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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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禁忌の先に待つもの

「誰だ!」


背後から男の声が聞こえる。


振り向くとナイフを構えるイヴァンがいた。


「なんだお前か。天才の俺に治療を頼みに来たのか?」


イヴァンは俺の顔を見てナイフをしまう。


自ら犯した禁忌を見られても動じていないようだった。


「人を魔物にするなんて許されない事だ。自分が何をしたか分かっているのか!?」


俺はイヴァンに詰め寄る。


「確かに俺が仕出かした事は、倫理を欠く事かも知れん。だが理を歪めてでも生きたいとそいつらは願ったんだ。魔物になってでも生きたいと。だから、間違った事をしたとは思っていない」


そう言ってイヴァンは笑った。


「無理矢理魔物にした訳では無いんだな」


「あくまで同意を得てから処置を施したんだ。強制的に魔物にした事はない」


それが本当なら俺が彼を裁く事は出来ない。


世間が許さないとしても、彼に救われた人間がいるのも事実なのだ。


「アストンの奥さんにも同じ処置を?」


俺が尋ねるとイヴァンは頷く。


「ああ、そうだ。だが、上手くいかなかった」


イヴァンは表情を曇らせ、話を続ける。


「三ヶ月前彼女は生死の境を彷徨っていた。そして、このまま死ぬか魔物になっても生き延びるか尋ねた。彼女は、後者を選んだ。だが、少し遅かったんだ。治療の甲斐なく彼女の心臓はそのまま止まってしまった……」


拳を握りしめイヴァンは悔しそうに語った。


救えなかった事を後悔しているのかもしれない。


「あんたは良くやったと思う。アストンの奥さんも、あんたを……」


「恨めはしないだろうな。ああなっては」


イヴァンの妙な言い方に俺は引っかかった。


「死んだんじゃ無いのか?」


「心臓が止まったのに体温が下がらない彼女のことが気になり、葬儀が終わった後、墓を暴くと、棺桶にはアルラウネがいた。心肺が停止したためか、人間だった頃の記憶を失っているようだった。だが、俺には彼女がアストンの妻だと分かった。だから、この家で記憶を取り戻す治療をする事にしたんだ」


アストンの妻は姿を変え、生きていたのだ。


「アストンの奥さんは今は何処にいる?」


「今までたまにここを抜け出して夜に外に出ていたが、昨日の夜から姿が見えないんだ」


まだ町にいるとするならまずいと俺は思っていた。


町には、アルラウネを退治する為に集まった世界樹の騎士団が待機しているからだ。


「アウラ、町に戻るぞ!」


「分かったぞ」


俺とアウラはイヴァンの家から出ると町に向かうのだった。


町に戻ると既に日は暮れかけていた。


町の至る所に世界樹の騎士団らしき鎧を着た男達が歩き回っている。


「あいつらより早く見つけ出さないと……」


「ラルク、アルラウネはきっとアストンを探してるぞ。だから。アストンに協力してもらったら早いぞ」


アウラの言う通り誰も傷付けずに町に現れるのはアストンを探してるからなのだろうか。


人の時の記憶を無くしているのに。


「考えるのは後だ。試してみよう」


日は完全に沈む。


今日も月が出ていない。必ずアルラウネは町に現れるだろう。


アストンの家へと向か最中、ミーシャ達が俺に駆け寄る。


「ラルク何か分かった?」


「説明は後だ。アストンの家に向かうぞ」


ミーシャは怪訝そうな顔をしながらも、黙ってついてくる。


アストンの家のドアを俺は力強く叩いた。


「また、君達か。イヴァンからは何も受け取ら……」


「そうじゃない。助けたい人がいる。黙って付いて来てくれませんか?」


そのまま言ってもアストンが理解出来ないだろうと俺は誰を助けるかは口に出さなかった。


俺の気迫に押されてか、アストンは扉を開けたまま黙ってしまった。


「……君らの事は知らないがよほど大事な人らしい。手を貸そうじゃないか」


アストンはやれやれといった感じに家から出る。


「助かるよ。その辺を一緒に彷徨いてくれ」


俺たちは、町の噴水前を通ると噴水を囲む生垣から何か音が聞こえた気がした。


「ラルクさん、前方の右側に何かいるみたいです」


イリアが俺に耳打ちをする。


「気付かないふりをするんだ」


平静を装い生垣の前を通ると、頭に白い花を咲かせたアルラウネが飛び出した。


「ひっ!」


アストンはアルラウネを見て小さな悲鳴を上げる。


アルラウネは、何やら声を発しながらアストンに抱き着いた。


本当にアルラウネはアストンを探していたのだ。


「や、やめろ化け物! 離してくれ」


アストンはアルラウネを突き飛ばす。


アルラウネは何かを訴えるように声を上げていたが、通じない事に気付き、俯いた。


「アストンさん、待ってくれ。このアルラウネは、あんたの奥さんなんだ」


「何だと、この化け物が……」


アストンはアルラウネをまじまじと眺め、首を横に振る。


「冗談はよしてくれ、カーラの面影は何処にもない。こいつはただの化け物だ」


アストンが、そう言うとアルラウネは涙を流し走り去る。


「待て! 行くな!」


俺はアルラウネを追う。


アルラウネを追いかけていると、世界樹の騎士団がアルラウネ前に立ち塞がる。


「薄汚い魔物め。ここで死ね!」


一人がアルラウネに火球をぶつける。


アルラウネは、苦しそうな声をあげる。


「やめろお前ら!」


俺は弱い雷の魔術を世界樹の騎士団にぶつけた。


「ぎゃっ!」


世界樹の騎士団も大したことがないやつらの集まりなのか気絶していた。


「この町から離れろ。本当に殺されるぞ」


アルラウネは首を横に振る。


拒絶されてもアストンの側にいたいのだろうか。


「いたぞ! アルラウネだ!!」


世界樹の騎士団が続々とやって来る。


「離れるなよ!」


俺は、そう言うと手の平に雷の魔力を集中させる。


「暫く転がってろ!」


俺の手から離れた雷の魔力は世界樹の騎士団にだけ当たり当たった者だけ気絶させた。


「これで暫く大丈夫か」


俺が安堵していると背後からアルラウネの悲鳴が聞こえる。


「魔物と手を組み部下たち痛めつけたのは君か?」


鎧を着込んだ女がアルラウネの喉元に剣の先を突きつけ、俺に尋ねる。


「手を組んだじゃない。それにそいつは人間だ」


「ふん、これが人に見えるのか。力を持つ狂人ほど手に負えないものはない。こいつを切り刻んで目を覚まさせてやる」


はったりなどではない。本気でアルラウネを切り刻む気だ。


アルラウネが助けを求めるように叫ぶ。


「命ごいか? 私にはきかんぞ。 さあ、死ぬが良い」


魔術をぶつけようにも、鎧の女が剣を振るほうが早いだろう。


間に合わない!


そう思った時、鈍い音がして鎧の女が倒れた。


鎧の女の後ろにはアストンが立っていた。


「見た目も声も違うのに。カーラが助けてって叫んだ気がしたんだ。君はカーラなのか?」


アルラウネは頷く。


アストンは、涙ながらに「おかえり」と言いながらアルラウネを抱きしめた。


翌日、俺達はレストランで空魚を甘辛く煮た料理を食べていた。


「え、世界樹の騎士団は偽物だったの?」


「町の人達の信頼を得てから、根こそぎ町の財産を奪う極悪な盗賊だったみたいだな。自警団の一人が騎士団の一人の顔が盗賊に似てると今朝になって気付いたみたいだな」


俺が言うとミーシャはがっかりしていた。


確かに本物なら、もっと骨が有る連中だろう。


アストンは、イヴァンから直接話を聞いたあと、アルラウネを連れて旅に出ることにしたらしい。


このまま町に居ては混乱を招くだろうからと。


イヴァンの事は許せないが、妻の命を救ってもらったのも事実だと咎めなかったらしい。


「イヴァンさんも人に戻す方法を見つけたらすぐに人に戻してやるって言ってたらしいですけど、そんな事出来るのでしょうか?」


「天才なんだから何時かは出来るだろ」


皮肉を込めて言うとイリア達は笑う。


イヴァンなら本当に治す方法を見つけるかもな。


「ラルクも私の姿が変わっても私だって気付いてくれる?」


「多分な」


大切な存在を間違えるかよ、と言いたかったが恥ずかしいから言わないでおいた。


「わぁー! ミーシャが虎女になってるぞ!」


「えぇ!!! ……って! 私は最初から虎の獣人よ。思わずびっくりしちゃったじゃない」


「あ、そうだったぞ」


アウラとミーシャがじゃれるのを見て俺はパンに齧りつくのだった。

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