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最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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小さな希望

町に着くなり、俺は青い顔をしてミーシャたちの前で布袋を逆さにした。


金が尽きたのだ。


まだまだあると思っていたのだが、アウラが勝手に使っていたらしい。


「どうすんだアウラ? 今晩の宿代も無いんだぞ?」


「無いなら野宿すれば良いんだぞ! その前に肉でも食べよう!」


「飯を食う金も無いんだよ!」


「そ、そんな……」


アウラはようやく事の重大さに気づいたのか、膝をついていた。


「あの、ラルクさん。多少なら私も銅貨がありますから、今日はそれで泊まりましょう」


「女の子から金は借りない主義なんだ。俺が何とか稼ぐ」


そうは言っても、どうやって稼ぐべきだろうか?


「酒場で用心棒を募集してるかもしれないから、行ってみましょう」


「そうだな。こういう時は、ミーシャがいてくれて心強いよ」


「ほ、褒めても何も出ないんだから」


ミーシャの尻尾がピンと立っているところを見ると、喜んでいるのだろう。


俺たちは酒場に向かった。


酒場に着くと、俺はアウラたちを外で待たせた。


アウラを一人にすると、勝手にどこかで飲み食いする恐れがあったからだ。


昼間だというのに、酒場は人で混み合っていた。


冒険者風の鎧を着た男たちに話しかけてみたが、人手は足りているようだった。


「……収穫無しか。このままじゃ野宿だな」


ため息を吐いていると、誰かが俺の服の袖を引いた。


振り向くと、鎧を身に着けた幼い少年が立っていた。


「どうした、坊主?」


「あの、お兄さん。迷宮に行きたいんだけど、ついて来てもらえませんか?」


「悪いが慈善稼業じゃないから、金をもらうぞ。銅貨はあるか?」


「銅貨はありませんが、これでどうですか?」


少年は袋から拳大のダイヤモンドを取り出した。


俺は慌ててダイヤモンドを隠すように少年に促し、そのまま少年を連れて酒場の外に出た。


「お前、人のいる場所でそんなもの見せるな! 盗まれるぞ!」


「す、すみません。気づきませんでした」


「その子は誰? 迷子?」


「ぼ、僕はセルジュと申します。勇者に任命されたのですが、右も左も分からなくて。とりあえず、聖剣が眠るという迷宮に行って、剣を手に入れたいんです」


こんな世間知らずのお坊ちゃんに、勇者を任せて大丈夫なのだろうか?


「勇者って世界平和のために頑張るんでしょ? ラルク、手伝ってあげましょうよ」


「手伝ってやっても良いが、報酬はダイヤモンド以外にしてくれ」


さっきのダイヤモンドだけで、一生豪遊して暮らせるだけの価値がある。恐れ多くて貰えやしない。


俺たちはセルジュに案内され、迷宮へ向かった。


迷宮は森の奥にあり、苔や蔦に覆われていた。


「……これが迷宮なのですね」


イリアは怯えているのか、俺の腕にしがみつく。


「俺達が先行する。セルジュは合図するまで待っててくれ」


セルジュは緊張しているのか、動きがぎこちなかった。


この調子で大丈夫だろうか?


迷宮の中は、壁に明かり取りの穴があったが、薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。


俺は光球を出して辺りを照らす。


地面に罠はなさそうだ。


「入って来て良いぞ。魔物もいないみたいだ」


「魔物で溢れていると町の人は言ってましたが、ただの噂だったようですね」


そう言いながらも、セルジュは剣を構えて辺りを警戒している。


「そんなに緊張してたら倒れちゃうぞ! これでも食べて落ち着くんだぞ!」


アウラはセルジュの口に干し肉を押し込む。


「アウラ! その肉はどうしたんだ!!」


「凄く貴重な獣の干し肉だぞ! 前に銅貨三百枚で買ったんだぞ」


「銅貨三百枚だと! それだけあれば、高級な肉が腹がはち切れるほど食えるぞ!!」


まさかアウラがぼったくりにあっていたとは思わなかった……。


後で躾が必要なようだ。


俺とアウラのやり取りを見て、セルジュは笑った。


「あはは、ラルクさん達はいつもこんなに賑やかなんですか?」


「俺は静かにしてるつもりなんだがな。お前も仲間と旅してみろ。毎日、退屈しないぞ」


「……仲間、ですか。出来るかな。僕にも」


「出来るわよ。セルジュは良い子なんだから」


ミーシャに頭を撫でられ、セルジュは照れくさそうに笑っていた。


俺達は先に進む。


すると、唐突に黒い影が襲いかかってきた。


俺は光弾を撃ち込もうとしたが、止めた。


これに攻撃したら、まずい気がした。


黒い影は俺から離れると、今度はミーシャに襲いかかろうとする。


「ミーシャさん!」


セルジュが剣を影に突き刺そうとした。


ミーシャが叫ぶより早く、俺はとっさに弱い雷の魔術をセルジュの腕へ放った。


「う!」


セルジュは思わず剣を落とす。


「止めろ! 影を攻撃するな。取り返しの付かない事になる」


結局、影は襲いかかるふりだけをして姿を消した。


「あれは何だったのでしょうか?」


イリアは影がいた辺りを眺め、不思議そうに首を傾げる。


「何だっていいさ。今は進もう」


奥に進むと、宝箱が一つだけ置かれた部屋に着いた。


「怪しすぎる。絶対に開けるなよ」


「え?」


セルジュが宝箱を開けると、中から紫色の煙が立ち上り、セルジュの顔を覆った。


煙を吸ったセルジュは、その場で寝息を立てて眠ってしまう。


即死するような毒ではなく、俺はほっと胸を撫で下ろした。


イリアの魔法でセルジュが目を覚ますと、恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「怪しい宝箱は開けるな! 迷宮には命を奪う罠が仕掛けられている可能性が高いんだからな!」


「は、はい……」


萎縮するセルジュをこれ以上責めても仕方がない。


俺は説教を切り上げ、先へ進む。


部屋の奥へ進むほど、暗くなっていく気がする。


俺の光球だけでは、部屋全体を照らすことができない。


「試練の時です」


いきなり頭上から声が聞こえた。


見上げるが、何もいない。


「何をさせる気だ?」


「私を打倒しなさい。ただし、影を傷付けてはいけませんよ」


その瞬間、部屋全体が明るくなる。


斧を構えた巨像が、こちらに向かって来るのが見えた。


その周辺では、先ほどの影が俺たちを挑発するように、ゆらゆらと揺れている。


「ラルク、やるぞ!」


「おう!」


俺が巨像に向かって行こうとすると、セルジュが立ち塞がった。


「僕にやらせて下さい。頼ってばかりじゃ、勇者なんて名乗れませんから」


俺はセルジュの心意気を汲み、後ろに下がる。


「見届けてやるよ。お前の伝説の一ページをな」


セルジュは返事をすることなく、剣を抜いて巨像へと迫った。

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