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最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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染まらない純真

「……ラルク」


「気づかないふりをしろ」


草木の生えない荒れ地を荒れ地を進んでいると、背後から膝丈程の卵が着いて来ていた。


本物の卵でなく木を加工したもののように見える。


襲って来ないから敵では無さそうだが、下手に相手にしないほうが良いだろう。


「ラルク。あれ食って良いか?」


「止めとけ腹下すぞ」


アウラを窘めてから、再び卵を見る。


卵は動きを止めると中から見覚えのある女性が現れた。


コトハだ。


「何やってるんだ?」


「手を貸して欲しいの? いいわよね。 行くわよ」


「ま、待ってくれ」


コトハは返事も聞かず俺の手を掴むと卵の中に引き込む。


気付くと俺は薄暗い部屋にいた。


「ここは何処だ?」


「ここはバロックの城よ。ここにある大事な物を探して欲しいの」


「バロックの城だって? そんな場所、どうやって移動したんだ?」


驚いていると、コトハはいたって落ち着いた様子で答えた。


「この卵で来たのよ。見てたじゃない」


「いや、そうじゃなくて……」


「言ってなかった? 私には開けて閉じるだけで、指定した場所に移動できる力が有るのよ」


だから、開閉できる木の卵で移動していたのだろう。卵である必要はなさそうだが。


「じゃあ、お願いね。大事なものを見つけたら教えて」


「待てよ! 俺一人だけでやれってか?」


俺一人でも魔族たちと戦って勝てる自信はある。


だが、本気でやり合えば、お互い無事では済まない。


「ぺけたんを貸してあげるから、うまくやって」


コトハは白熊のような犬のぺけたんを置いていくと、卵の中に入ってどこかへ行ってしまった。


「大事なものってなんだよ。……行くか?」


俺の言葉に反応するように、ぺけたんは一鳴きした。


俺は薄暗い城の中を慎重に歩く。


壁に掛けられたカンテラの灯りが心許なく、足元を照らしていた。


しばらく歩いたが、気味が悪いほど魔族や魔物に遭遇しない。


「昼間は魔族も寝ているのか?」


警戒しながら進んでいると、城の端にある塔の小部屋から何かの気配を感じた。


慎重にドアを開けると、中には目元を布で覆った、魔族の角を生やした少女がいた。


「誰?」


怯えた声で少女は尋ねる。


武器や魔法を使う気配がない。戦う力がないのかもしれない。


「殺す気はない。この城の大事なものを渡してくれればな」


少女は悩む素振りを見せてから、申し訳なさそうに答える。


「困りましたね。私には兄様の大事なものは分からないから」


「兄様だと? バロックのことか?」


「ええ。兄様は世界で一番素敵な魔族よ」


信じられなかった。


好き勝手に暴れ回り、邪神復活のために魂を集めようとしているあいつが、素敵だと本気で思っていることが。


「あいつが何をやっているか知っているのか?」


「平和のために活躍しているんでしょ?」


少女はくすりと笑う。


「うふふ。目が見えなくても、兄様の噂は聞こえてくるの」


この城の者たちが、少女を騙しているとしか思えなかった。


これ以上話しても何も得られないだろうと、俺は部屋を後にすることにした。


「俺が来たことは誰にも言うなよ」


「行っちゃうの? 今度はゆっくりお話しましょう。私はフェイっていうの」


無邪気にフェイは笑う。


魔王の妹なのに、警戒心というものがないらしい。


「機会があればな」


それだけ言うと、俺は扉を閉めた。


それから闇雲に階段を下りていくと、魔族が何か話していた。


「バロック様が魔力を封じられた今、我らがこの城を守るしかない」


「そうですね。でも、リリスの体に魔封じの印を移せば、バロック様もまた暴れられるようになる。それまでの辛抱ですね」


オリマがリリスを探していたのは、このためだったか。


「ああ。不幸を引き受ける体質を持つ、あいつでなければ魔封じの印を移すことはできんからな。そうなれば、用済みだ」


可笑しそうに笑い合う魔族たちに、反吐が出そうだった。


仲間を物のようにしか考えないこいつらに。


「悪い、ぺけたん。待っててくれ」


俺は魔族に殴りかかっていた。


魔族は壁にめり込む。


「何だ、お前は!」


もう一人の魔族が双剣で俺に斬りかかろうとする。


「ばう!」


ぺけたんの体はみるみる大きくなり、大きな狼へと姿を変えた。


そして、魔族を踏みつけた。


「ぺけたん、助かったよ」


ぺけたんは自慢気に「わう!」とだけ鳴いた。


「た、助けてくれ。命だけは!?」


「この城の宝物庫に案内しろ」


宝物庫といえば、大切なものがしまわれているだろうと考えたのだ。 


魔族について行った先にあったのは、巨大な扉だった。


「好きな物を持っていけばいい。人間如きに、この扉は開けられないだろうがな」


「良いんだな? じゃあ、貰っていくぞ」


悪態をつく魔族を気にせず、俺は扉を殴って穴を空け、そこから中へ入った。


その際に破片が辺りに飛び散り、魔族は気を失っていた。


宝物庫の中は金貨で溢れており、乱雑にブレスレットや指輪などの装飾品が置かれている。


「どれが大事なものなんだ。ぺけたん、分かるか?」


ぺけたんは欠伸をしている。


分からないのだろう。


適当に装飾品を持っていこうとした時、金貨の下に箱のようなものがあることに気づいた。


金貨をかき分けると、中から宝石をあしらった棺が現れた。


「死体でも入ってるのか?」


俺は意を決して棺を開ける。


中には少女が入っていた。


息はしていない。


なのに、死んでいるようには思えなかった。


「大事なものが見つかったみたいね」


突然、コトハの声が聞こえ、俺は飛び上がりそうになった。


「いつからそこに?」


「今さっきよ。さ、帰りましょう」


コトハは俺に手を差し伸べる。


「その前に聞かせてくれ。これは……この子は誰なんだ?」


「勇者サキよ。魂は無いけどね」


「魂がない?」


驚いて、思わず俺は聞き返した。


「何かあって分離しちゃったんじゃない? 今は回収するだけ。魂探しはまたいつか。もう良い? 行くわよ」


問答無用といった感じで、コトハは俺の手を掴む。


気づくと、俺は荒れ地に戻っていた。


「ラルク、遅いじゃない。コトハと浮気してたんじゃないわよね」


ミーシャがギロリと俺を睨む。


「するわけないだろ。な、コトハ。あれ、どこ行った?」


コトハは姿を消していた。


結局、勇者の体を何のために欲していたのだろう。


何も分からなかった。


ただ、勇者サキが消えたことに、バロックが関与していることだけは分かった。

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