1. 幼なじみはアイドル
〈登場人物〉
◆サクヤ (24)
人気アイドルグループ『dulcis〈ドゥルキス〉』のメンバー。世間ではクールな「ツンデレ王子」として知られる。子供の頃、ダンススクールの講師・才加に憧れていたが、同時に同じダンス仲間の小春の存在が胸に深く刻まれていた。大人になっても素直になれず、ゲーム内では正体を隠して小春を過保護に守り続けている。
◆朝倉小春(24)
サクヤの中学時代の同級生。派遣スタッフとしてペット用品のカスタマーセンターで働く傍ら、古巣のダンススクールで講師も務める。サクヤの才加への想いを知っているため、自分のことは「都合の良いゲーム仲間」だと思い込んでいる超絶鈍感女子。
◆才加(35)
サクヤと小春が通っていたキッズダンススクールの講師。亡き父の跡を継ぎ現在はスタジオオーナー。
1児の母で現在二人目を妊娠中。生徒から慕われる女性。
◆陽菜(23)
小春の同僚。
ペット用品のカスターサポートとして働く。派遣スタッフとして小春と同時期に入社し仲が良い。恋の相談相手。
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◆dulcis〈ドゥルキス〉とは?
「ドルチェみたいなキス」を意味するグループ名の5人組アイドル。
デビューして3年でドームツアーを実現させた。極上のパフォーマンスと歌声でファンを魅了する。
■サクヤ/ SAKUYA ※本作の主人公
年齢:25歳
身長:175cm
ツンデレ王子と呼ばれている。愛想がなくファンサも少ないが、プロダンサー顔負けのダンススキルで魅了される。
趣味はゲームの超インドア派。
■アラタ/ARATA
年齢:29歳
身長:182cm
グループの最年長。大人の包容力で個性豊かなメンバーを静かに見守り、統率する頼れる存在。
美容系アイドルとしても認知度あり。コスメや香水のプロデュースをしている。
■コウキ/ KOKI
年齢:28歳
身長:185cm
国宝級イケメンの称号を持つ不動のセンター。恵まれたスタイルから繰り出されるパフォーマンスと甘いマスクで人気。
俳優やモデルとしても活躍している。
■ジュン/ JUN
年齢:25歳
身長:180cm
天使の歌声と称されるメインボーカル。穏やかで優しい人柄だが、時折見せる情熱にギャップ萌えするファン多い。
ミュージカルの主演など舞台での活躍が多い。
■ケイタ / KEITA
年齢:23歳
身長:175cm
最年少メンバー。末っ子アイドル、小悪魔的な魅力。金髪に甘く柔らかな顔立ち、トレードマークのオレンジのピアスが目を引く。明るい天然キャラを演じてバラエティ番組にも出演多い。
「……なんで、キスしたの?」
「別に、なんとなく」
甘い雰囲気なんて、どこにもなかったのに。
さっき触れた唇の熱だけを残して、サクヤは何事もなかったように、私に言った。
「小春、もう2時だぞ」
スマホの光を受けて、シルバーヘアに混じったピンクのメッシュが艶やかに光る。
深夜2時。
私がいつも、彼の部屋を出る時間――。
◆◆◆
仕事上がり、スマホにメッセージが届いた。
『今から来いよ』
いつも通りの一方的な呼び出し。
深夜でも平日でも関係ない。
『コーラ買ってきて。あと腹へった』
私のことを、デリバリー代わりだと思っているんだろうか。断ろうとしたけど、タップする指は素直だ。
『わかった、買って行く』
悔しいことに、誘われて断ったことなんてない。
『ついでに、ティッシュが切れたからよろしく』
メッセージと変なスタンプが届く。
「むかつく」
言葉とは裏腹に、自宅とは反対路線に乗り込んだ。
スーパーマーケットに立ち寄ると、こだわりの強いサクヤのため、ティッシュは某ブランドの柔らかいものをカゴに入れる。
荷物を抱え、都心の一等地にあるマンションへと向かった。
「よう、遅かったな」
「私はお手伝いさんでも、マネージャーでもないからね!」
ドサッとテーブルにレジ袋を置く。
「お、カップ焼きそばじゃん。わかってるな、小春」
「少しは野菜も食べなよ。サラダ買ってきたから」
「いらね」
シャワーを浴びたようで、髪がまだ濡れている。
肩にはアニメ絵が描かれたのタオル。たぶん、趣味のクレーンゲームの景品だ。
ソファの上であぐらをかいて、コーラを飲んでいる。ファンには見せられない、すごくゆるい姿。
そう、こんなんだけど、彼はアイドル。
それも、超がつくほど売れっ子グループ、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバー。
だけど、私との出会いは子どもの頃。
私が通っていた同じダンススクールに、サクヤがやって来た。
サクヤは愛想がなかった。
レッスンが始まるまでスタジオの隅、ひとりゲームをしているような子だった。
『一緒に踊ろうよ』
気を利かせて誘うと、
『おまえヘタクソだからいい』
思い出しても腹立たしい、忘れない初対面のときのこと。でも、お互いゲーム好きだったことから、気付けば仲良くなっていた。
サクヤのダンスレベルは、大人顔負けだった。
数々のダンスコンテストで入賞し、芸能事務所からスカウトされたのも、当たり前だと思えた。
サクヤは芸能科のある高校へ進学し、段々と疎遠になった。
――2年前、ダンスのイベントで再会するまでは。
『まだ、ゲームやろうぜ』
そう言って、懐かしい笑顔を見せた。
淡い恋心は、あっという間に年月を超えてくる。本気の恋になるのに、時間なんていらなかった。
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