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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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新たな謎

「木彫りの熊を預かれ? ……いいですけど、食いついたりしないですよね?」


「まあ、大丈夫じゃないか」


 ゴブリンが机の上に置かれた木彫りの熊を指で突く。


 すると、木彫りの熊が動き出した。


「やってほしいなら、指を一本一本食いちぎってやろうか! こうやってな!!」


 木彫りの熊はゴブリンの指に食いつこうとしているらしい。


 しかし、その口は動いていない。


 傍から見れば、ゴブリンの指に頭を擦り付けているようにしか見えなかった。


「口は悪いけど、可愛い奴ですね。小さなゴーレム達も喜びますよ」


 そう言って、ゴブリンは木彫りの熊を優しく撫でる。


 中身が邪神だということは、伝えない方がいいだろう。


 俺は空飛ぶ島へ来ていた。


 邪神に聞きたいことはまだある。


 だが、あまりにも騒がしいので、しばらくの間ここに預けておくことにしたのだ。


 魔力を封じてあるから、ここでしばらく反省させて、少し大人しくなってからギルバートとどんな約束をしていたのかを聞けばいい。


 それに、島で何か起きていないかも気になっていた。


「皆、上手くやれているか?」


「そうですね。ミアさんは皆の体調を気にかけてくれてますし、ラズベリルさんは小さい身体の割に仕事熱心で、植物の育成に励んでます。リズさんは、最初は文句を言ってましたが、定期的にイベントを開いて皆の交流を手助けしてくれてます。俺の手下達は強くなろうと、テオドールさんと手合わせしてます。ただ……」


 そこでゴブリンの表情が曇った。


「リリスさんは、まだ上手く馴染めてないようです。あの一件以来、自分と一緒にいたら誰かを傷つけるかもしれないって恐れて、誰とも関わろうとしないんですよ」


「無理もないが、それだとリリス自身も辛いだろうな」


 俺にも落ち度がある。


 ギルバートを信頼して護衛を頼んだせいで、リリスを苦しませてしまった。


「そうだ。兄さんからリリスさんに、皆と関わるように言ってくれませんか?」


「言っても、リリスは聞くと思うか?」


「もちろん。兄さんのことは信用してるみたいですから」


 信頼、か。


 敵対していた時には、俺にそんな感情を抱くことなどなかっただろう。


 リリスが記憶を取り戻さないことを、俺は密かに願っていた。


「分かった。言うだけ言ってみる。あまり期待するなよ」


「流石は兄さん。頼みましたよ」


 ゴブリンに送り出され、俺はリリスの家へ向かった。


 扉をノックすると、しばらくしてリリスが顔を出した。


「ラルク? 何か用?」


 素っ気ない口調。


 それでも、どこか嬉しそうな表情をしているように見えた。


「大分、元気になったみたいだな。皆とは仲良くなれそうか?」


 敢えて何も知らないふりをして尋ねる。


 最初から説教をしたところで、聞き入れてはくれないだろうと思ったからだ。


「えっと……その。私には必要ないから」


「違うんじゃないか?」


 リリスの表情が戸惑いに変わる。


「本当は関わりたい。でも、自分と関わったせいで誰かが傷つくのが怖いんじゃないか?」


 リリスは何も答えなかった。


 図星だったのかもしれない。


「何があろうと、俺が皆を守る。だから、皆と話してみろよ」


「……皆、優しいの」


 リリスがぽつりと呟いた。


「魔族の私にも分け隔てなく話してくれて……笑顔を向けてくれて……本当に優しいの」


 その声が震える。


「穏やかな陽だまりの中にいるみたいで……心地いいの」


 リリスの目に涙が浮かんだ。


「そんな皆が……消えてしまうのが怖いのよ!!」


 リリスは涙を流しながら叫んだ。


 そうか。


 リリスは皆が大好きなんだ。


 だからこそ、失うのが怖い。


 大切なものを失うくらいなら、最初から遠ざけてしまおうとしていたのだ。


「消させやしない」


 俺はリリスを真っ直ぐ見つめた。


「俺がいる限り。約束だ」


 俺はリリスの小指を取り、自分の小指を絡める。


 リリスは何も言わなかった。


 ただ、静かに泣いていた。


 俺は、リリスが泣き止むまで側にいてやることしか出来なかった。


「そろそろ行くぞ」


「……うん。会いに来てくれてありがとう。皆と色々話してみるわ」


 穏やかな表情を浮かべるリリスを見て、もう心配はいらないだろうと俺は思った。


 その時だった。


 背筋を刺すような殺気を感じた。


「――何か来る!」


 俺が身構えた瞬間、黒い刀身のようなものが鼻先を掠めた。


「ふん。流石はエンペラードラゴンの契約者か」


 目の前に立っていたのは、四十代くらいの男だった。


 黒髪に無精髭。


 二メートルを超えるツヴァイハンダーのような大剣を構え、鋭い目で俺を睨みつけている。


「何をする!」


「問答をしに来たわけではない。存分に殺し合おう」


 男は大剣を構え直した。


 テオドールが動かないところを見ると、島の住人を攻撃するつもりはないらしい。


 狙いは俺だけだ。


「……なら、やってやろうじゃないか」


 男が大剣を振り上げる。


 その巨体から繰り出される一撃が、俺の眉間目掛けて振り下ろされた。


 俺は避けなかった。


 迫り来る刀身へ向かって、握り拳を叩きつける。


 轟音が響き、衝撃で俺の身体が揺れた。


 男は勝ち誇ったように口元を歪める。


 だが――。


 次の瞬間。


 刀身に亀裂が走り、黒い大剣は粉々に砕け散った。


「俺の勝ちだな」


「はははは! 愉快、愉快!」


 男は砕けた剣を見下ろしながら、大声で笑った。


「この剣聖ラグナードを下すとは恐れ入った。リリスを攫うよう頼まれていたが止めにした」


「剣聖……?」


 剣聖?


 リリスを攫う?


 あまりにも情報が多すぎて、すぐには頭が追いつかなかった。


「剣聖が、どうしてリリスを?」


「名前は言えん。魔族に魔剣をもらう約束で頼まれたのでな」


 ラグナードは楽しそうに笑う。


「だが、俺はまだまだ未熟だった。また来る。その時は、また勝負してくれ」


 それだけ言うと、ラグナードは空飛ぶ島の端へ走り、そのまま飛び降りた。


「……何者だったんだ、あいつ?」


 本当に剣聖なのかも分からない。


 だが、もしかするとギルバートが送り込もうとした、新たな刺客だったのかもしれない。


 島の皆を守るためにも、警備を強化する必要がある。


「テオドール!」


「お呼びでしょうか?」


「どうして、さっきの男を排除しなかった?」


「私の力量を超えていましたから」


 テオドールは申し訳なさそうに答えた。


「もし私が死ねば、この島は落ちてしまいます。ですから、何も出来ませんでした」


それなら責めることは出来ない。


 島の管理人であるテオドールも、万能というわけではないらしい。


 さて、どうしたものか。


 俺が考え込んでいると淡い光が、突然俺の身体を包み込んだ。


「この素敵な島、私が守ってあげる」


「……え?」


 声が聞こえた。


 だが、姿は見えない。


 その声が途切れると、淡い光は島の中央へ吸い込まれるように消えていった。


 次の瞬間、空飛ぶ島全体が、巨大な光の結界に包まれた。


「……凄いな」


 これほど強力な結界を、瞬時に張れるとは。


「誰だったんだ、あれは?」


 島の安全は、しばらく大丈夫だろう。


 だが、俺達の前には、新たな謎が残されていた。

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