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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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純粋な心

少女の発言が気にかかったが、俺達は一旦、少女と別れることにした。


 心の中にいた存在が力を持ち、誰かに危害を加える。


 そんな話は、どうにも信じられなかった。


 だが念のため、少女の腕におかしな魔力の流れがあれば俺に伝わるよう、簡単なまじないだけは掛けさせてもらった。


「……はい、分かりました。ラルクさん、アビーさんと揉めていた人がいるそうです。その方に話を聞いてみましょう」


 乗組員は通信魔法で誰かと話し終えると、俺に目を向けた。


「成り行きで手伝っているが、俺達がそこまでやる必要があるのか? 探偵じゃないんだぞ?」


「そんな殺生な! 報酬も出しますし、ルームサービスも全部無料にしますから、お願いしますよ!」


 乗組員は半泣きになりながら頼み込んでくる。


「ラルク、ルームサービス無料ならやった方がいいぞ! 美味い物が食べ放題だぞ!」


 アウラは鼻息を荒くし、興奮した様子で俺の肩を掴んだ。


「まったく。やるよ。やるから落ち着け」


 俺はどうにかアウラを引き離した。


 食べ物が絡むと手が付けられなくなる。


 それがアウラの悪いところだ。


「私はミーシャさんの様子を見てきますね」


「ああ。気を付けて部屋に戻れよ。何かあったら俺を呼べ」


「はい!」


 イリアと別れた後、俺は乗組員に案内され、飛行船のバーへ向かった。


 そこでは、一人の老人が酒を飲んでいた。


「何だ? 俺に用でもあるのか?」


 相当飲んでいるのか、老人はとろんとした目をこちらに向ける。


「マクガイアさんですね。一時間ほど前に、アビーさんと揉めていたのは貴方ですよね?」


 マクガイアはしばらく考えていたが、突然笑い出した。


「揉めてたんじゃなくて、褒めてたんだよ。あんたの小説は最高だってな! 興奮しすぎて大声で話しかけてたから、勘違いさせたか。悪いな」


 悪い奴ではなさそうだ。


 それに、魔力もほとんど感じない。


 マクガイアは白で間違いなさそうだ。


「爺さん、アビーに変な様子はなかったか? 何かに怯えているとか?」


「そんな様子はなかったな。ああ、でも何か探してたよ」


「何かを?」


「ああ。手伝おうとしたんだが、断られたよ」


 何を探していたんだろうか? それが分かれば、一気に真相へ近づける気がした。


 俺達はマクガイアに礼を言い、バーを後にした。


 すると、乗組員が落ち着かない様子で辺りを見回している。


 大きな手掛かりが見つからないうえ、今も飛行船の中には人を石化させた犯人が潜んでいる。


 落ち着かないのも無理はない。


「ラルク、腹減ったぞ」


「食堂にでも行くか? 悪いが、捜査はまた後にさせてもらうぞ」


「待ってください! 一人にしないでください! お願いします、何でもおごりますから!」


 乗組員は涙目になり、俺の服の裾を掴んだ。


 俺達が乗組員を連れて食堂へ向かっていると、ミーシャがこちらへ駆け寄ってきた。


「イリアから聞いたわよ。人を石化させた犯人を探してるって」


「ああ。そうなんだ」


「アビーさんの大ファンなの、私。だから私も手伝うわ」


「そんなにアビーの小説は面白いのか?」


「ええ。ノンフィクション作品なんだけど、彼女が触れ合った人達との交流を優しい文体で書いているの」


 ミーシャは嬉しそうに語る。


「特に人魚さんの話なんて、思わず泣いちゃったわ」


「人魚の話?」


 俺は思わず聞き返した。


「ええ。とても素敵な話なの。アビーさんって、本当にいろんな人と出会ってきたんでしょうね」


「一応、確認のために聞くけど……アビーは相手を揶揄するような書き方をしたりしてないか?」


「変なこと聞かないで!」


 ミーシャがむっとした顔をする。


「そんな書き方はしてないわ。アビーさんは、どんな相手にも敬意を払っているんだから」


「わ、悪い」


 これ以上言うと手が付けられなくなりそうなので、俺は慌てて謝った。


 だが、これで少女が犯人ではないことは、ほぼ間違いないだろう。


 自分の目を治してくれる優しい相手を、わざわざ石化させる理由なんてない。


 そう思った、その時だった。


「ラルク、危ないぞ!」


「え?」


 突然、アウラに体当たりされ、俺はその場に倒れ込んだ。


 その直後、俺の頭上を、青い光が通り過ぎていく。




 光が当たった壁を見る。


 そこには、見る間に石へと変わっていく壁があった。


「助かったよ、アウラ」


「ふふん! いつでも守ってやるぞ!」


 アウラは胸を張り、得意げな顔をする。


「後は皆さんに任せます!」


 そう言って逃げ出した乗組員の背中に、青い光が当たった。


「うわっ!」


 次の瞬間、乗組員の身体が石へと変わっていく。


 俺達は光が放たれた方向へ目を向けた。


 そこにあったのは小さな青い石。


 石からは、とてつもない量の魔力が溢れ出している。


 その魔力には覚えがあった。


 少女の眼帯の下から感じた、あの魔力の一部とよく似ている。


「ミーシャ、アウラ。あの石から離れろ!」


 あの石がどうして人を襲うのかは分からない。


 だが、今は考えている場合じゃない。


 とにかく逃げるしかない。


「何なのよ、あの石! もう、こっちに来ないでよ!」


 俺達は船内の廊下を走り回る。


「こっちです!」


 突然、客室のドアが開いた。


 罠かもしれない。


 だが、考えている余裕はなかった。


「失礼する!」


 俺達は部屋へ飛び込む。


 すると、すぐに扉が閉められた。


「お前は……!」


 俺達を部屋に入れてくれたのは、先ほどの少女だった。


「すみません」


 少女は申し訳なさそうに俯く。


「多分、私のせいで襲われたんですね」


「どういうことなの?」


 ミーシャが少女に尋ねる。


「あの石私の義眼なんです」


「あの石が?」


「はい」


 少女は自分の失った右目に手を当てる。


「アイちゃんは、あの義眼をするようになってから現れたんです。きっと……アイちゃんは、あの義眼そのものなんです」


 俺は黙って青い石の魔力を思い出す。


 あれほどの魔力を持った石なら、意思を持っていても不思議ではないのかもしれない。


 だが、それならなおさら疑問が残る。


「どうして、義眼がアビーを襲ったんだ?」


「分かりません」


 少女は首を横に振った。


 そして、決意したように顔を上げる。


「一度だけ機会をください。あの子と話したいんです」


 少女の声には、恐怖よりもアイちゃんを心配する気持ちが滲んでいた。


「分かった。やってみろ」


「上手くいかなかったらどうするのよ! 逃げ場なんてないじゃない」


「その時は何とかするしかないだろ。失敗を恐れていたら、何もできないしな」


 ミーシャをなだめてから、少女に向き直る。


 少女は覚悟を決めたような顔で、力強く頷いた。


 そして、ゆっくりとドアを開ける。


 すると、青い石が静かに転がってきた。


 石は少女の足元まで近づくと、青い髪の少女へと姿を変えた。


「アイちゃん! どうして人を襲うの? もう止めて!」


 アイは意味が分からないといった様子で、不思議そうに首を傾げる。


「どうしてそんな困った顔をしてるの?」


 そして、優しそうな笑みを浮かべた。


「全部、貴方のためよ?」


「私の……?」


 少女――カノンが困惑する。


「そうよ。貴方には私だけがいればいいの」


 アイの笑顔から、少しずつ優しさが消えていく。


「貴方に近づくものは、誰であろうと容赦しないわ」


「でも、アビーさんは私に優しくしてくれた……」


「だからよ!」


 アイは声を荒らげた。


「あの女はカノン、貴方の心を満たしていた。貴方が彼女を慕うほど、私のことをどうでもいいと思うようになるんじゃないかって……怖かったの」


 アイは悲しそうに顔を歪める。


「だから、石にしたの」


 そして、再び狂気を感じさせる笑みを浮かべた。


「これからも私は石にする。貴方に近づくものを、全部!」


 純粋な想いだったのだろう。


 カノンを大切に思う気持ちが強すぎたからこそ、それは歪んでしまったのかもしれない。


「そんなアイちゃんは嫌いだよ!」


 カノンは涙を浮かべながら叫んだ。


「アビーさんを元に戻して!」


「あはは……カノン。それは聞けないわ」


 アイは笑い声を漏らす。


「見てて。この飛行船にいる人達を、みんな石にしてしまうから」


 アイは再び青い石へと姿を変えた。


 そして、周囲に向かって青い光を連射する。


「危ない!」


 瞬時に俺とアウラは、ミーシャとカノンの前に障壁を張った。


 青い光が壁や毛布、机へと次々に当たり、それらを石へと変えていく。


 乗客だけじゃない。


 このまま飛行船そのものが石化すれば、空を飛び続けることすらできなくなる。


 そうなれば、乗っている全員が危険だ。


「カノン!」


 俺は叫んだ。


「このままじゃ全員死ぬ! 皆を守るために、お前の友達を傷つけることになる。それでもいいか?」


 カノンは黙り込んだ。


 アイは、長年連れ添ってきた友達のような存在。


 そんな相手を傷つけることは、自分自身を傷つける以上に辛いのだろう。


「カノン!」


 ミーシャがカノンの手を取る。


「ラルクなら、アイちゃんを壊したりしない。だから、安心して任せて!」


「分かりました」


 カノンは涙を拭い、頷いた。


「お願いします」


「ああ。助けてやるよ」


 俺は青い石を見据える。


「アイも含めてな」


 俺は石の周囲を闇の魔術で作った雲で覆い、青い光を遮断する。


「これで勝ったつもり!?」


 アイは人の姿に戻ると、雲の中から飛び出してきた。


「食らいなさい!」


 俺に向けて、手のひらから青い光を放とうとする。


 俺は、それを待っていた。


「捕まえた」


 その手に、魔力で作った手枷をはめる。


「何これ!?」


 アイが驚いたように手を見る。


「力が出ない!」


「もう力は使わない方がいい」


 俺は手枷に魔力を流しながら告げた。


「無理に使おうとすれば、お前の魔力は俺のものになる」


 これなら、もう誰かを傷つけることはできない。


「うう、嫌だ、嫌だよ」


 アイの目から涙がこぼれる。


「カノンが離れていく、私は捨てられるんだ……」


 アイはその場に泣き崩れた。


「そんなの嫌だ……」


 カノンはゆっくりとアイを抱きしめる。


「いなくならないよ」


「……カノン?」


「私の目が治っても、ずっと一緒だよ」


 アイはしばらく黙っていた。


 やがて、何かを理解したように小さく笑う。


「そっか……そうなんだ」


 アイはそのまま、青い石へと戻っていった。


「ハム五十人前だぞ!」


「もう備蓄はありません! 勘弁してください!」


 事件が解決すると、アウラは早速ルームサービスを堪能していた。


「アウラ、その辺にしてやれよ」


「なら、ソーセージ五十人前でいいぞ!」


 このままだと、飛行船の食料を全部食い尽くしかねない。


 俺は苦笑した。


「アビーさんの意識も戻ったみたいです。後遺症もないそうですよ」


 アビーの様子を見に行っていたイリアが、安心したような表情で戻ってきた。


「カノンさんのことも咎めず、目の治療を手助けすると言っていました」


「それは良かった」


 俺は胸を撫で下ろす。


「義眼に人格が宿って暴れ出すなんて、誰も思わないだろうしな」


 そこへ、ミーシャが部屋に戻ってきた。


「ラルク、次の町はアクセサリーや装飾品で有名な町みたいよ」


「へえ」


「それに、報酬ももらえたんでしょ? 何か買ってよ」


「ああ。何が欲しい?」


「大きなダイヤの指輪がいい!」



 俺は手で顔を覆った。


「勘弁してくれ……」


 今日は石化事件で散々、石を見たばかりだ。


「石はこりごりだ」

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