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【累計5000pv突破!】最強のドラゴンを従えたので、世界の命運とか気にせずのんびり生きる事した  作者: 黒猫 六郎太


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同じでも違うもの

 ティア達が寝静まるのを確認すると、俺は一人でアシュリーのいる魔王城へ向かうため、右手に浮かぶ黒い目玉の模様へ魔力を集中させた。


 目玉の模様から無数の手が伸び、俺の身体を影の中へと引きずり込む。


 次の瞬間、俺は魔王城の玉座の間、その中央に立っていた。


「おや、ラルク様。何か御用ですか?」


 何食わぬ顔で現れたのは、アシュリーに仕える魔族、ザイードだった。


「ティアって名前に聞き覚えはあるか?」


「ティア? 存じませんね。その方がどうかなされたのですか?」


「アシュリーに助けられたと言っていた。その子は礼を言うために、アシュリーを探してるらしいんだ。心当たりがないか、本人に確認してもらえないか?」


「少々お待ちください」


 ザイードは額に手を当て、しばらく黙り込んだ。


 どうやら魔力を使って誰かと通信しているらしい。


「何やら心当たりがあるそうです。明日、偶然を装って会いに行かれると申しています」


「魔族は人間を憎んでるんじゃないのか? どうして人を助けたりなんかしたんだ?」


「魔族と言っても色々おりますからね。ギルバート様のような温厚で優しさに満ちた魔族なら、種族を問わず助けるでしょう。あの方の血を引くアシュリー様も同様なのでしょう」


 魔族は皆、人間を憎み、躊躇なく命を奪う。


 俺はそう教えられてきた。


 だからこそ、ザイードの言葉を素直に信じることはできなかった。


 これまで人間は、魔族に苦しめられてきたのだから。


 俺の疑念を察したのか、ザイードは小さくため息を吐くと、俺に背を向けた。


「疑うのはご自由ですからね。また何か用があれば、お越しください」


 ザイードの言葉を最後に、俺の身体は再び影の中へと沈み込んだ。


 そして次の瞬間には、宿の一室へと戻っていた。


 翌日。


 俺達がカフェのオープンテラスで軽食を取っていると、見覚えのある角を生やした魔族の少女が、恥ずかしそうに顔を隠しながらこちらへ向かってきた。


 そして、ティアの視線に入る位置まで来ると、暑くて身体を扇いでいるふりをしている。


 そんなに汗ばむような気温ではないんだが……。


「あ、あの。アシュリーさん!!」


 ティアが声を上げる。


「私、ずっとお礼が言いたかったんです。あの時は助けてくれて、ありがとうございます!」


 慌てて椅子から降りたティアは、アシュリーのもとへ駆け寄る。


 そして、手作りの天然石を編み込んだブレスレットを差し出した。


「ありがとう。素敵ね。何より、貴方が元気そうで良かったわ」


 ブレスレットを身に着けたアシュリーは、魔族とは思えないほど穏やかな表情を浮かべていた。


 ザイードの言う通り、優しい魔族もいるのかもしれない。


「ティアも恩人に会えて良かったわね。でも、これでお別れか……」


 ミーシャはどこか名残惜しそうに呟いた。


 ティアと仲良くしていたようだし、寂しいのだろう。


「良かったら一緒にコーヒーでも飲みませんか? 私が奢りますから……」


 ティアがアシュリーの手を引いて誘っていた、その時だった。


 女性の叫び声が聞こえた。


 声のした方へ振り向く。


 すると、地面から次々と骸骨が這い出し、町の人々へ襲いかかっていた。


「スケルトン!? 日の光に弱いから、こんな日中に出るはずないのに……どうして!?」


「今は考えてる暇はない! 奴らをどうにかするぞ!!」


 俺はスケルトン共へ向かって光弾を放った。


 しかし――。


 ほとんど効いていない。


「くそっ……!」


 光の攻撃を無効化している?


 その時、アウラが少年の姿のままカフェのテーブルを掴み、スケルトンへ向かって投げ付けた。


 鈍い音と共に、骸骨の身体が砕け散る。


「ラルク! 物理的な攻撃は効くみたいだぞ! 誰かがアンデッドを光や魔法から守ってるんだ!」


「何だって!?」


 そんな器用な真似ができる奴が、ただの人間とは思えない。


 魔族の仕業か?


 そう考えながら、俺はスケルトンを殴り飛ばし、アシュリーへ視線を向けた。


 しかし――。


 アシュリーはスケルトンから必死にティアを守りながら戦っている。


 疑うべきは彼女じゃない。


 なら、一体誰が……?


 スケルトンは倒しても倒しても、次から次へと地面から湧き出してくる。


「もうキリがないわ!」


 ミーシャは汗を拭いながら、スケルトンを投げ飛ばした。


「アウラ、どこかに怪しい魔力を感じない?」


「ああ! あちこちに怪しい魔力の渦があるぞ!」


 アウラが周囲を見渡す。


 そして突然、声を張り上げた。


「気を付けろラルク! 一番デカいのがそこにある!!」


 アウラの視線の先。


 そこには、一人の男が立っていた。


 紫色の短い髪。


 そして、口元には人を馬鹿にするような薄ら笑いを浮かべている。


 男はゆっくりとアシュリーへ近づいていく。


「いやー、ラッキーだな俺は。お前を殺せば、俺が魔界の支配者になれる」


「バロック!! どうしてお前がここに!?」


 アシュリーが叫ぶ。


 彼女の周囲に闇の魔術で作られた槍が次々と出現した。


「喰らいなさい!」


 一斉に放たれた槍がバロックへと迫る。


 しかし――。


 男に触れる寸前、槍はまるで最初から存在しなかったかのように消滅した。


「何だい? こんなちっぽけな魔術で俺に勝とうってのか?」


 バロックは薄ら笑いを浮かべる。


「いいか? 魔術ってのは、こうやって放つんだぜ!!」


 次の瞬間。


 大地を貫くかのような巨大な闇の雷が、アシュリーの頭上へと落ちた。


「……くぅっ!」


 アシュリーは直撃を避けたものの、かなり消耗している。


 次に攻撃を受ければ、今度こそ危ない。


「止めて!」


 スケルトンから逃げていたティアが、バロックの前へ立ち塞がった。


「何でこんなことをするの!」


「楽しいからだよ、お嬢ちゃん」


 バロックは笑う。


「身の程を弁えない弱っちい奴を踏みにじるのが、最高に快感なんだよ」


 そしてアシュリーを睨みつける。


「人間と仲良くしようとする魔族なんて、生きる価値もないしな」


 バロックの手の上に、顔ほどの大きさをした闇の炎が浮かび上がった。


 炎は徐々に熱と大きさを増していく。


 やがて、ティアとアシュリーの二人をまとめて包み込めるほど巨大になった。


「安心しな。俺は優しいんだ」


 バロックは口角を上げて不気味に笑う。


「二人まとめて、仲良く殺してやるよ!! じゃあな、お嬢ちゃん! 恨むなら間抜けな魔王を恨め!!」


 このままでは二人が死ぬ。


 俺は群がるスケルトンを薙ぎ払いながら、二人へ向かって走った。


 だが、まだ距離がある。


 間に合わない。


 俺は迫り来る闇の炎を凝視した。


 その瞬間、炎の前にある空間が、僅かに歪んだように見えた。


「……もしかしたら、できるかもしれない」


 俺は炎へ向かって手を伸ばす。


 空間そのものを捻じ曲げる。


 すると、二人へ向かって放たれた闇の炎が進行方向を変え、バロックの頭上へと降り注いだ。


「なにぃ!? うおおおおお!!」


 流石に自分自身の炎に焼かれるとは思っていなかったのか、バロックは慌てて炎から逃れようとする。


 だが、大したダメージにはならないだろう。


 なら――。


 俺がやるしかない。


 俺は一気に距離を詰め、渾身の一撃をバロックの顔面へ叩き込んだ。


「ぐっ!」


 バロックの身体が後方へ吹き飛び、民家の壁へ叩き付けられる。


 それでも俺は止まらなかった。


 立ち上がろうとするバロックへ駆け寄り、何度も拳を叩き込む。


 最後は、奴が使ったのと同じように火球を叩き込んだ。


 多分、これくらいじゃ死なないだろう。


 だが、少しは懲りただろう。


 その頃には、スケルトン共も日の光に晒され、次々と崩れ落ちて消滅していった。


 恐怖のためか、ティアは気を失っていた。


 アシュリーは、そんなティアを誰にも傷つけさせまいとするように、強く抱き締めている。


「無事か、アシュリー?」


「ええ。でも、どうして助けてくれたの?」


 アシュリーが不思議そうに俺を見る。


「魔族にも、いい奴がいるって分かったからな」


 俺が微笑むと、アシュリーもつられるように微笑んだ。


 俺は今まで、魔族というものを一括りにして考えていた。


 だが、魔族にも人間と同じように、色々な奴がいる。


 優しい奴もいれば、バロックのような奴もいる。


 魔族のことを、もっと知らなければならないのかもしれない。


 そんなことを、俺は思っていた。

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