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異世界は勇者よりも種馬を求めていた  作者: たてみん
2.勇者事始め

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10/12

10.狩りの後で

 鹿の返り血をべっとり付けて帰った俺は、まずは着替えて身を清めることにする。

 脱いだ服はナガエさんが洗濯の為に持ち去っていった。

 血の汚れって落ちにくいはずだから頑張ってください。

 続いてヒサゲさんとフタさんが両手にお湯の入った桶を離れの俺の部屋まで持ってきてくれた。

 そう、この屋敷に全身浸かれる風呂はない。

 身を清める場合は大きめのたらいにお湯を張って髪だけを浸したり、手ぬぐいで拭くくらいが精々だ。

 全身を水に浸して洗いたい場合は川や湖で水浴びすることになる。

 さて、ヒサゲさん達は桶を置いたら戻っていくのかなと思いきや戻ったのはヒサゲさんだけでフタさんは部屋に残った。


「身体拭くの手伝いますよ」

「じゃあお願いします」


 背中とか手の届かない場所があるので助かる。

 上半身裸になって背中を向けると早速手ぬぐいで背中を拭いてくれるんだけど。

 その力加減は絹豆腐の表面を撫でるよう。

 女性の肌に触れる時はそれくらい繊細にした方が良いのはそうなのでフタさんの力加減は正しい。

 俺が女性であればの話だけど。


「フタさん。もっと力籠めて貰って大丈夫です」

「そうなの?」

「ええ、雑巾がけくらいの気持ちでお願いします。強すぎたらまた言うので」

「はい」


 気合を入れたフタさんは今度はゴシゴシと良い感じに擦り始めた。

 これはなかなかに気持ちいい。

 背中は任せて前側を拭いているとフタさんの方から話しかけて来た。


「こうして触っているとやはり男性というのは私達とは違うのですね」

「具体的には?」

「ゴツゴツしててまるでオーガのようです」


 誉め言葉なんだろうけどその表現はどうなんだろう。

 間違って女性に「あなたオーガみたいですね」なんて言ったらそれこそオーガのごとく怒りだすと思うけど。

 ちなみにこの世界の女性の肌は日本人とあまり変わらない。

 厳密にはきめ細やかさとか違うんだろうけど、それで言ったら日本の中でも寒い地域の東北と暑い地域の九州でも違う。

 それくらいは個性の範疇で良いだろう。


「背中拭き終わりました。足の方も拭きますか?」


 あーうん。そうなるか。

 彼女の言葉に他意は無い。純粋に善意から言ってくれているのだろう。

 ただ……いやいいか。


「じゃあお願いします。

 それが終わったら子作りの儀を始めましょうか」

「っわかりました」


 床に膝を突いて俺の股を見上げる形になったフタさんを見ながらあくまで平静に。

 この世界で子作りは何ら恥じ入る行為ではなく、ただ子孫繫栄に必要な儀式なのだから。

 ただ、伝えた時に若干緊張したのが気になる。

 初めて行う行為に対する不安か、俺に対する不安か。

 どちらにしても止めるという選択肢がない以上、腹を括ってもらうしかない。

 俺に出来るのは彼女らの負担を減らし、極力満足してもらうことだけだ。


 そうして。

 無事にあれこれ終わってみればフタさんはすっかり元気になっていた。

 この辺は素の体力のお陰かな。

 時刻はもうすぐ夕食の時間。なので改めて軽く汗を拭いた俺達は揃って大広間に移動した。


「今日の夕食はコースケ様が狩ってきた鹿肉を使った料理ですよ」

「「おぉ~」」

 

 どどんと大きな塊の肉はやはり迫力がある。

 この世界でも新鮮なお肉は希少らしく、みんな目の色を変えている。

 そして俺の目の前には一番いい部位が切り出された(らしい)。

 そこからは皆気合で咀嚼タイム。

 いや新鮮な鹿肉って弾力があるというか、噛み切るのが大変だ。

 しばらく無言な時間が過ぎてようやく落ち着いた頃、夕食の場は雑談混じりになった。


「今更ですけど、勇者様を屋敷の外に出して良かったのですか?」

「え?」


 それは俺をこの屋敷に軟禁しておけって話かな?

 などと考えたけどそうでは無かった。


「子作りをして頂かなくてはいけない大事な身体です。

 万が一死なれては私達が子作り出来なくなってしまいます」


 俺の心配、というか俺が死んだり大怪我することで子作りに支障が出ることの心配か。

 いずれにしても俺の身を案じてくれていることには変わりない。

 でも折角なら出発前に言って欲しかった。


「この屋敷周辺に強力な魔獣が確認されたことはありませんし、強力な回復薬も常備してありますので心配はありませんよ。

 それに勇者という職業は幸運を齎す(ごつごうしゅぎ)能力があると言われています。

 現に怪我もなく最大の成果を上げてきたのがその証拠です」


 サチカさんの説明に『幸運』か、と納得する。

 確かにあの時、鹿が真っすぐ突っ込んできてくれたからこそ無事で居られた。

 例えば突進中にジャンプしてきたり、横ステップをされてたら槍は刺さらず俺の方が吹き飛ばされて大怪我してただろう。

 でもそれって幸運というより偶然では?

 俺の職業レベルなんてまだ2だし……って、あれ。4に上がってる。

 鹿を倒したから?

 いやそれでもたった4なのでそこまで効果は出てないと思う。

 ま、無事だったからいっか。今後その幸運が必要になる機会もそうないだろうし。


「ところで野犬の肉は出なかったけど、そっちはどうしたんだ?」

「肉食獣の肉は臭みが強いので生ではちょっと……コースケ様のところではそのまま食べるのですか?」

「いや、聞いてみただけだ。そもそも俺の地元では肉食獣を食べる習慣すらほとんど無かったから」


 日本には熊や猪を食べる文化はあったけど犬猫はペットないし家族枠だ。

 こっちの世界に来ても食べてみたいとはならない。

 流石に他に食べ物が無くて飢え死にしそうなったら覚悟を決めるとしよう。


「毛皮の扱いはどうしますか?」

「そっちも俺には加工技術が無い。任せられるならお願いしたい」

「畏まりました。今日の鹿は初獲物ですので屋敷に飾りますか?」

「その必要も無い。売るなり布にするなり有効活用してくれ」


 貴族や猟師の家では動物の首のはく製を飾っていたりするけど、俺にその趣味は無い。

 いや猟師は趣味でやっているのではなく森の恵みに感謝する、日本の神棚みたいなものだと聞いたことはある。

 みんなの様子を見た感じ、そういう習慣はここには無さそうだから考えなくて良いだろう。


「コースケ様」

「何かあったかな、フタさん」

「今日はあたしの日でしたよね。ならこの後の時間に期待しても?」

「あぁそうだな」


 子作りの儀は1日1人と決めたけど1回とは言っていない。

 本人の希望とお互いの体力が許せば制限を掛けることもないだろう。

 午前中は狩りに出ていたのに元気だ。

 俺も筋トレを怠らない様にしよう。



ひとまず連続投稿はここまでです。

次回以降は週2くらいのペースで投稿していきます。


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