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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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闇夜の開戦

まさか、こんなことをする羽目になるとは。


 城塞の殺風景な厨房で、俺は無心になってジャガイモの皮を剥き、木桶に放り込んでいた。


「結構剥いたわね。これくらいあれば十分よ。あとは私に任せて」


 木桶を受け取ったミーシャは、ジャガイモを一口大に切り、次々と鍋に放り込んでいく。


 サイモンに協力し、魔物退治を手伝うことになった俺たちだったが、ロックウェルの兵士たちの食事事情を聞いたミーシャは、目を見開いて驚きの声を上げた。


「えっ! 料理をしないの!?」


「恥ずかしながら、料理のできる者がほとんどいないのです。肉を焼いたり、野菜を茹でたりして、簡単に済ませているんです」


 サイモンは恥ずかしそうに頭を掻いた。


 そんな食事事情を聞いて、ミーシャは放っておけなかったのだろう。


「それなら私が料理を作ってあげる!」


 そう意気込んだ結果、俺まで厨房でジャガイモの皮を剥くことになったわけだ。


 料理の心得があるミーシャは、手際よく野菜を刻み、鍋の中の食材を木べらでかき混ぜていく。


 これなら安心して任せられるだろう。


 俺は厨房を後にし、城内を見て回ることにした。


 城内に華やかさはない。年季の入った石壁を、カンテラの頼りない明かりが照らしている。


 そんな中、ある一室から呻き声が聞こえてきた。


 気になって覗いてみると、そこは救護室だった。


 手足に重傷を負い、身動きもできない兵士たちが、シーツを敷いただけの硬い床に横たえられている。


 兵士たちを魔法で治療していた男たちは、一度こちらに視線を向けた。


 だが、構っている余裕はないのだろう。すぐに治療へと戻っていった。


 長居は無用だと思い、部屋を後にしようとしたときだった。


 部屋の隅で治療に当たっているイリアの姿が目に入った。


「ここで何をしているんだ?」


「頼まれたわけではないんですが、兵士の方々を治療しているんです」


 聖女としての使命感からか、それともイリア自身の性分なのか。


 彼女には、傷ついた人々を放っておけないのだろう。


 一人でも多くの命を救いたい。ただそれだけを考えて行動しているのだ。


 俺が手を貸せば、兵士たちの傷など一瞬で癒やせる。


 だが、それが当たり前になってしまえば、兵士たちは俺の力を頼りにし、負傷することへの警戒を怠るようになるかもしれない。


 もちろん、そんなことになると決まったわけではない。


 それでも、俺はあえてその場を離れることにした。


「無理しすぎるなよ」


「ええ。力を使いすぎて倒れてしまったら、かえって迷惑をかけてしまいますからね」


 イリアはそう答え、再び兵士の治療に取りかかった。


 俺は彼女を残し、城内の見回りを続けた。


 *


 特に異常もなく、俺は何気なく城の最上階にある円形の展望台へと足を運んだ。


 三日月に照らされた平原は、あまりにも静かだった。


 その静けさが、かえって不気味に思えた。


 そう感じた、そのときだった。


 何かがこちらへ向かって飛んでくる。


 一瞬身構えたものの、すぐにその正体がアウラだと分かり、警戒を解いた。


 俺の目の前に降り立ったアウラは、ドラゴンの姿のままだった。


 その表情は、どこか真剣だった。


「何をやってたんだ?」


「腹が空いたから、獣でも食べようと思って森を散策してたんだぞ。でも、嫌な魔力がこっちに近づいてきたんだぞ。だから戻ってきた!」


「変な魔力?」


 俺は意識を研ぎ澄ませた。


 ごく微かだが、東門の方角から魔力が流れ込んできている。


「東門だ! 何か来るぞ!」


 アウラは何も言わず、俺に背を向けた。


 俺はその背中に飛び乗り、東門へと向かう。


 道中で兵士を見つけると、俺は声を張り上げた。


「皆、備えろ! 東門から何か来るぞ!!」


 兵士たちは一瞬、顔を見合わせた。


 しかし、俺の切迫した声にただならぬものを感じ取ったのか、数人が東門へ向かって駆け出していった。


 東門に到着すると、紫色の渦が五つ、宙に静かに浮かんでいた。


 どうやら、幻術で隠されたこの城塞を探知できる厄介な魔物がいるらしい。


 そのうちの一つから、大きな花が生み出された。


 花の中央からは女性の上半身が生え、こちらに妖艶な笑みを浮かべている。


 植物の魔物、アルラウネだ。


 人を惑わす花粉を撒き散らし、蔓を器用に操って襲いかかる危険な魔物である。


「焼かれたくなかったら、大人しく帰りな」


 俺は掌に魔力を集中させ、火球を放った。


 火球はアルラウネの足元に着弾し、爆炎が夜空を赤く染め上げる。


 熱風が城壁を吹き抜けた。


 しかし、アルラウネは怯むどころか、可笑しそうにくすくすと笑っていた。


「おい! 止めろ!」


 背後から悲鳴が聞こえ、俺は振り返った。


 虚ろな目をした数人の兵士が、仲間に斬りかかっている。


 アルラウネに目を向けると、花から黄色い粉が撒き散らされていた。


 花粉だ。


 あれで兵士たちを操っているのか!


 アウラが弱い雷魔法で兵士たちの動きを止めたのを確認すると、俺は指先に魔力を集中させた。


 冷気が夜気を凍らせるように広がり、白い霧となって指先に集まっていく。


 狙いを定め、アルラウネに氷の魔術を放った。


 花も蔓も、一瞬にして氷に閉ざされる。


 これで終わりか。


 そう安堵しかけた、そのときだった。


 紫色の渦が怪しく脈動した。


 渦の奥から、新たな気配が溢れ出している。


 この渦を破壊しなければ、魔物が次々と現れるかもしれない。


 試しに、渦の一つへ魔力を放ってみた。


 紫色の渦は抵抗することなく、音もなく霧散した。


 その直後だった。


 別の方角からも、同じ禍々しい魔力が次々と湧き上がるのを感じた。


 目の前の渦と同じ魔力だ。


 東門だけではない。城塞のあちこちで、魔物が現れようとしているのかもしれない。


「この魔力の主を叩かないと駄目か……。アウラ、一旦城に戻るぞ!」


 俺は目の前に残る渦を破壊すると、ミーシャたちのことが心配になり、城内へと向かった。


 城内のあちこちから兵士たちの雄叫びが響き、剣と剣がぶつかり合う甲高い音が夜を裂いていた。


 争いの火蓋が切られたことを、俺は改めて実感した。

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