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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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独り善がりの正義

「こんな時間に来て、どうかしたのか?」


 ディオルムの小屋に向かうと、彼はドアから顔を覗かせ、怪訝そうな表情を浮かべた。


 その後ろでは、小さなゴーレムたちが町の騒動など無関係といった様子で、食器を洗ったり、部屋を掃除したりして動き回っていた。


「町中のゴーレムが暴れ出したんで、様子を見に来たんだ。こいつらは暴れなかったんだな」


 数秒の沈黙が流れた。


 ディオルムは伏し目がちに「ああ」とだけ答えた。


 その反応が、どうにも心に引っかかる。もしかすると、騒動に心当たりがあるのかもしれない。


「ゴーレムを操っていた魔族、リリスは俺が倒した。協力者が町にいるとも言っていたよ」


 あえて鎌をかけてみることにした。


 彼の反応次第で、次にどうするかを決めるつもりだった。


 ディオルムは力なく笑った。どうやら、言い逃れをするつもりはないらしい。


「仕方なかったんだよ。こうでもしないと、この町の連中はゴーレムを使い潰し続けただろうからな」


 彼は近くにいたゴーレムに、我が子に触れるような優しい手つきでそっと触れた。


「あんたがゴーレムを愛してるのは痛いほど分かった。けどな、魔族なんかと手を組んで、こんなことをしても誰も救われない。ゴーレムが危険だと分かれば、皆、手元に置かなくなる。そうなったら、一番悲しむのはゴーレムなんだよ!!」


 俺はディオルムの肩を掴んだ。


 それでも彼は抵抗せず、ただうなだれているだけだった。


「分かってるんだよ、そんなことは。でも、許せなかったんだ……」


 そのとき、彼の懐から黒い玉が地面に転がり落ちた。


 それは、リリスと同じ魔力を放っていた。


「これは何だ?」


「町の四方に埋めて、町のゴーレムに魔族の魔力が効きやすくしたんだ。憲兵にでも、どこにでも突き出してくれ」


 投げやりに言い捨てると、ディオルムは力なく椅子に座り込んだ。


 企みを阻止され、もはや気力も残っていないのかもしれない。


 俺が彼に手を伸ばした、その瞬間だった。


 足元に転がっていた黒い玉が、かすかに脈打った。


「っ!」


 次の瞬間、黒い玉から光が放たれ、ディオルムの胸を貫いた。


 糸の切れた操り人形のように、ディオルムの身体が椅子から転げ落ちる。


 何が起きたのか理解するより先に、俺は彼に駆け寄った。


 胸の傷から、血が流れ続けている。


 俺の魔法なら、傷を治すこと自体はすぐにでもできる。だが……。


 ディオルムは震える手で俺の腕を掴み、首を横に振った。


 ……このまま逝かせてくれ。


 そう訴えているように見えた。


 彼の意思を尊重するべきか。それとも、助けられるのに見殺しにしていいのか。


 判断に迷っていると、小屋に誰かが飛び込んできた。


 イリアだ。


 彼女は迷うことなくディオルムの傷に手をかざし、神への祈りを捧げた。


 すると、傷口が淡い光に包まれ、少しずつ塞がっていく。


「出血は止めましたが、まだ適切な治療が必要です。彼を病院に運ぶのを手伝ってください」


 イリアは何も尋ねなかった。


 ただ穏やかな笑みを浮かべ、俺がディオルムを見捨てないと信じているようだった。


「ちょっと待ってくれ」


 俺は黒い玉を踏み潰してから、ディオルムを担ぎ上げた。


 小さなゴーレムたちが、不安そうにこちらを覗き込んでいる。


「安心しな。お前らの主は、また戻ってくるよ」


 そう告げて、俺たちは小屋を後にした。


 


 病院にディオルムを預けた後、俺はイリアと二人きりになった。


「……ありがとう」


「どうしたんですか、急に?」


「イリアが来てくれなかったら……俺はディオルムを見殺しにしていた。間違いを犯すところだった……」


「でも、見捨てなかったじゃないですか。彼を運んで、病院まで連れてきたじゃないですか。それで十分です」


「でも……」


 言葉に詰まる俺の手を、イリアはそっと両手で包み込んだ。


「誰しも、間違いを起こしそうになるものです。ラルクさんは、もっと仲間を頼ってください」


 イリアの手の温もりが、胸の中に渦巻いていた罪悪感を少しずつ溶かしていく。


 張り詰めていた心が、ようやく息をついた。


「二人で何してるの?」


 いつの間にか背後に立っていたミーシャが、俺の肩をがしっと掴んだ。


「グルルル……!!」


 随分とご立腹のようだが、俺にはまったく心当たりがない。


「……いちゃついてたんじゃないでしょうね?」


「お話ししていただけですが」


「なら、いいわ。ラルク、今度は私とも手を握りましょう」


 言われるがまま、俺はミーシャの手を握った。


 これだけ賑やかな仲間に囲まれていたら、落ち込んでいる暇なんてないな。


 自然と笑みが浮かんだ。


 


「えっ、ディオルムさんのゴーレムを預かるの?」


 翌朝。


 宿でシチューをすすりながら、俺は昨日から考えていたことをミーシャたちに打ち明けた。


「ああ。しばらくは動けないみたいだから、世話をしてくれる相手もいないだろう。空間転移で島に連れて行こうと思う」


 それに、この騒動で町の人々がゴーレムを恐れるようになれば、使い捨てどころか、全員処分されるかもしれない。


 それだけは避けたかった。


「空飛ぶ島でしたっけ? そこなら、ゴーレムさんたちもきっとのびのび暮らせますもんね」


「いいんじゃない。お世話はゴブリンたちに任せれば、ディオルムさんがいない間も寂しくないでしょ。時々、私も遊んであげようっと」


 ゴーレムたちを気に入っているミーシャは、どこか嬉しそうだった。


 その一方で、アウラは黙り込んでいた。


「どうした、アウラ?」


「気になって見に行ったら、あの魔族が消えていたぞ。逃げたのかもしれないぞ」


 あれだけの傷を負って、まだ動けるとは思えなかった。


「魔界に帰る体力もないはずだ。その辺にいないか?」


「この町にはいないみたいだぞ」


 ドラゴンの嗅覚をもってしても見つからないとなると、かなり遠くまで逃げたのだろう。


 次に襲ってきたら、二度と襲ってきたくなくなるような絶望を植え付けてやろう。


 俺は、そう心に決めた。

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