2.いつもと違う深夜2時
「おい、そっち突っ込むなよ!」
「うるさいなぁ、助けてよ」
最新設備の揃った豪華なシアタールーム。そこでプレイするシューティングゲームは臨場感抜群だ。
「あー、死んだ!」
「ヘタクソ」
「サクヤのサポート不足だよ」
私の言葉に、サクヤが口パクで「バーカ」と笑った。
「そういえば、新しい職場は慣れたのかよ」
「え?」
「カスタマーサポートセンター、だっけ?長い部署名だよな」
サクヤはポテチ専用の箸でつまんでいる。
コントローラーがベタつくのが嫌なんだよね。軽い潔癖症だし。
「まぁ、なんとかね。先輩も優しいし」
「男もいんの?」
「オペレーターは女性ばっかだよ。同じ派遣の子とも仲良くなれた」
「ふぅん」
たいして興味もないくせに。なんで聞くかな。
「このゲーム、もうすぐ新作出るよ」
〈GAME OVER〉と表示されたままの画面から、少しだけ視線を私に投げる。
「そうなの?」
「YouTubeのゲームチャンネルで、先行プレイしてきた」
「えー、いいなぁ」
サクヤの個人チャンネル。
寡黙にプレイするだけのゲーム配信なのに、登録者数は10万人を超えている。
時々、この部屋からも配信している。
アイドルのプライベート空間が見えるのも、ファンにはたまらないのだろう。
「今度やろうぜ」
「私と?」
「他に誰とやんだよ」
呆れたように言い返された。
サクヤは〈No Continue〉を選択し、ゲーム機の電源を落とした。
「もう2時か」
「そうだね……」
「徹夜で仕事に行く気かよ」
シアタールームが急に静まり返る。
「今から帰れば、少しは寝られるよ」
「……あっそ」
短い言葉も、いつも通り。
「サクヤは、明日も仕事だよね?」
「雑誌のインタビュー2件、ライブの打ち合わせ、夜は音楽番組の収録だとさ」
スマホでスケジュールアプリを見ながら、まるで他人事みたいに言う。
「大変だね、人気者は」
「もう慣れた」
不意に肩がぶつかった。そのときだ。
「あ、ごめ――」
サクヤの顔があっという間に近くなった。
それで、それから――?




