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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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番外編2【眠気との戦い】

※イリア加入前のエピソードです

その日は、猛烈に眠かった。


「ラルク、早く起きて! 朝ごはんを食べた後、一緒にアクセサリーを見に行ってくれるって約束したでしょ!」


ミーシャが毛布を被っている俺の体を激しく揺さぶる。


だが、俺は眠くて仕方がなかった。


だから、嘘をついた。


「予定は明日にずらしてくれないか? 体のあちこちが痛くて起き上がれないし、だるいんだ」


「えっ、大丈夫!? お医者さんを連れてこようか?」


「あ、いや、そこまではいいかな……。寝ていれば治るよ。ミーシャたちは遠慮しないで、朝ごはんを食べに行くといいよ」


俺はわざとらしく咳をした。


「そう? 私たちは出かけるけど、具合が悪くなったら宿の人に言うのよ」


心配そうなミーシャの声が聞こえた後、扉が閉まる音がした。


ミーシャには悪いが、ゆっくり寝かせてもらおう。


その代わり、明日は好きなアクセサリーを買ってやればいい。


そう考えながら、俺は再び目を閉じた。


もう少しで眠りに落ちそうになった時、廊下を誰かが走る音が聞こえた。


「何だよ……。もうちょっとで眠れそうだったのに……」


足音に腹が立ったものの、俺は気にせず眠ろうとした。


しかし、しばらくすると、焦げ臭いにおいと肌を刺すような熱さを感じた。


薄っすらと目を開けると、部屋の壁が燃えていた。


「……な、何でこんなことに!?」


俺は慌てて冷気の魔力を放ち、宿全体を包み込んだ。


たちまち炎は鎮まり、火は消し止められた。


焼け焦げた階段を慎重に下りると、宿の主人が震えながら立っていた。


どうやら、俺が魔法を使ったせいで、主人まで巻き込んでしまったらしい。


「お、お客さん、よくご無事で……」


「何があったんだ?」


「妻がスープを作ろうとして鍋を空焚きしてしまってね。気づいた時には、宿全体に火が燃え広がっていたんですよ。私は必死に消火活動をしていたんですがどうやら、もう火は消えたみたいですね。よかったぁ……」


宿の主人は安堵したのか、その場に倒れ込んでしまった。


悪いことをしたかな?


いや、火も消し止めたんだから、これで勘弁してもらおう。


俺は宿の主人を近くの病院に預けた。


それから宿に戻ってみると、今度は天井が崩れ落ちていた。


「……ここじゃ、もう寝られないな」


仕方なく新しい宿を取ろうとしたのだが、どこも満室だった。


「金貨百枚でも駄目なのか!」


「申し訳ありません。予約のお客様が優先なんです。お金を積まれて予約を無理に変更してしまったら、宿としての信頼を失ってしまいますから」


結局、どこの宿にも断られてしまった。


まだ眠い。


どこか昼寝ができる場所はないだろうか?


俺は考え抜いた末、酒場へ向かった。


「いらっしゃいませ。何をご注文で……」


「これで頼む」


俺は金貨三十枚をテーブルに置いた。


「いっ!?」


店の主人が目を見開く。


「酒はいらない……。空いた酒樽を一つくれ」


「いや、構いませんけど……。何に使うんです?」


「いいから寄越せ!」


「ひ、ひぃっ!」


店の主人は俺の気迫に押されたのか、それ以上何も聞いてこなかった。


俺は酒樽を人通りの少ない場所まで運ぶと、中に入り、蓋を閉めた。


これで邪魔が入らずに眠れる。


中は酒臭かったが、そのうち気にならなくなるだろう。


俺は狭い樽の中で体を丸め、再び目を閉じた。


しばらくして、うとうとし始めた頃だった。


何だか、樽が揺れている気がする。


……気のせいだろう。


今度こそ眠ってやろうとしたが、樽はますます激しく揺れ始めた。


「……ったく、今度は何だよ」


俺は樽の隙間から外を覗いた。


すると、どういうわけか、樽が宙に浮いているではないか。


誰かが持ち上げているのだろうか?


そう思っていると、外から野太い声が響いた。


「おい、人間ども! 酒だ! 酒を持ってこい! 持ってこないと、手当たり次第に皆殺しにするぞ!」


周囲には、オークたちが群れをなしていた。


どうやら、酒が入っていると思ったオークが、俺の入った樽を運んでいたらしい。


人の眠りを邪魔しやがって!!


俺は怒りに任せて拳を振るい、酒樽を内側からぶち破って飛び出した。


「な、なんだ!」


驚いたオークたちが、一斉に俺へと視線を向けた。


ぶちのめしてやろうと思ったが、強烈な睡魔に襲われ、立っているのもやっとだった。


「爺みたいによろけやがって。樽が割れたように見えたのは、経年劣化のせいだったようだな」


木製の冠を被った、親玉らしきオークが笑いながら俺に近づいてくる。


「いいか、お前ら! 俺たちに逆らうと、こうなるんだ!」


オークは俺に向かって、丸太のように太いこん棒を振り下ろした。


その瞬間、俺の足がもつれ、体が数歩左へとよろめいた。


そのおかげか、こん棒は俺に当たらなかった。


「な、かわしやがった! だが、偶然は二度も起きん!」


オークは再びこん棒を振り上げた。


しかし、今度も俺の足がもつれ、攻撃を紙一重でかわしてしまう。


その後もオークは何度もこん棒を振り下ろしたが、俺はそのたびに、ふらつきながらも攻撃を避け続けた。


「はあ、はあ……。何故、当たらん!!」


「うるせぇ! いい加減、寝かせろ!!」


動き続けたおかげで、少しだけ眠気が覚めた。


俺はオークの懐に踏み込むと、その顎に拳を叩き込んだ。


どうやら、加減を間違えてしまったらしい。


オークは悲鳴を上げる間もなく、遥か彼方へと吹き飛んでいった。


「次は誰だ!!」


俺が叫ぶと、オークたちは化け物でも見たかのように悲鳴を上げ、一目散に逃げていった。


きっと、今の俺は鬼のような顔をしていたのだろう。


これで、ようやく寝られる。


そう思って、その場に横になろうとした時だった。


「この町を救ってくださり、ありがとうございます!」


町の人々が俺の周りに駆け寄ってきた。


「当然のことをしただけだ」


本当は、寝る邪魔をされたから殴っただけなのだが……。わざわざ言う必要もないだろう。


「つきましては、町の者総出で、ささやかながら宴を開かせていただきます!」


「宴なんかいい……」


断ろうとしたのだが、町の人々は聞く耳を持たなかった。


気づけば俺は、町長の屋敷まで引きずられるように連れていかれ、宴の席に座らされていた。


広間の中央では踊り子たちが舞い、吟遊詩人が陽気な歌を歌い始める。


……とてもじゃないが、眠れる雰囲気ではない。


「ラルク! 町を救ってたんだな! おかげで肉が食べ放題だぞ!」


アウラたちも連れてこられたらしく、俺の近くの席に座っていた。


アウラは目の前に並べられた料理に夢中になっている。


「ふふっ、ラルク。体調が悪いって言ってたけど、悪い魔物を倒すために作戦を練っていたのね」


ミーシャが尊敬の眼差しを俺に向けてくる。


違う。俺はただ眠かっただけだ。


そう言いたかったが、この状況で真実を告げるわけにもいかない。


「まあな」


俺はそう答えるしかなかった。


何時になったら寝れるのか。俺の思いと裏腹に宴は夜遅くまで続くのだった。

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