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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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悪しきが奏でる狂想曲

俺がアウラ達のいる城の客室へ戻ると、邪神がすぐに側へ寄ってきた。


「ラルクさんも転移魔法を使えるじゃないですか。それなら、私がわざわざ魔法を使わなくても良かったんじゃないですか?」


「俺のはまだ不完全だから燃費が悪いんだよ。一日に何度も使えないしな」


「それなら私の方が優れているじゃないですか。やっぱり人間は私の下なんですね」


 邪神は馬鹿にするように笑った。


 俺は無言で邪神を踏みつけた。


「うるさい口を塞がないと、このまま踏み潰すぞ」


「す、すみません!」


 そんなやり取りをしていると、部屋の扉が開いた。


「ラルク! 戻ったのね。バロックに何かされなかった?」


 入ってきたミーシャは、心配そうに俺の身体を見回している。


「怪我はない?」


「ああ、大丈夫だよ」


 俺は笑って答える。


「だけど、やっぱりバロックは操られていた。ますますギルバートが怪しいな」


「ギルバートが悪い魔族だったとしたら、アシュリーも悪い魔族なのかな?」


 その可能性はないとは言えなかった。


 親子なのだから、性格や考え方が似ることもあるだろう。

 だが、親がそうだからといって、子まで同じとは限らない。


「ミーシャも見ただろ? ティアと接している時のアシュリーの優しそうな眼差しを。俺は、あいつが悪人だとは思えない」


「そうよね。変なこと言ってごめん」


 ミーシャは安堵したように息を吐いた。


 アシュリーと、いつの間にか仲良くなっていたのかもしれない。


「ところで、アウラは何処に行った?」


「ここだぞ!」


 声のした方を見ると、少年姿のアウラがベッドの上で横になっていた。


 その手には一冊の絵本が握られている。


「エクスに、子供には絵本を読み聞かせてもらうものだって聞いたぞ! ラルク、絵本を読んでくれ!」


 アウラが、きらきらとした純真な眼差しを俺に向けてくる。


「バロックに何があったか知りたくないのか?」


「興味ないぞ! それより絵本だ! はーやーくー!」


 日増しにアウラが子供っぽくなっている気がする。


 ドラゴンの幼体だというのだから、子供っぽくて当然なのかもしれない。


 それでも、最初に会った時の方が大人びていた気がするんだがな。


 こうなったら、アウラは満足するまで騒ぎ続ける。


 仕方なく、俺は絵本を読んでやることにした。


 三匹の子犬が騎士になろうと奮闘するものの、ことごとく空回りして周囲を巻き込み、なんやかんやで王様になってしまうという、めちゃくちゃな内容の絵本だった。


 それでもアウラは楽しそうに聞いている。


 やがて、俺の腕に頭を乗せたまま、アウラは眠ってしまった。


 身動きが取れない。


 俺も、このまま寝ることにした。


 バロックに何が起きたのかという話は、明日ミーシャからイリアに伝えてもらおう。


 そう考えながら、俺は目を閉じた。


違和感を覚えて、俺は目を覚ました。


 左腕にはアウラの頭の重さと温もりを感じている。


 だが、右手にも何かの温もりを感じた。


 ミーシャが俺の手を握って、驚かせようとしているのだろうか。


「ミーシャ……まだ寝かせてくれよ……」


 眠い目を開けて右側を見る。


 俺の手を握っていたのは、ミーシャではなかった。


 イリアだった。


「ラルクさん、おはようございます。今日も素敵ですね」


「……え?」


 驚きのあまり、声が出なかった。


 イリアはそんな俺を見つめたまま、嬉しそうに微笑んでいる。


 明らかに、いつものイリアではない。


 イリアが俺に恋心を抱いているなんて、考えたこともなかった。


 ということは、誰かに操られている?


 俺はイリアの背後に隠れている木彫りの熊に気づき、そいつへ向けて冷気の魔術を放った。


「冷たっ!」


「この馬鹿神め! また懲りずに何かしたのか!」


「えへへ。この娘を使ってラルクさん達を殺め……いや、ちょっと痛めつけようとして、欲望が何千倍にも膨れ上がる魔法をかけたら、こんなことになっちゃいました。おかしいなぁ。恋敵のミーシャさんと刃傷沙汰になるはずだったのに……ぎゃぶ!」


 俺は邪神に氷の粒をぶつけてやった。


「本当にお前は碌でもないやつだ! それにそれだけじゃないだろ! イリアに恋心を抱かせる魔法も使ったんじゃないのか?」


「この、にぶちん! イリアさんは最初から貴方に惚れてるでしょうが!!」


 イリアが俺に惚れている?


 いや、あり得ない。俺はイリアに特別なことをした覚えなどない。


「ラルクさん。余所見しちゃ駄目ですよ。私を見てください」


 イリアは俺の頬を両手で包み、こちらへ顔を向けさせようとしてくる。


「ちょ、ちょっと待て!」


 このままミーシャに気づかれたら、何を言われるか分からない。


 何とかして、ミーシャが起きる前にイリアを元に戻さなければ。


「ちょっと~、うるさいじゃない……」


 最悪だ。


 ミーシャに見られてしまった。


 寝ぼけ眼だったミーシャの表情が、みるみるうちに悪鬼のような顔へと変わっていく。


「イリア! 抜け駆けするんじゃないわよ!! ラルクは私のものなの!」


「ミーシャさん、何を言ってるんですか? 私は選ばれなくても構いません。ただ、ラルクさんを想っていられれば、それだけでいいんです」


 そう言って、イリアは優しく俺を抱きしめる。


「ちょっと!」


 ミーシャが慌ててイリアを俺から引き離した。


「ラルクもデレデレしないでよ!」


「いや、してないけど……」


 俺は一刻も早く、この場から逃げ出したかった。


 しかし、その時だった。


 客室の扉が乱暴に開かれ、一体のリザードマンが飛び込んできた。


「お前がラルクだな。朝から女を侍らせるなんて、大層な身分になったものだな。だが、お前の命は俺が――」


 最後まで言い終わる前に、ミーシャがリザードマンの顔面へ飛び蹴りを叩き込んだ。


「邪魔しないで! 今、ラルクが誰のものか話し合っているんだから!」


「ぐおっ!」


 リザードマンが吹き飛んでいく。


「ラルクさんはミーシャさんの恋人になっても気にしません。そう言っているじゃないですか。それでも、万が一私を選んでくれたら……私は全力で応えます」


 にっこりと微笑んだイリアは、十字架を高く掲げた。


 次の瞬間、白い雷が壁際へと落ちる。


「ぐえええっ!」


 雷が落ちた場所には、壁に擬態していた巨大なカメレオンの魔物がいた。


 どうやら、もう一体潜んでいたらしい。


 ある意味、二人が俺を取り合っていたお陰で、敵を簡単に倒すことができた。


 だが――地獄はまだ終わっていなかった。


「もう食べられないぞ……」


 俺の腕を枕にして眠っているアウラが、呑気に寝言を呟く。


 代われるものなら、俺と代わってくれと俺は心で叫ぶのだった。


 その後、俺達はエクスの私室へ呼ばれた。


「すみません。城への魔物の侵入を許してしまいました。結界は張ってあったのですが……」


「それだけ手強い奴だったんだろ。城の者が傷つかなくて良かった」


 口には出さなかったが、俺達を本格的に殺そうとしている誰かがいる。


 そう考えた方がいいだろう。


「邪神を退治していただいた恩も、まだ返せていません。せめてものお詫びに、これをどうぞ」


 エクスが差し出したのは、一枚の黒いマントだった。


「これは傷の治りを早める加護が込められたマントです。国宝の一つですが、冒険者のラルクさんに持っていてもらえれば、先人の王たちも喜ぶでしょう」


「ありがとう。大事にするよ」


 俺達はエクスに礼を言い、城を後にした。


 城門を出ても、誰も口を開かなかった。


「ラルクさん、私を殺してください。あの時の私は間違っていたんです!!」


 イリアは真っ赤になりながら、ぶんぶんと首を振っている。


「早まるな! 分かってるよ。イリアは俺に恋心なんて抱いてないんだろ?」


「……神よ。今、貴方の元へ向かいます」


「わー! ナイフしまいなさい!ラルクも女心を汲みなさいよ!」


 理不尽に怒られて、俺は首を傾げるのだった。

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