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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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伝説と呼ばれる者

「何だ、ここは?」


 気づくと、俺は白い空間の中にいた。


「初めまして……だね」


 いつの間にか、一人の少女が俺の前に立っていた。


 その少女の顔には見覚えがある。


 不滅の棺に入っていた、魂を失った勇者――サキだ。


「勇者様が、わざわざ会いに来たのか?」


「私の意思というよりは、私の魂が君に寄っていったって感じかな」


 サキは少し困ったような顔をする。


「魂って、理性があまり利かないんだ。楽しいことや面白いことが好きな私の気持ちそのままに、行動しちゃうみたい」


「魂だけになると、自由に動くこともできないのか」


 随分と不便なものなんだな、と俺は思った。


「誰がお前から魂を抜いたんだ?」


「あんまり覚えていないんだ」


 サキは少し考えるように首を傾げる。


「誰かにお茶会に誘われて、紅茶を飲んでいる最中に、背中から何かで切られて……気づいたら、こうなっていたの」


「背中から……?」


「うん。女神様の加護で、大抵の攻撃は防げるんだけど、その攻撃だけは防げなかったんだ。本当にびっくりしたよ」


 加護を打ち破るほどの力か。


 あるいは、特殊な武器でも使われたのだろうか。


 相手は相当、頭の切れる奴なのかもしれない。


「あ、もう時間切れみたい」


 サキの身体が淡く輝き始める。


 少しずつ、その姿が透き通っていく。


「リンドバーグが、お前を心配していた。何か伝えることはあるか?」


「リンドバーグ?」


 サキは少し考えた後、ぱっと顔を輝かせた。


「ああ! 釣り好きの戦士さんだね。また一緒に釣りしようって伝えておいて」


「ああ、伝えておくよ」


 釣り好きだった戦士が、今では領主をやっている。


 それを知ったらサキは驚くだろう。


 だが、それは肉体に魂が戻ってから、自分の目で確かめさせた方がいいだろう。


「じゃあね、ラルク」


 サキの姿が、さらに薄くなっていく。


「……また、会おう」


 そう言い残して、勇者サキは消えた。


 それと同時に、俺の意識も少しずつ遠のいていった。


「ラルク、いつまで寝てるの! お昼になっちゃうわよ」


 ミーシャの声で、俺は目を覚ました。


「あれ、俺寝てたのか?」


「びっくりしたわよ。踊ってる最中に寝ちゃうんだから。私とアウラで宿まで運んだのよ」


「悪い、迷惑かけたな」


 踊っている最中ということは、あの光の玉が俺の中に入った時だろうか。


 なら、あの夢はただの夢ではなかったのかもしれない。


 今、俺の身体には勇者サキの魂が入っている。


 すぐに肉体へ魂を戻してやった方がいいだろうか?


「ラルク、お昼近いけどデザート食べに行かない?」


「前にも言ったが、俺は甘いものはあまり……」


 断ろうとした、その時だった。


「デザート!? 行く!」


「……え?」


 口が勝手に動いた。


「やけに乗り気ね。じゃあ行きましょう」


「いや、だから……一杯食べちゃうんだから」


 何かがおかしい。


 もしや、俺の中にいる勇者サキの魂が暴走しているのか?


 一体、俺は何をやらされるんだ。


 冷や汗が止まらなかった。


 ミーシャに案内されてカフェへ向かうと、俺はメニューを上から下まで眺め、次々と注文していた。


「ラルクが、こんなに甘い物好きだったなんて知らなかったわ。今まで我慢してたのね」


「だから……そうなの! ずっと我慢してたの!」


 いくら抵抗しても無駄なのだろう。


 こうなったら好きにしてくれと、俺は諦めた。


 運ばれてきたババロアやプリン、ゼリー、アイスを、俺は一心不乱に食べていく。


「美味しそうに食べるわね。私もプリン追加で」


 ミーシャはアイスを食べながら、鼻歌交じりに追加の注文をする。


 そんなミーシャの楽しそうな顔を見ることができたのだから、勇者サキの魂に振り回されるのも悪くはないか。


 ――その時だった。


 店の外が急に騒がしくなった。


 外に目をやると、巨大な黒いドラゴンが民家を破壊している。


 だが、俺にはそれが本物のドラゴンではないと分かった。


 ドラゴンにしては魔力が貧弱すぎる。


 それに、鱗の形もどこか歪だった。


 止めなければ。


 そう思うより先に、俺の身体が動いていた。


 カフェの外へ飛び出した瞬間、俺の身体は地面を蹴る。


 一瞬でドラゴンの頭上まで跳び上がっていた。


「うおっ!?」


 驚く俺をよそに、身体が勝手に動く。


 空へ向かって手をかざす。


 すると、無数の光の剣が空中に現れ、一斉にドラゴンへと降り注いだ。


 光の剣はドラゴンの身体を切り裂き、その姿を一瞬で消し去った。


「これが……勇者サキの力か」


 凄まじいものだな。


 俺が感心していると、町の人々から大きな歓声が上がった。


「俺は何もしてない。礼を言うなら、勇者サキにしてくれ」


 そう言ってミーシャの元へ戻ろうとした時、先ほどドラゴンがいた辺りに、ゼリーのようなものが落ちているのが見えた。


 いや、ゼリーではない。


 スライムだ。


 こいつがドラゴンに化けていたのだろう。


 俺はスライムを摘み上げる。


「お前、なんでドラゴンのふりをして暴れたんだ?」


「い、命だけは……! ドラゴンを慕うこの町の人々に、ドラゴンは危険な存在だと思わせて、ドラゴンを嫌わせようとしたんです。そうすれば、ドラゴンも人間を完全に見放して、二度と竜の庭園が開くことはないと、ギルバート様が……」


 そこまで言ったところで、スライムの身体が突然消滅した。


 いや、蒸発した。


 口を滑らせれば死ぬような魔法でも、あらかじめ掛けられていたのだろう。


 魔王ギルバート。


 奴は、ドラゴンを人の世に来させたくないらしい。


 なら、俺が直接、竜の庭園へ行って交渉してみるか。


 それが上手くいった時、ギルバートがどんな顔をするのか。


 想像すると、俺は思わずほくそ笑んだ。

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