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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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決着の時

「あ、ああ……。魔力が、力が抜けていく……」


 ギルバートは、皮と骨だけになったような自分の手を眺め、失意の声を漏らした。


「これで終わりだ、ギルバート! もう二度と人々を苦しめないと誓うなら、命だけは許してやる!」


 しばらくの沈黙の後、ギルバートは狂ったように笑い出した。


「慈悲をかける気か? そんな甘っちょろい考え方には虫唾が走るよ。私は君たちの手の届かない場所へ行く。そして君たちは、最悪の結末を味わうんだ!!」


 そう言い放つと、ギルバートは不気味な笑みを浮かべた。


「いやぁああ!!!」


 アシュリーが悲鳴を上げる。


 決別したとはいえ、実の父親が目の前で命を落としたのだ。動揺するのも無理はない。


 俺はすぐに治癒魔法をかけた。


 だが、傷が塞がるだけで、ギルバートの鼓動が戻ることはなかった。


 裏で大勢の人々を苦しめてきた魔王の最期は、あまりにもあっけないものだった。


「ラルク! 離れろ!」


 アウラが俺の袖を咥え、強引に引っ張った。


 その直後だった。


 ギルバートの遺体から、ドス黒い魔力の塊が溢れ出したのは。


 あれに触れてはいけない。


 直感的にそう悟った。


「皆、ここから離れるぞ!」


 アウラは俺とバロックを背に乗せ、アシュリーを抱えると、その場から一気に飛び立った。


 俺たちが王宮から離れた直後、ドス黒い魔力が王都を包み込んだ。


 上空から王都を見下ろしていると、黒い魔力に触れた人々が次々と倒れていく。


「あれに触れたら、魂を抜かれるようだな。ギルバートの最後の悪あがきか」


 なんて忌々しいやつだ。


「あれはきっと、お父様の呪いよ。どんなことが起きるか分からないけど、きっと恐ろしいことになる……」


「どうすればいい?」


「……浄化できればいいんだけど、あれほどの怨念を清めるのは難しいわ」


 アシュリーはドス黒い魔力を見つめ、表情を曇らせた。


 娘だからこそ、父親の力の強大さを知っている。その彼女が難しいと言うのだから、相当なものなのだろう。


「諦めるなよ。俺に当てがある」


 俺は首元にぶら下げた青い笛を握りしめた。


「何をする気だ?」


 バロックが尋ねるよりも早く、俺は笛を吹いた。


 すると、空に巨大な青い扉が現れた。


 直後、大地を震わせるほどのドラゴンの咆哮が辺りに響き渡る。


「ようやく出番か?」


 扉の向こうから現れたのは、人の姿をしたマスタードラゴンだった。


「ギルバートの呪いを祓い清めてくれ」


 マスタードラゴンは、王都を覆うドス黒い魔力を一瞥した。


「よかろう。ただし、あの魔力を少し移動させてくれ。浄化する際、あれが王都の者たちに何をするか分からんからな」


「分かった。やってみよう」


 俺たちは、いったん王都から離れた場所へと降り立った。


「あなた、アウラ様だけじゃなくて、マスタードラゴンとも知り合いだったのね」


「まあな。それより、あいつをどうやって移動させる?」


「アウラが浄化の炎を吐けば、あいつも嫌がって動くと思うぞ!」


「その手があったか。よし、やってみよう!」


 俺はアウラと共に、ドス黒い魔力の塊へと近づいていった。


ドス黒い魔力に俺たちが近づくと、羽の生えた白い球体のようなものが生み出された。


 それが何なのかは分からない。だが、ギルバートの呪いから生まれたものが安全なはずもない。俺たちは距離を取った。


 白い球体はカチカチと歯を鳴らし、近くにあったレンガ造りの建物を、まるでリンゴでもかじるかのように容易く食いちぎった。


「早く倒さないと……!」


 俺は風の魔術で切り裂こうとした。


 しかし、その攻撃は届かなかった。


 唐突に現れた紫色の渦に、風の刃が吸い込まれてしまったのだ。


 これはヴォークスと同じ魔法だ。


 どうやらギルバートの呪いは、配下の魔族が使う魔法まで扱えるらしい。


「ラルク!」


 遠くからアウラの声が聞こえた。


 次の瞬間、俺は広々とした馬車の中にいた。


 そこには見覚えのある顔があった。


「あれ? 君は確か、ラルクだよね。どうやってここに?」


 アルバート劇場の裏方、ヴィルだ。


 どうやら、ここはアルバート劇場が使っている馬車の中らしい。


「悪い。魔法で飛ばされたんだ。すぐに出ていくよ」


「ゆっくりしていってもいいけど、取り込み中なんだろ? 今度会ったら、ペルシャとも話してやってよ」


 ヴィルは朗らかに笑った。


 俺が転移魔法を使おうとした、その時だった。


 馬車が突然、急ブレーキをかけたかのように止まった。


「シルベンに何かあったのか?」


 ヴィルが馬車の外へ出ると、白い球体の魔物たちがシルベンを取り囲んでいた。


 シルベンは器用にハーネスを引きちぎると、低く唸り、一匹の魔物を踏みつけた。


 しかし、ほかの球体の魔物たちが一斉に飛びかかる。シルベンの白い毛並みが、少しずつ赤く染まっていった。


 俺はすぐさま風の魔力を放ち、球体の魔物たちを切り裂いた。


 どうやら一匹一匹はそれほど強くないようだ。だが、数が多すぎる。


 町や村がこいつらに襲われたら、ひとたまりもないだろう。


「シルベン! 怪我はしているが、無事のようだな。ラルク! 君が助けてくれたのか?」


 座長のオーラムが馬車から降り、俺に駆け寄ってきた。


「たまたまここに飛ばされただけさ。またあの魔物が現れるかもしれないから、気をつけろよ」


「待ってくれ! 仲間を助けてもらったのに、礼もせずに別れるわけにはいかない。アルバート劇場の座長としての名が廃るからな。つまらないものだが、持っていってくれ」


 そう言って、オーラムが差し出したのは魔石の欠片だった。


「魔法の使えない私には使い道がないものだが、君なら役立てられるだろう?」


「ありがとな」


 俺は転移魔法を使う前に、シルベンの傷を治してやった。


 すると、シルベンは感謝するように「ワオーン!」と雄叫びを上げた。


 こうして再び転移魔法で移動している最中、テオドールが話しかけてきた。


「ラルクさん、緊急事態です。島の結界が破られ、魔物が押し寄せてきました!」


「被害は?」


「今のところ、ゴブリンさんたちの活躍で人への被害はありません。しかし、ラズベリルさんの畑が食い荒らされてしまいました。このままでは、長くは持たないかと……」


 テオドールの声は弱々しかった。


 俺が行かなければならないだろうか?


 だが、ギルバートの呪いを放っておくわけにもいかない。


 どうしたらいいものか……。


 そう考えていると、聞き覚えのある笑い声が響いた。


「ガハハハ! 弟子たちを守るのは師匠の役目だ! 俺がこの島を守ってやるから安心しろ!!」


 ラグナード。


 自らを剣聖と称していた男だ。


 実力は認めている。だが、ギルバートの命令でリリスを攫おうとしていたのも事実だ。


「今度は何を企んでやがる?」


「企んでなどいない。言っただろう? 弟子のためだと。この島のゴブリンたちは筋がいい。十年もすれば、俺を超えるだろうな!」


 確か、ゴブリンたちは強くなりたいと言っていた。


 それにしても、よりによってこいつに弟子入りしていたとは……。


「今は信じてやる。だが、何かあったらただじゃおかないぞ」


「武人は約束を違えん。俺を信じろ!」


 どうにも信じきれないが、今は信じるしかない。


 俺はようやくアウラの元へ戻った。


 アウラは一心不乱に、ギルバートの呪いへ浄化の炎を吐き続けていた。


「待たせたな、アウラ!」


「ラルク! もう少しでこいつを動かせそうなのに、魔物が邪魔なんだぞ!」


 バロックとアシュリーも球体の魔物たちを蹴散らしていたが、倒しても倒しても、次々と新たな魔物が生み出される。


「任せろ、アウラ! バロック、アシュリー! 今から雷雲を作る。それに魔力をぶつけてくれ!」


「分かった!」


 二人はそれぞれ炎と風の刃を放ち、俺が作り出した雷雲へと魔力をぶつけた。


 すると、炎と雷が入り交じった嵐が巻き起こり、球体の魔物たちへと降り注いだ。


 魔物たちは次々と切り裂かれ、その姿を消していく。


 邪魔者がいなくなったと見るや、アウラは勢いよく浄化の炎をギルバートの呪いへと浴びせた。


 すると、ドス黒い魔力の塊が、少しずつ動き始めた。


 数十分かけて、ようやくギルバートの呪いを王都から遠ざけることができた。


 その時、マスタードラゴンが姿を現した。


「行くぞ!」


 その声に応じるように、空に浮かぶ青い扉からドラゴンたちが次々と現れた。


 千……いや、万を超えるほどのドラゴンが、一斉に息を吸い込む。


 そして、無数の浄化の炎がギルバートの呪いへと浴びせられた。


 まるで氷が溶けるように、ドス黒い魔力の塊はみるみる小さくなっていく。


 やがて、断末魔のような声を上げながら、完全に消滅した。


 ギルバートの呪いは、ついに消え去ったのだ。


 まだ、やるべきことは残っている。


 だが、今はこの脅威が消えたことを喜んでもいいだろう。

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