↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/95

遅すぎた気付き

「俺を殺すんじゃなかったのか? そんなにアウラが怖いのか?」


「黙れ!」


リンドバーグが叫ぶと、屋敷の天井に届きそうなほど巨大な大剣が出現し、俺に向かって振り下ろされた。


どうやら、奴にはもう余裕がないらしい。


「ラルク! 避けた瞬間に魔法を叩き込んでやれ!」


「ああ、分かった!」


アウラの声が、直接頭の中に響く。


俺は迫り来る刃にあえて肉薄し、寸前のところで身をかわした。


リンドバーグが次の手を打つ前に、腕に仕込んでいた風と雷の魔力を矢として放つ。


矢は嵐のような凄まじい破壊力を伴い、リンドバーグの腹部を貫いた。


腹に大きな穴が開き、奴の体が大きく揺らぐ。


俺一人では、こんな威力の魔法は放てない。


やはり、アウラを纏ったおかげだろうか?


「ぐあああ!!!」


リンドバーグは屋敷を震わせるほどの叫び声を上げ、後方へと倒れ込んだ。


俺は倒れたリンドバーグを見下ろし、その顔に光弾を突きつけた。


「諦めろ、リンドバーグ。お前は俺を殺せないし、サキもお前のものにはならない」


「わ、私はサキを手に入れようなど……」


「この世界に留まってほしかっただけだ、とでも言うつもりか? だったら、どうして魂を抜いた後もサキのことを気にかけていた?」


俺はリンドバーグを睨みつけた。


「お前はサキを手に入れたかったんだろ? でも、サキを傷つけた負い目があって、自分では探しに行けなかった。だから、それとなく俺にサキを探すよう頼んだんだよな。違うか?」


「ち、違う。私は純粋に……」


リンドバーグは俺の目を見ようともせず、必死に弁明しようとしていた。


図星だったのだろう。


その時、屋敷に燃え広がった炎が、俺たちを飲み込もうとしていた。


「私はサキを……サキをぉおお!!」


リンドバーグの体から、膨大な魔力があふれ出した。


魔力は周囲の物を次々と飲み込んでいく。


花瓶、ソファー、本棚。


吸い込まれた物は、ことごとく粉々になり、跡形もなく消え去った。


「ラルク! あれに吸い込まれたらまずいぞ!」


俺は慌てて屋敷の外へと飛び出した。


その直後、轟音とともに屋敷が倒壊した。


瓦礫が崩れ落ちる中、そこには顔を覆うリンドバーグの姿があった。


そして、その体からは、あらゆるものを飲み込む魔力が放たれ続けていた。


「私のサキを思う気持ちは本物だ! 汚れてなどいない!!」


リンドバーグから放たれる魔力を見つめながら、俺は思った。


あれは、サキを思う気持ちを否定されたことへの拒絶なのだろうか。


自分自身の醜い感情を認められず、消し去りたいと願う心。


その願望が、周囲のあらゆるものを拒絶し、破壊する魔力となって現れたのではないだろうか。


破壊の魔力は、リンドバーグの屋敷に咲くバラを次々と飲み込んでいく。


魔力は少しずつ広がっているようだった。


「リンドバーグ! 魔力を鎮めろ! このままだと死人が出るぞ!!」


「この町は私の治める町だ。だから、そこにある命も私のもの。どうなろうが知ったことではない!!」


叫ぶリンドバーグを見て、俺はこれが奴の本心なのだと理解した。


最初から、こいつは領主としての器ではなかったのだ。


「心まで化け物に堕ちたか、リンドバーグ!!」


「何とでも言え!」


体から破壊の魔力を放ちながら、リンドバーグは俺に向かって突進してくる。


「あの魔力は、リンドバーグの命が尽きるまで暴走を続けるぞ。ラルク、やるしかないぞ」


どうやら、アウラには見抜かれていたらしい。


俺が、なるべくならリンドバーグを殺さずに済ませようとしていたことを。


俺はリンドバーグから距離を取り、その頭上に暗雲を作り出す。


「これで終わりだ!!!」


雷が竜の頭の形を成し、リンドバーグの体を飲み込んだ。


轟音とともに大地が震える。


リンドバーグの体は真っ黒に焼け焦げたが、まだ息があるようだった。


「まだだ……まだ死ぬわけには……」


弱っていくリンドバーグとは裏腹に、破壊の魔力はさらに広がり、町の噴水や民家を次々と飲み込んでいく。


もう、時間はほとんど残されていなかった。


「アウラ! もう一度だ!」


「……待って」


俺の前に現れたのは、コトハだった。


「どうして止めるんだ?」


「あいつに会いたいって言うから連れてきたの。止めたんだけど、聞かなくて……」


コトハは俯きながら、手のひらほどの大きさの卵型の模型を閉じ、再び開いた。


すると、その中から見覚えのある少女が姿を現した。


リンドバーグが渇望していた、勇者サキ本人だった。


「サキ!」


「ごめんね。どうしても彼と話したかったの」


白銀の鎧を身に着けたまま、サキはリンドバーグへと近づいていく。


不思議なことに、破壊の魔力は彼女を避けるように広がっていた。


「サキ! どうして君がここに……」


リンドバーグは嬉しそうでありながら、戸惑っているようでもあった。


「リンドバーグさんだよね。姿は違っても、雰囲気で分かったよ。もう怒ってないよ。だから、もう止めよう」


サキは優しく語りかけた。


リンドバーグは何も答えず、黙り込んでいた。


そのとき、たまたま通りかかったのか、一人の少女が姿を現した。


それを見たリンドバーグは奇声を上げ、少女に襲いかかる。


「駄目だよ!!」


サキは剣を抜き、リンドバーグを止めようとした。


だが、リンドバーグは避けようとせず、わざと剣先に体重をかけた。


まるで、自ら貫かれることを望んでいるかのように。


その瞬間、リンドバーグの体は元の人間の姿へと戻り、破壊の魔力も消え去った。


「どうして、こんなことをしたの?」


「償いだよ。これしか思いつかなかった」


「馬鹿だよ……。こんなこと、しなくてもよかったのに……」


サキの目から涙が溢れた。


道を踏み外してしまったとはいえ、リンドバーグはサキにとって大切な仲間だったのだろう。


「ああ、私は馬鹿だった。それに、私が臆病だったばかりに、君に……いや、私に関わった者たちを不幸にしてしまった。本当にすまない……」


リンドバーグは静かに目を閉じた。


しばらくの間、その場にはサキの泣き声だけが響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。