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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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変わった来訪者

「あの光は一体? この島はバラムス様の魔法によって、外部からの干渉を受け付けないようになっているのですが……」


 テオドールは無表情のままだったが、困惑しているようだった。


 妖精王の魔力すら上回る、先ほどの光。


 一体、何者があれほどの力を持っているのだろうか。


「ひぃっ! こ、この光はあいつだ!!」


 ゴブリンの家から抜け出してきたのか、邪神が震えながら俺の懐へ潜り込もうとしてくる。


「お前、心当たりがあるのか?」


「ありますよ! 名前を口にするだけでも悍ましい、あいつです!」


 邪神は身体を震わせている。


「あいつにちょっかいをかけただけで、私の身体は消滅させられたんですから!」


 邪神を打ち倒すほどの存在だ。


 相当な手練れなのだろう。


 しかし、なぜそんな奴が、この島を守るために力を貸してくれたのだ?


「ラルクさん。何でもしますから、この島に私を残すなんて言わないでくださいよ。あいつの力を感じながら過ごすなんて、絶対に嫌です!」


「じゃあ、過去にギルバートとどんな約束をしたのか教えてもらおうか?」


「えっと、その、それは……。わ、分かりました。話しますよ」


 邪神は渋々といった様子で話し始めた。


「私が力を貸してやる代わりに、邪魔なドラゴンテイマーとドラゴンを消す。そうギルバートと約束したんですよ」


「どうしてドラゴンテイマーを?」


「ドラゴンテイマーには無限の可能性がありますからね。正しく契約を結び、絆を育めば、勇者さえ凌ぐ圧倒的な力を手に入れることができる」


 邪神は嫌そうに顔をしかめた。


「そんなのがごろごろ彷徨いていたら、気持ち悪いでしょう?」


「あ、ラルクさんの悪口ではないですよ」


 俺は呆れながら邪神を見下ろした。


 だから、今この世界にはドラゴンがいないのか。


 ドラゴンがいなければ、ドラゴンテイマーの存在価値もない。


 職業として成り立たなくなれば、ドラゴンテイマーを目指す者もいなくなる。


 ギルバートは、ドラゴンと人間の繋がりそのものを断とうとしたのだ。


「やりやがったな、ギルバート」


 俺は空を睨みつけた。


「竜の庭園と人の世界を繋ぐ道も閉じていますし、ドラゴンと人間の交流がないのは私としても都合がいいんですけどね」


 邪神は悪びれもせずに続ける。


「それより、ラルクさん。話したんですから、約束通り私をここから連れ出してくださいよ」


「……そうだな」


 俺はため息をつくと、テオドールへ向き直った。


「テオドール、俺をアウラ達の元へ転移させてくれ。ああ、それと――」


 俺は懐から木彫りの熊を取り出した。


「こいつを厳重に保管してくれ」


「かしこまりました」


 テオドールに木彫りの熊を手渡す。


「ちょっと待ってください! ラルクさん、話が違う!! この鬼! 悪魔!」


 邪神が何か叫んでいた。


 だが、俺は聞こえないふりをした。


 どうせ、また余計なことを言っているに決まっている。


アウラ達の元へ戻った俺は、見慣れない景色に一瞬戸惑った。


 頭上には巨大な白い帆が張られている。


 足元には、まだ木の香りが残る真新しい甲板。


 船の上だと思ったが何かおかしい。


 船が進んでいるはずなのに、海がない。


 甲板の向こうに広がっているのは、どこまでも続く青い空だった。


 そこでようやく気づく。


 俺達が乗っているのは、海を進む船ではない。


 空を進む――飛行船だった。


「ラルク。飛行船乗り場で、このカードを見せただけで本当に無料で、こんな立派な飛行船に乗せてくれたのよ」


 ミーシャが嬉しそうに笑いながら、俺に金色のカードを返してくる。


「リンドバーグさんって、凄い人なのね」


「そうみたいだな。領主だと言っていたが領主というだけじゃないのかもしれないな」


 金色のカードを懐にしまう。


 甲板を吹き抜ける穏やかな風が心地いい。


 眼下には、どこまでも続く平原が広がっていた。


 鹿によく似た獣が草原を駆け、その先を流れる川では、何か大きなものが泳いでいる。


 アウラの背に乗って空を飛ぶことはあった。


 だが、こうして何にも追われず、ゆっくりと景色を眺めるのは初めてだ。


 空から見る世界は、いつもより少しだけ広く感じられた。


「ラルク! この果物、美味いぞ! こっちもおすすめだ!」


 振り向くと、アウラが一口サイズに切られた梨と林檎を持っていた。


 そのまま俺の口へ放り込もうとしてくる。


「自分で食べるからやめろ。そんなに一度に食べられないって」


「なら、ここに置いておくぞ。ラルクは食が細いんだから、もっと沢山食べなきゃ駄目だぞ!」


 そう言い残すと、アウラは果物を置いて甲板を走り回り始めた。


「お客様! 危険ですので走り回らないでください!」


 すぐに飛行船の乗組員から注意されている。


「まったく、アウラは子供みたいなんだから」


 ミーシャは微笑ましそうに笑った。


「お硬い奴よりは、よっぽど良いけどな。まあ、たまにとんでもないことをするから疲れるけど」


「あはは。そうよね。でも、飽きなくて良いじゃない」


そういう問題か? そう思ったが、あえて口にはしなかった。


俺達の周囲に、いくつもの影が浮かんでいることに気づいた。


「何だ?」


 頭上を見上げ、身構える。


 そこにいたのは――羊だった。


 白い毛に覆われた羊のような生き物が、翼もないのに空を漂っている。


 その羊が俺達の前へふわりと降り立つと、のんびりと鳴き声を上げた。


 すると、近くにいた乗組員が慌てて駆け寄ってくる。


「お客様は幸運でいらっしゃいますね。この羊は希少種、スリーピーシープです」


「スリーピーシープ?」


「はい。どんな不眠症の方でも、撫でるだけで眠れると言われている羊です」


 ミーシャが興味深そうに羊へ近づく。


「ちょっと撫でてみるわね」


 そして、その柔らかな毛並みを撫でた。


 ミーシャはその場で立ったまま目を閉じた。


「……すぅ……すぅ……」


「寝た!?」


 あまりにもあっさり眠ってしまった。


 どういう仕組みなのかは分からないが、本当に撫でると眠ってしまうらしい。


「ど、どうしたらいいんだ?」


「そのまま眠らせてあげてください。大抵の場合、一時間ほどで自然に目を覚まされますから」


 乗組員は慣れた様子で答える。


「それでは、お部屋までご案内いたします」


 俺は眠ったミーシャを抱えて部屋へ向かった。


 案内された客室は広く、ベッドも沈み込むように柔らかかった。


 俺はミーシャをそこへ寝かせる。


 しばらくすると、イリアが部屋へ入ってきた。


「ミーシャさんは、もうお休みですか?」


「スリーピーシープっていう羊を撫でたら眠ったんだよ」


「眠くなるような肌触りの羊……。私も撫でてみたいです」


「まだ近くにいるかは分からないけどな」


「ふふん、アウラの出番だぞ!」


 いつの間にか部屋にいたアウラが、得意げに胸を張る。


 すると、その身体が淡い光に包まれた。


 光が消えた時――そこにいたのは、スリーピーシープだった。


「わあ! 素敵です!」


 イリアの目が輝く。


「失礼しますね」


 そう言って、イリアはアウラの毛を撫で始めた。


「言っておくけど、本物じゃないから眠くはならないぞ」


「構いません。ああ……最高です」


 イリアは幸せそうにアウラの毛を撫で続けている。


 まさか、イリアがこんなにふわふわしたものが好きだったとは思わなかった。


「お客様」


 その時、部屋の外から乗組員の声が聞こえた。


「部屋を開けっ放しにしていると、何が起きるか分かりませんよ……」


 そう言いながら乗組員が部屋へ入ってくる。


 そしてアウラを見た瞬間、目を見開いた。


「なっ……!」


「どうした?」


「ス、スリーピーシープ!?」


 乗組員の顔がみるみる青ざめる。


「スリーピーシープは絶滅危惧種ですよ! それを連れ去るなんて大罪です!」


「ち、違う! これは――」


「今すぐ近くの町に通報して、処罰してもらいます


 俺は咄嗟に声を張り上げた。


「あれは何だ!?」


「え?」


 乗組員が俺の指差した方向へ振り向く。


 その一瞬の隙に、アウラの身体が淡い光に包まれた。


 光が消える。


 そこにいたのは、いつもの少年姿のアウラだった。


「……あれ?」


 乗組員が目を瞬かせる。


「スリーピーシープは、どこへ?」


「さ、さあ……何のことだ?」


「先ほどまで、確かに羊が……」


 乗組員は首を傾げながら部屋を見回す。


「……見間違えたのでしょうか。すみません、失礼しました」


 頭を下げ、乗組員が部屋を出ていく。


 俺は安堵のため息を吐いた。


面倒な事がこれ以上起きないで欲しいと切に俺は祈るのだった。

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