お陰で送迎担当のモミジさんカエデさんが大忙しだ。
ちなみにサチカさんも合間を縫って頑張った結果、無事に彼女も妊娠して里帰りしている。
なので今は別の人が護衛として屋敷に常駐していた。
日々の暮らしも『日常』と呼べるくらいには朝の畑仕事や朝夕を全員で大広間で食事するのも見慣れた光景になってきた。
そしてその全員で集まる時間は大切な情報交換の場でもある。
「以前に比べて体力が付いてきた気がするんだけど気のせいだろうか」
「それは恐らくコースケ様の職業レベルが上がったからだと思われます」
「なぜ上がったのか謎なんですけどね」
夕食の席での呟きにサンポさんが答えてくれた。
自分のステータスを確認すれば現在の俺の職業レベルは42。
サチカさんが27だったことから考えてもかなりの高レベルと言える。
一体いつ上がったのか。
屋敷の外に狩りに行ったのはフタさんの時を含めても10回程。
なので別に魔獣を倒してレベルを上げた訳ではない。
他に考えられるのは……まぁ1つだけだ。
子作りをした人数。子作りをしたらレベルが上がる。いやどういう理屈?
ちなみに回数ならこの倍は行ってる。
そう考えると現時点でレベル42というのは高いのか低いのか。
俺と同時に召喚された他の男性にも同じことが起きているのだとしたら彼らのレベルはもう3桁に届いてるんじゃないだろうか。
『1日1人』と制限を設けている俺は恐らく相手をした女性の人数は少ない筈。
(召喚された当初は役立たずと判断されたら切り捨てられるかもと思っていたが、こうなると逆に生物兵器として重宝されるのではないかと心配になるな)
ただ勇者という職業は戦闘に特化した職業ではない。
どちらかというと万能型。もっと言うと器用貧乏だな。
先日も拳闘士というボクシングスタイルで戦うのが得意な職業の女性と狩りに出たけど、明らかに彼女の方が拳の動きは良かった。
だからレベルが100超えたので戦争に駆り出される、なんて事にはならないと思いたい。
じゃあ勇者がレベルアップしてもあまり意味は無いのか?
この世界には魔王も存在しないらしいし。
俺個人としては肉体が強化されて病気などにはなりそうもないので有難い限りだが。
「あ、そうだコースケ様。
国から連絡があって、近々毛色の違う人を子作り候補として送ってくるそうです。
無理なら断っても構わないが出来れば受け入れて欲しい、だそうです」
「了解。
俺としては変わらず本人が望んでいれば受け入れるつもりだ」
毛色の違う人か。
これまでにやって来た女性を思い返すと、身長で言えば140センチから175センチ。体重も40キロから(ピー)キロと結構幅広かった。
そこから更に違うとなるとどうなるのか。
……流石にニューハーフとかは遠慮したいかな。
いや、男性が居ないんだからニューハーフも居ないか。
などと考えた数日後。
「レッドフォックス族のキーネです」
「グリンフォックス族のタッキーです」
「「よろしくお願いいたします主様!!」」
「あ、うん。よろしく」
俺の目の前に赤い毛並みのキーネさんと、緑の毛並みのタッキーさんが居た。
なるほど獣人か。確かに毛色が違う。さすが異世界だな。
主様というのは尊称のようなものだろう。別に彼女らの主になった訳では無いし。
そしてこの二人が子作り候補として選ばれてここに来ているという事は、この世界には獣人差別のようなものは無いと考えてよさそうだ。
異世界物のラノベの中には『人族至上主義』を掲げて他種族を迫害する、みたいな話があるからな。
そうでないのは良い事だ。
でだ。
さっきから二人が綺麗な三つ指揃えてのお辞儀の姿勢から動かない。
いや、ちらちらとこちらの様子を窺っている感じはするんだけどどうしたものか。
「えっと、楽にしてくれて良いんだけど」
「「は、はい!」」
俺の呼びかけにビクッと反応する二人。随分と緊張しているようだ。
こういう反応には心当たりがある。
なにせこの世界に来てもう40人以上の女性とこうして初めましてをしてるのだから。
「ふたりは『勇者』とか『男性』ってどういう風に聞いてるんだ?」
「それはその……」
「あのあの」
「何言っても怒らないから」
「その、気分を害されると鞭でビシビシ叩かれるって」
「私は家畜のように厩で寝起きするように言われるって聞きました」
おいおい。
このケモ耳ケモ尻尾と腕脚がふかふかの柔毛で覆われてるだけのコスプレ女子大生(だけと言うにはモコモコ過ぎるか?)を、家畜扱いは無いだろう。
仮に指先まで獣で四足歩行な顔だけ人間ですって言うならまだしも、キーネさんとタッキーさんは完全に人間寄りだ。
普通に会話も出来るし。
むしろその鞭でうんぬんはドSな変態勇者だったんじゃないだろうか。
「余所はどうかは知らないが、俺の所ではルールさえ守ってくれれば他の人達と分け隔てなく接するから安心してくれ」
「本当ですか!?」
「ありがとうございます!」
俺の言葉と、ついでに周囲の反応を見てようやく安心する二人。
でも待てよ。待遇についてはその通りなんだけど子作りは問題ないのだろうか。
この際だから一緒に聞いておこう。
「種族が違う場合でも子供って出来るのか?」
「それならご安心ください。過去に実績があります。
生まれてくる子供も全て私達の種族の子供になるそうです」
なら大丈夫か。
あとは文化とか習慣が違ったりするかもだから、その辺を気に掛ければ何とかなるだろう。




