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最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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新たな始まり

「お久しぶりですね」


 言葉とは裏腹に愛想など微塵もない顔でテオドールが出迎える。


 ここはエル・フィリアの空飛ぶ島の一室。


「この子が空飛ぶ島を管理しているの? まだ、子供じゃない」


「おい、止めとけ。変な事して島が手に入らなくなったら困るだろ」


 ミーシャがテオドールの頬を突き出したので、その手を掴んで止めせる。


「私が機嫌を損ねる事は有りませんのでご安心を。さあ、こちらに……」


 テオドールが指を鳴らすと床に光る円が現れ、俺はその中央に立つ。

 態々来たのに、三人に愛されて居なかったら笑うしかないなと苦笑していた。


 何も起きぬまま、数分経ってからがたがた立って居られない程、地面が揺れ始めた。


「島が動き始めたようですね。このまま上空に浮上します」


 揺れが激しくなった後、低い地響きが続いた。収まったと思った瞬間、何故か、俺やミーシャ達も浮いていた。


「島を浮かび上がらせる魔力の一部で誤作動を起こしたようですね。魔力が漏れ出した訳では無いので問題は無いでしょう」


 狭い部屋なので何処か飛んでいく心配も無いだろう。


 ミーシャは怖がる様子もなくむしろはしゃいでいる。


「何これ面白ーい。妖精ってこんな感じなのかしら?」


「飛べるのは古代妖精の血を引く希少な妖精だ。もっと器用に飛ぶぞ」


「アウラって物知りなのね」


 二人が盛り上がっている内にも島は高度を上げて行く。二人に取っては、空飛ぶ島より妖精の話の方が大事なのだろう。


「どれくらい上がるんだ?」


「高度三千m前後まで上昇します。寒さや空気が薄くなる心配はなさらなくて結構です。魔力で島全体を覆っているのでほぼ地上と同じ環境を保てますから」


 それくらいの高さなら地上の連中に目を付けられないだろうし、存在を知られても簡単には来られないだろう。


 後は島自体を見て今後どうするか決めて行こう。


 辺りが静かになり風の音だけがするようになった。


「島が上がりきったようですね。動力室から離れましょうか」


 テオドールが指を鳴らすと俺らは島の地表に移動していた。


 島の広さはかなりのもので町二つがすっぽり収まるほどの広さだった。見渡す限り花畑が続き、美しい小さな花が咲き誇り風に揺れている。


 普通なら綺麗な景色に感動するだろうが俺は別な事を考えていた。


 何もかも足りないと。


 楽園を作ると言うなら花だけでは何も出来ない。住処を作る木材も腹を満たせる食料になる植物もない。


「テオドール水はいちいち地上から持って来なきゃならないのか?」


「雨水や空気中の水分から飲水に適した水を作れるような魔法のシステムが構築されています。喉が渇いたなら何時でも申して下さい」


 水だけは問題無さそうだ。


 俺が何からやったものか悩んでるとミーシャが側に寄る。


「何もないなら持ってくれば良いんじゃない?」


「一々持って来ると時間がいくら有っても……。そうか空間転移だ!!」


 木や苗だけでなく、既に建てられた家も地上から持ってくれば手間もさほどかからない。


 家を送る際だけは場所をしないと玄関が崖っぷちという最悪な可能性もあるので気を付けるか。


「やる事は決まった。先ずは必要な物をここに持って来る。その後は何とかなるだろ」


 難しく考えるより行動有るのみだ。


「ここへ来るには私の名を心の中で強く念じていただければ何時でもお招きしますよ。もし、地上にお戻りになるならお送りしましょう。行きたい場所はございますか?」


「肉! 腹が空いたぞ」


 アウラが先に答えてしまった。昼から何も食べて無かったので我慢の限界だったのだろう。


「かしこまりました」


「お、おい。さっきのは違うって! 何処に連れて行く気だ!」


 止めるのも聞かずテオドールは、白い光で俺達を包むと一瞬にして地上に送り返す。話くらい聞いて欲しいもんだ。


 俺達が送られたのは森の中、見覚えの有るゴブリン三匹と狼や熊まででかい蜘蛛の巣にかかっていた。


「丸焼き肉何処に有るんだ! テオドールの嘘つき!!、」


 獣もテオドールに取っては肉なのだろうか?と俺は首を傾げる。


「そこのお方は強い兄さんでしたよね!? 助けて下さい。化け物蜘蛛に食われそうなんですよ」



「兄貴は強いんだろ? 蜘蛛軽く倒してやれよ」


 俺が去ろうとすると大げさに泣き出す。


「父ちゃん、母ちゃん。俺はもう駄目だ。孝行出来なくてごめんな」


「兄貴の父ちゃんは病気なんだぞ」


「兄貴が死んだら、二人は悲しむだろうな」


 情に訴えようとするゴブリン共を面倒だと思った。


「助けてあげましょうよ。見殺しにするのは後味悪いしね」


 ミーシャが言うので仕方なく助ける事にした。


 人の背丈ほどの蜘蛛がかさかさ細長い腕でこちらに移動する。


 一匹じゃない、少なくても六匹はいる。


 指先を蜘蛛の方に向け火炎を放ってやる。魔法による耐性は無いのか直ぐに焼け死ぬ。


 アウラも肉の食えないことに苛立ったのか口から火炎を吹き出し蜘蛛を焼き払っている。


「熱ぃ! 死ぬ、死んじまうよ!!」


「男なんだから少しは我慢しなさい」


 兄貴達の絡まる蜘蛛の巣まで火が迫るがミーシャが蜘蛛の巣からゴブリン達を引き離し地面に落とす。


 俺とアウラが蜘蛛を始末し終えると兄貴達は俺らに頭を下げた。


「兄さんなら助けてくれるって信じてたぜ。ありがとうな」


「助けてやったんだ。暫く俺らの為に働け」


「え?」


「謝ってさよならじゃ済まさないぞ俺は……」


 ゴブリン達を睨みつけると俺は彼らを空飛ぶ島に送る。


 十日後、俺は空飛ぶ島に向かうと人工池と小屋が出来ていた。


「やってるようだなお前ら」


「危ない目に合わないで飯にありつけますからね。でも、そろそろ解放して暮れませんかね?」


「駄目だ。後半年は働いてもらう」


「そんなあ〜、あんまりだぜ兄さ」


 これくらい、こき使えば二度と俺に助けを求めないだろ。


 人でも補えるし一石二鳥と俺は一人、悪い笑みを浮かべる。

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