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最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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語られぬ戦い

「俺は『支配する者』、オリマ・ネオットだ。手負いの魔族が居るだろ。譲り渡せば命は助けてやる」


リリスの事だと俺は思った。こいつはリリスが空飛ぶ島に向かった事を知らない。


「拒むと言えばどうしますか?」


「それなら仕方ない。この妖精の里を滅ぼし、お前を殺すとするか」


ジェンドは鹿の姿から人の姿へと戻った。


その手には、青白く輝く剣が握られていた。


「他の妖精達が休眠中で良かった。存分に暴れられる」


「俺とやる気か? 死んでから後悔するなよ?」


刃を向けられているのにオリマは怯える様子はない。勝てるという絶対的な自信があるのだろう。


「ジェンド!」


俺が加勢しようとするとジェンドが制した。


「ラルク殿。手助けは無用です。これは、私が片を付けなければならない問題です」


ジェンドの鋭い瞳から覚悟を感じられた。邪魔をする訳にはいかないだろう。


「おー、おー格好付けて。そんな古臭い剣で俺に勝てるかよ」


オリマが指をカタカタ動かすと人形がジェンドの前に現れた。


直ぐにジェンドは人形を切りつけようとはしなかった。


人形の頭上に向かって剣を振ると人形は動かなくなった。


「あ、あれは……!」


イリアが青ざめる。それは人形ではなかった。

血の気を失った、人間の死体だった。


「つまんねーの。切っちまえば良いのに」


「人形を操るだけでなく……死者まで人形のように扱うとは」


ジェンドの手が震えていた。


だが、それが恐怖によるものではないことは、すぐに分かった。


怒りだ。


「そりゃ最高の褒め言葉だ。まだまだ行くぞ」


オリマが指を動かすより早く、ジェンドが地面を蹴った。


「……っ! 酷え事をしやがる」


次の瞬間、オリマの右肩からおびただしい血が流れていた。


「ああ。私に慈悲はありません。諦めてください。生きることを」


冷たい眼差しをジェンドはオリマに向けている。


「諦める? あはは、そんな必要はないね。だって死ぬのはお前だから」


オリマの体から無数の小さな人形が飛び出し、ジェンドへ群がる。


だが、ジェンドは一歩も退かず、剣の鞘を握っていた。


何が起きたのか、俺には見えなかった。


次の瞬間には、ジェンドへ迫っていた人形達が全て地面に転がっていた。


オリマはジェンドに触れてすらいないのに余裕の表情をしている。


それが俺には不気味に見えた。


「この程度ですか? 物足りませんね」


「あはははは!」


不意にオリマは笑った。


「何が可笑しいのですか?」


「偉そうなお前の顔が苦痛に歪むのがもうすぐ見れるから楽しみでね。つい笑っちまったよ」


何が起きたか理解出来なかった。


ジェンドが剣を自らの腹に突き刺していたからだ。


「ジェンド!」


「止めろ。近づくな」


ジェンドに駆け付けようとするミーシャを俺は止める。


ジェンドの体から糸が見えた。


オリマは最初からジェンドに糸を付ける隙を伺っていたのだら。


「数分なら生きてる奴も操れるんだよ。やっぱり死ぬのはお前だったな」


ぴくりともジェンドは動かないジェンドをオリマは踏みつける。


次の瞬間、俺はオリマを殴っていた。


許せなかった。


傷付いた者を更に傷付け侮辱するオリマが許せなかった。


「次はお前か? これを見てみろ」


「ら、ラルク」


ミーシャが操り人形みたいに不自然な動きをして俺に近づく。


その手にはナイフが握られている。


「この女はお前の女だろ? 殺されたく無かったらその手で殺されな」


「その程度かお前は?」


「は? 状況分かってんのか?」


俺は二本の指剣に見立て、ミーシャの頭上から伸びる透明な糸を切る。


その時、ミーシャはナイフ落とした。オリマの魔の手から解放されたのだろう。


「俺の糸が、こんな簡単に……。お前が例のドラゴンテイマーか!」


「だったらどうする? どの道お前はここで終わりだ」


俺はオリマの顔面を殴り付け、怯んだ隙に雷の槍を腹部に突き刺す。


声にならない声をオリマが上げている。これだけやれば、その内力尽きるだろう。


そんなことより俺はジェンドの傷の具合が、気になっていた。


「助かりそうか?」


先にジェンドの傷を診ていたイリアに尋ねると不思議そうな顔をしていた。


「致命傷ではあるんですが、普通に心臓が動いて傷が塞がってきているんです」


ジェンドの傷口が淡い白い光に包まれていた。


これはラズベリルの魔力だと思った。


事前に致命傷を負った時に怪我が治癒する魔法がかけられていたのだろう。


「愛されてるなお前は」


安堵で思わず俺は笑みが溢れた。


「ラルク! 何か変だぞ!」


オリマの方を見ると体が糸に吊るされていた。


「最終手段だ! 俺自身を人形にしてお前達の息の根を止めてやる!」


オリマの胸辺りに人形が沈んで行くと、巨大な操り人形に姿を変えた。


「借りだぞジェンド。アウラ!」


アウラは何も言わずに俺に背を向ける。


オリマの飛ばす巨大ナイフをかわし、その背中に回り込む。


「悪あがきもこれで終いだ! 喰らえ!!」


聖なる力込めた無数の、光弾をオリマに叩き込む。


すると、オリマは塵一つ残さず光に焼き尽くされた。


「無駄な足掻きだったな」


それだけ言い捨てるとアウラに指示して地上に下りた。


「迷惑をお掛けしました」


ジェンドは俺に深々と頭を下げた。


「気にするな。それより傷は大丈夫か?」


「ええ。痛みもほとんど有りません。流石はラズベリル様といった所ですね」


剣の刺さっていた腹の辺りをジェンドは擦っていた。この様子なら大丈夫だろう。


「お前もちゃんとあいつを褒めるんだな」


「評価してるからこそラズベリル様に付き従っているのです。つけ上がるので本人の前で、けして言いませんがね」


「あはは、その方が良いかもな」


その後、ジェンドに案内してもらい俺達は森を抜けた。


俺はオリマが何故、リリスを探していたか考えていた。


態々出向く価値がリリスに有ったのだろう。


「どうしたのラルク難しい顔をして?」


ミーシャが俺の顔を覗き込む。


「いや、何でもない」


今はこれ以上考える必要はないかもしれない。


リリスの魔力も封じてあるので何も出来ないだろう。


平穏を祈りながら俺は旅を続けるのだった。


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