表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/38

報われぬ思い

 ミアが小屋の瓶の蓋を一つずつ開け、まじないを唱える。


 すると瓶の中にあった青白い魂が、まるで導かれるように次々と飛び出していった。


 俺は小屋を出て、近くの廃墟へ向かう。


 すると空を飛んでいた魂の一つが、人形の身体へ吸い込まれた。


 無機質だった人形の肌に、ほんのりと赤みが差していく。


 やがて指先が動き、閉じていた瞼がゆっくりと開いた。


「人に戻ったのか?」


 周囲からざわざわと声が聞こえてくる。人形が人間へ戻ったのだろう。 


 止まっていた町の時間が再び流れ出したのだろう。


 ミアも小屋から出てくると、一人の女性へ駆け寄った。


「アマンダ! 呪いが解けたみたいね!」


「来ないで!」


「……え?」


 拒絶の言葉にミアの足が止まる。


 アマンダは身体を震わせ、まるで化け物を見るような目でミアを見ていた。


「また魂を奪う気でしょ?」


「違う! 私は――」


「友達だと思ってたのに……」


 アマンダの言葉に、ミアは何も言えなくなった。


 どうやら、デルモンドに呪いをかけられた時のことを覚えていないらしい。


 ミアは町の人々を守った。けれど今、その町の人々からは恐れられている。


 町の人達はミアを囲む。


「魔女は出ていけ! 親切にしてやったのに恩を仇で返しやがって!」


「お前なんか町に迎え入れなければ良かった」


 ミアは否定もせず黙って町の人々の非難をその身に受けていた。


 魔法を使えば口を塞ぐ事も容易だろうに、それをしないのは町の人々を心から愛してる証だろう。


「違うんだ。こいつはお前達を……」


「良いの。私のやり方が悪かったの。私が悪いの」


 ミアは町から去ろうとする。


「皆、本当にごめんね」


 俺は見逃さなかった。その瞳が潤んでいた事を。


 追おうとしたが、強い風が吹いた瞬間にミアは消えていた。


 それから、間もなくアウラに乗ったミーシャがやって来る。


「皆、人形じゃなくなったって事は崩壊の呪いが解けたのね。あれ、ミアは?」


「イリアを部屋で寝かせてあるから様子を見ててくれ、俺はミアを探して来る」


「ちょっとラルク!」


 ミーシャの声を背に受けながらミアの魔力を探知する事に集中した。


 ミアを追って、数十分が経っただろうか。


 楢の太い枝に腰掛けりミアを見つけた。


 声を張り、俺はミアに話しかけた。


「あのままで良いのか? 誤解されたままで」


「良い訳ないよ! でも、辛い目に合わせたのは確かだから……」


 ミアはぼろぼろ涙を流す。


「どうして、あの町の連中の事をそこまで思うんだ?」


「私、魔女の出来損ないって言われて子供の頃に親に捨てられたの。でも、あの町の町長のセルバンさんが拾って育ててくれた。だから町の人全員が家族みたいな存在だって今でも思ってる。……今の皆はどう思っているかは分からないけど」


 ミアにとって町の人は自分を捨てた親以上に大切な存在なのだろう。 


 だから、誤解されたとはいえ、町の人たちに嫌われることは身を切られるよりも辛いことなのだろう。


「確かに、弁明しても、今の町の連中はあんたを信じないだろう。頃合いを見て、皆があんたの話を聞けるようになるまで距離を置いた方が良いかもな」


「でも、当てがないの」


「何もない場所で良いなら、招待しようか? 空飛ぶ島に」


 ミアは風を纏い、楢の木からふわりと地面へ降り立った。


 少し寂しそうな顔を浮かべると、ミアは小さく笑った。


「それも良いかもね」


 俺はミアを空飛ぶ島に連れて行くとゴブリンが出迎える。


「兄さんお久しぶりです。いや〜ゴーレムも可愛いもんで、子分達より俺に懐いてるんですよ。それで、今回は何用で?」


 小さなゴーレムに囲まれてゴブリンは幸せそうな笑みを浮かべていた。


 俺の後ろで緊張してるミアを前に出させてから俺は口を開く。


「ここに暫く住む事になったミアだ。仲良くしてやってくれ。一応言っとくが変な事をするなよ」


「俺を見くびらないで下さいよ。ゴブリンの中でも俺は紳士なんですからね! ミアさん、こちらにどうぞ。住処は幾つか有りますからね好きな場所に住んで下さい。家具はどんなものが……」


 紳士を自称する割には、ミアを前にして鼻の下を伸ばしていた。


「……本当に大丈夫だろうな」


「大丈夫ですって。信じて下さいよ兄さん」


 悪い奴では無いし今回信じてやるか。


 ミアも戸惑っているが、ここにいる間は辛い思いをしないだろう。


「ミア、また来るからな」 


「うん、ありがとうラルク君」


 今はまだ寂しそうな顔だが、その顔が笑顔に満ちれば良いなと俺は考えていた。



 俺はミーシャ達を待たせている町に戻った。


 ミーシャは町の人達を集め何やら話していた。


「ミアが貴方達の魂を抜いたのは貴方達を守る為だったの。傷付ける為じゃないわ」


「そんな事信じられるか! お前らもあいつとグルなんだろ!」


 石を拾い上げ、投げようとした男の腕を俺は掴んだ。


「止めろ」


「くっ!」


 町の人々は完全にミアを悪だと思い込んでいるようだった。


 今の彼らには何を言っても届かない。


「ミーシャ、イリアはどうなってる?」


「まだ気を失ってるけどアウラに担いでもらってる。ラルクが来てから町を出ようと思ったから」


 離れた場所にアウラの姿を確認すると、俺は町の人達を睨み付けた。


「長い間ミアと居たのに何も見てなかったんだなお前らは。どうしてあいつの真意を汲みとってやれないんだ」


 町の人達は何も言わず俯いている。


 俺はミーシャの手を引いてアウラと合流し、町を出るのだった。


 俺の言葉が、いつかこいつらの心に届けばいい。

 そう思いながら、俺は町を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ