↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/49

痛みと成長

「兄さん、どうでしたか?」


俺がゴブリンの家にリリスを運び込むと、ゴブリンが心配そうに駆け寄ってきた。


「ああ! こんなに弱っちまって可哀想に……」


「しばらく様子を見てやってくれ」


俺はリリスをソファに横たえる。


「様子を見るったって、何をすれば……」


「だらしないわね。少し汚れてるみたいだから、濡らした布巾で顔を拭いてあげて。私は、この子が目を覚ました時に食べさせるスープを作るわ」


二階から降りてきたリズが、リリスを見るなりゴブリンに指示を出す。


そして、そのまま台所へ向かっていった。


「お前、魔族は怖くないのか?」


「家を焼かれたことがあるから、怖いわよ。でも、その魔族とこの子は違うもの」


魔族の全てが悪いわけではない。リズはそれを理解しているのだろう。


過去に魔族に酷い目に遭わされているにもかかわらず、リリスを助けることを迷わなかった。強い奴なんだな。


俺はそんなリズを少し見直した。


「お前をここに連れてきて正解だったかもな」


「でしょ? 私は気も利くし、優しいし、非の打ち所がない完璧な女なのよ」


玉ねぎを刻みながら自画自賛するリズを見て、口で損する奴だなと少し呆れる。


「他のみんなは何処にいる?」


「俺の子分たちは、俺の家の真後ろの家にいます。ミアさんとラズベリルさんは、俺の家から右手に進んだ先の家ですよ」


「分かった。少し話をしてくる」


リリスが魔族に監禁されていたことについて、島の住人たちにも話しておく必要がある。


俺はゴブリンの家を出た。


俺はみんなを島の中央に呼び集めた。


「ラルク、そんな怖い顔をしてどうしたの?」


ラズベリルがきょとんとした顔で俺に尋ねる。


「皆、リリスを知っているな?」


俺がそう切り出すと、皆の視線が俺に集まった。


「ギルバートが護衛のために送ってきた魔族が、護衛対象のリリスを監禁して暴力を振るっていた。お前たちは何も気付かなかったのか?」


ミアとラズベリルは驚きの声を上げ、互いに顔を見合わせる。


「あの魔族のラジィさん、とても優しく接してくれたわよ。薬草を採ってきてくれたこともあったのよ」


「そうそう。私にもお菓子とかくれたわ。でも、二週間前からリリスは魔界の診療所に入院してるって言ってた。あれは嘘だったのね」


ラズベリルは悲しそうな顔で俯く。


ラジィの嘘を見抜けなかったことを悔いているのかもしれない。


一方、手下のゴブリン二人は黙っていたが、唐突に俺へ頭を下げた。


「俺達、気付いてたんです。あいつの冷酷さを」


「俺は、リリスの頬を叩くあいつを見たんです。でも、俺達は弱っちいから、黙って見てるしかなかったんです」


俺は二人を責められなかった。


力がなかった頃の俺なら、二人と同じように見て見ぬ振りをしていたかもしれない。


「テオドール!」


「お呼びですか?」


地面から生えるように、テオドールが現れる。


「俺が不在の間、皆の話を聞いてやってくれ。異変があれば原因を排除。もしくは俺を呼べ!」


テオドールは手帳のような物を取り出すと、指先でさらさらと文字を書き足していく。


「島のルールとして覚えておきます。朝と晩は島の中央に待機しますので、皆さん、ご用があれば気軽に話しかけてください」


深々と皆に頭を下げると、テオドールはその場に置かれた置物のように佇んでいた。


「ラルクさん、俺、俺……」


涙ぐむゴブリンの肩を、俺は軽く叩く。


「島を任せっぱなしにしていた俺にも責任がある。あまり自分を責めるな。それに、自分が弱いと思うなら強くなればいいさ」


「俺、強くなります! そして島の皆と兄貴を守れるくらい強く!」


「俺も強くなります!」


二人のゴブリンは、やる気に満ちていた。


強くなる奴の目をしている。


次に島へ来た時、どんな風になっているのか楽しみだ。


「私、魔族だからって無意識にリリスを避けていたかも。反省するわ」


「私は自分の役目さえ果たせばいいって思ってたけど、それじゃ駄目ね。皆と交流しないと」


ミアもラズベリルも、今回の件で学ぶことがあったのだろう。


「ギルバートの手下がまた来るらしい。変な真似をしたら、すぐにテオドールに伝えてくれ


「任せて! 魔王の手下だって容赦しないんだから!」


「あくまで報告だけしろ。まだ敵だと決まったわけじゃないからな」


拳を振り上げるラズベリルに、俺は念を押す。


ギルバートは確かに怪しい。だが、本当に手違いだった可能性も捨てきれない。


こちらから刺激して、つまらぬ争いを起こすのは避けたい。


「ちぇ、つまんないの」


「遊びじゃないんだぞ?」


俺が睨み付けると、ラズベリルは焦った顔をする。


「わ、分かったわよ。場を和ませようとして言ったの。本当よ」


「よしよし。ラルクも分かってるわ」


涙目になったラズベリルの頭を、ミアが優しく撫でる。


「じゃあ、俺は行くからな」


「ま、待って……」


背後からリリスが俺に声をかける。


立っているのがやっとなのか、ゴブリンに支えられている。


「動いて大丈夫なのか?」


「何とかね。貴方にお礼を言いたかったの。助けてくれてありがとう」


弱々しくも、はっきりとした声でリリスは笑みを浮かべている。


「……俺が魔力を封じたせいで、自分の身も守れなかったんだろ? 俺の責任でもある。魔封じを解いてやろう」


俺はリリスに施した魔封じの印に指で一文字を書く。

すると、印は跡形もなく消えた。


「……ありがとう」


「印を消してやったからといって、島の皆に手を出すなよ? その瞬間、お前は灰になる呪いをかけたからな」


呪いをかけたというのは嘘だ。


だが、そうでも言っておかないと、リリスが記憶を取り戻した時に何をするか分からなかった。


「大丈夫。何もしないわ。皆、大好きだから……」


そう言って、リリスは目を閉じた。


疲れてしまったのだろう。


「兄さん。後は俺らに任せて、旅を続けてください」


「ああ、頼んだぞ」


俺は島の皆に手を振りながら、ミーシャたちのいる宿へ転移するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。