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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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賢い魔物達

ぱちぱちと焚き火の爆ぜる音で、俺は目を覚ました。


 辺りは暗く、周囲には木々が生い茂っている。


 どうやら、森の中で野宿をすることになったらしい。


 俺の額に誰かの手が触れていた。


 それがイリアだと分かるまで、そう時間はかからなかった。


「イリア、何をしてるんだ?」


「意識が戻ったんですね。良かった」


 焚き火の灯りに照らされたイリアの表情は、安堵に満ちていた。


「俺に何かあったのか?」


「町を出てしばらく歩いていたら、急にラルクさんが動かなくなって……。体も氷のように冷たくなっていくから、みんな心配していたんですよ」


 イリアは俺の顔を覗き込む。


「でも、体温も戻ってきたみたいですし、もう心配はいらないようですね」


「迷惑をかけたみたいだな」


「いえ、迷惑だなんて思っていませんよ。ラルクさんが無事なら、それで良いんです」


 そう言って、イリアは俺の手を握った。


 その優しさに触れながら、俺は良い仲間に巡り合えたものだと、改めて感じていた。


 そして、なぜ意識を失ったのかを考える。


 ザイードとの戦いで、新たな力を生み出したからなのだろうか?


 新しい力を生み出すには、それなりの代償があるのかもしれない。


 これから新たな力を使う時は、少し慎重になったほうが良さそうだ。


「ラルク! 目を覚ましたのね!」


 茂みからミーシャが姿を現すと持ってきた薪を落とし、寝そべっている俺の側へ駆け寄ってきた。


「もう! 具合が悪い時は、悪いって言いなさいよ!」


 口調とは裏腹に、ミーシャは今にも泣き出しそうな顔をしている。


「悪かったよ。ごめんな」


 俺がそう言ってミーシャの頭を撫でてやると、その瞳から雫がこぼれ落ちた。


「ラルクが死んじゃったら……私、生きていけないんだからね」


 俺は何も言わず、ミーシャが落ち着くまで頭を撫で続けた。


「お、ラルク。目が覚めて良かったぞ」


 すると、ドラゴンの姿をしたアウラがこちらへやって来た。


「ラルクはあまりご飯を食べないから、体調を崩すんだぞ。これでも食べて元気を出すんだぞ」


 そう言って、アウラは口に咥えていた何かを俺たちの前に吐き出した。


 それは気を失った乳牛だった。


「……お前、この牛をどこから持ってきた?」


 俺が尋ねると、アウラは誤魔化すように笑った。


 すると、その背後から声が聞こえてくる。


「オラ達の牛を返すだあ!」


 どうやらアウラは、近くの農場から牛を盗んできてしまったらしい。


「アウラ! 今すぐ牛を返してこい!」


「でも、ラルクが……」


「俺はもう元気だから、心配しなくていい。早く行ってこい!」


 まったく。俺は、おちおち寝込んでもいられない。


 乳牛を返しアウラと共に農場の人達に頭を下げた後、俺達は焚き火の跡へ戻り、そのまま眠ることにした。


 翌朝。森の中を歩いていると、前方に魔物の群れがいることに気がついた。


 俺達は咄嗟に近くの茂みに身を隠す。


「ラルク、どうするの? 不意打ちしてやっつけちゃう?」


「悪い魔物とは限らないだろ。まずは様子を見よう」


 魔物達は何やら話しながら、こちらへ向かってくる。


「さあ、皆さん。悪い人間が来る前に、お家に帰りましょうね」


 先頭を歩いていたラミアが、後ろにいる魔物達へ語りかけた。


「はーい。でも先生、なんで人間は僕達魔物を見境なく襲うのかな?」


「それは、学がないからよ。言葉だけでは物事を何一つ動かせないから、暴力に頼るの。暴力で片付けたほうが簡単ですからね」


 ラミアは優しく諭すように続ける。


「ですが、皆さんは賢い魔物なので、暴力は最後の手段に使いましょうね」


「分かりましたー。やっぱり先生は頭が良いな!」


 ラミアの後ろにいる魔物達は、感心した様子で頷いている。


 それを聞いて、ミーシャは不満げな顔をしていた。


「ラルクやイリアみたいな人間もいるのに、嫌な感じね」


「俺達だって、魔物は皆同じだと思ってるんだから、お相子だろ。何にでも腹を立ててたらきりがないぞ」


「ラルクがそう言うなら良いけど……」


 ミーシャは納得しきれていないようだった。


 自分のことよりも、仲間のことを馬鹿にされたほうが腹が立つのだろう。


「あ、これは……」


 その時、イリアが魔物達のいた辺りに落ちていた帽子を拾い上げた。


「届けたほうが良いですよね」


「でも、人間を嫌ってたみたいだからな……」


 それを聞くと、イリアは少し考えた後、


「ちょっと待っててください」


 そう言って茂みの中へ隠れた。


 数分後。イリアは前の町で買ったフード付きのローブを着込んでいた。


 フードの辺りにドラゴンの顔が描かれているやつだ。


「これなら魔物の皆さんに警戒されませんね」


 イリアを見つめるミーシャは、何とも言えない表情をしていた。


 俺も同じような顔をしていただろう。


 どう考えても、そんな簡単な変装で誤魔化せるとは思えない。


 だが、自信に満ちたイリアに「無理だ」なんて言うのも酷な話だ。


「ま、まあ、落とし物を届けるだけだし、大丈夫だろ。駄目なら逃げればいいしな」


「そうですね。一刻も早く届けてあげましょう」


 イリアはフードを深く被ると、張り切った様子で歩き出した。


 魔物達の魔力を辿っていくと、やがて丸太で作られた柵に囲まれた場所へと辿り着いた。


 柵の向こうには、魔物達の村か町があるのだろう。


 俺達は村の近くにある大木へ身を隠し、イリアだけを向かわせることにした。


 もしイリアに危険が及べば、すぐに飛び出せるよう身構えながら、彼女の動向を見守る。


「あの、落とし物を見つけたのですが、ここの住人のものではありませんか?」


 イリアは、見張りらしきガーゴイルに帽子を見せた。


「あ、あんたは! おい、皆、来てくれ!」


 ガーゴイルが声を上げると、十数体の魔物達がイリアを取り囲んだ。


「まずい!」


 慌てて飛び出そうとした、その時だった。


 魔物達はイリアに向かって、深々と頭を下げた。


「ドラゴン様、この村にお姿を見せてくださり、感謝します!」


「え?」


「そのシルクのような肌艶、間違いありません! 名だたるドラゴンの証でしょう!」


「い、いえ、あの……」


「さあ、こちらへ。折り入ってお話があります」


「え?」


「決して、貴方が訪れたことは口外いたしません。満足いただけるかは分かりませんが、お礼もさせていただきます」


「違うんです! ああ……」


 イリアは困惑したまま、魔物達に連れて行かれてしまった。


 俺達は、その場に呆然と立ち尽くす。


「……嘘だろ」


 あんな子供でも見破れそうな仮装を、本物のドラゴンだと信じるとは。


 この魔物達は、どれだけ純粋なんだ。


「ぼーっとしてる場合じゃないわ。イリアを助けに行かなきゃ!」


「そうだったな。でも、どうやって中に入ろうか?」


 俺が悩んでいると、アウラが何かを差し出してきた。


「これで大丈夫だぞ」


 それは、前の町でミーシャがアウラに渡したドラゴンの仮面だった。


「そんな馬鹿なことが……」


 そう言いかけて、俺は口を閉じた。


 ……いや、この村の魔物達なら、いけるんじゃないか?


 俺達は仮面を被り、村の入口へ向かった。


「伝説と言われたドラゴン様が他にもいたとは! さあ、こちらです」


 にこやかに笑いながら、ガーゴイルが俺達を村へ案内する。


「もう少しで長老が来ますので寛いで下さい」


 俺は仮面の奥でため息をついた。


 本当に、この村の警備、大丈夫なのか?


 俺は人間ながら、魔物達のことが心配になってきた。

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