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第11話 中間試験

「おはようございます!由梨乃(ゆりの)様!香織(かおり)様!」

「朝からお二人の姿を見られるなんて!」


毎朝恒例の香織と由梨乃に対する花道は、優介(ゆうすけ)の転入日以外は連休明けでも変わらず賑やかに行われていた。

転校翌日の優介は、この光景を見て驚いていた。


「なんだ、あれ?」

「優介、知らないのか。」


一緒に登校してきた(あおい)が説明を始めた。


「あれはうちのクラスの櫻井(さくらい)日生(ひなせ)の花道だ。」

「すげーな。でも何で?」

「あの二人は学園の憧れの的だからな。中等部時代もあったけど、覚えてないか。」

「サッカー部の朝練やってたからこの時間には登校していなかったし、見た記憶ねえな。」

「朝練が無い試験前とかでもやっていたけどな。あ、でもお前、中等部の時に途中で転校したんだったな。」

「ああ。二年の途中で。」

「じゃああんま知らないか。それより部活、またやろうぜ。」

「考えとく。で、あの二人ってそんなに人気なんだ。」

「そりゃあそうだよ。櫻井は今この学園に在籍している生徒の中では一番の名家!でも鼻に賭けないし、成績優秀、才色兼備だし。櫻井の付き人っていう日生も、彼女に比べたら地味かもしれないけど、結構綺麗な顔しているし、あの二人の組み合わせに憧れている奴は多いからな。あいつだって成績優秀で…。」


と葵が言いかけたところで、別の友人達に声を掛けられ、話が中断した。

それから数日後、中間試験が始まった。


「優介もタイミング悪いな。早速中間試験なんて。」

「まあ仕方ねえよ。親父の仕事の都合ですぐこっちに帰ってこなきゃいけなかったから。」


休み時間、葵や他のクラスメイト達は、終わった試験の反省会をしながら、優介を囲って話していた。

葵の他にも何人か中等部時代の友人もいて、当時の話をしていた。


「でも確かお前中等部の頃成績良かったよな。」

「この学園の編入試験も合格するくらいだから、余裕だろうな。」

「天才っているところにはいるんだな。」

「そんなわけねえだろ。子どもの頃から英才教育を受けているお前達に比べたらできてないって。」

「まあ、この学園の上位二人は毎回決まってるけど。」

「へえ。誰?」

「櫻井と日生だよ。」

「日生にいたっては初等部の頃から学年トップ。学園始まって以来の成績優秀って噂。」

「で、いつも一緒にいる櫻井が次席。お付きが主を抜かしてどうなのって思ったりするもするけど、櫻井家では二人とも分け隔てなく育てると言う方針らしいから、自由なんだろうな。」


優介は彼らの話を頬杖付きながら聞いていた。


「でも日生も勿体無いよな。高等部に進学したら、部活はやらないし、勉強一本って感じで。」

「帰宅部ってことか。」

「そう。まあ何でも器用にこなすからよく助っ人には呼ばれているけど。特に櫻井がいる茶道部には。」

「中等部の頃は大会でも優勝したりして凄かったのに。勿体無いって顧問の先生や同じ部だった藤波(ふじなみ)が引き留めたみたいだけど。」

「藤波って?」

「ほら一緒にいるだろ、あの長い髪の女子。藤波はるひ。」


香織や由梨乃と共に一緒にいる友人達は、それぞれ堀河千佳(ほりかわちか)相楽花音(さがらかのん)、藤波はるひという。


「そういやあ中一の時、俺らと日生と藤波、同じクラスだったじゃん。覚えてないか。」

「ああ。全然。」


きっぱり答えた優介は、そのまま葵達の会話に耳を傾けるのだった。






中間試験が終わり、生徒達は解放感に喜びを感じていた。

試験期間中は休みだった部活も再開され、また通常の学校生活に戻りつつあった。


そして試験結果の発表。

学年上位は、各学年の廊下に順位順で名前と点数が張り出される。


「今回少し順位や点数が上がらないと、お小遣い減らされちゃうのよね。」

「まあトップ2はいつもと同じでしょうけど。」


千佳と花音は、香織と由梨乃を見る。香織は無表情で変わらず、由梨乃はまあまあと二人をたしなめていた。


「あら、なんだかいつもより騒がしいわね。」


はるひは結果が張り出されている廊下を指さすと生徒達が群がっている。ただ、いつもよりざわついていた。


「おい、あれ誰だよ。」

「まさかこの中に入るなんて…!」


何事かと思い、香織達も急いで結果を見てみると、見慣れぬ名前が目に飛び込んできた。


1位 日生香織  495点

2位 水無瀬優介 494点

3位 櫻井由梨乃 493点


いつも上位二位を独占している二人の間に割って入ったのは、先日転校してきたクラスメイトの水無瀬優介だった。


「まさか櫻井様を抜かすなんて。」

「あの生徒の名前、初めて見るけど。」

「最近転校してきた一般生だよ。」

「しかも三人とも一点差なんて!」


傍観者達が騒いでいる中、当の本人達は動じなかった。


「まあ、水無瀬君て優秀なのね。」

「この学園に『一般生』として転校してきたとはいえ、二人の間に入るなんて凄いわ。」


香織は少しため息をつき、由梨乃は特に落ち込んだ様子もなく呆気に取られていた。

するとはるひが何かを思い出そうとしていた。


「そういえば、おんなじようなこと、中等部の頃にもなかったかしら。」

「はるひ、また何か思い出した?」

「確か一年の、最初の試験の時。あの時も三人が一点差だったじゃなかったかしら。」

「そんなことあった気がする。」


千佳と花音も当時を思い出していたようだが、香織は知らないふりをした。


一方優介は、葵達と結果を見に行き、驚かれていた。優介の姿を見た他の生徒達からは、「彼があの二位の人?」「一般生の転校生よ。」とささやかれていた。


「優介、お前、こんなに頭良かったんだな。」

「しかもこの二人の間に一点差で割り込むんて…。」


友人達は驚きのあまり、皆声が震えている。


「そんなに凄いん?」

「凄いどころじゃない。」

「そういやあお前、中等部の頃もおんなじようなことあったよな。」

「そうだったけ。」

「お前、なんも覚えてないんだな。」


高等部二年の中間試験の結果は、学園全体で話題になっていた。内部進学者が多い名家の生徒達に比べ、一般生の方が成績は良い。それでも今のこの学年の上位は、初等部の頃から一位が香織、二位が由梨乃と固定されていた。香織に至っては、学園始まって以来の成績優秀者という噂も流れるほど。

それほどまでに、一般生の転校生の優介が二人の間に入ったことは、前代未聞の出来事だった。


優介は葵達が騒ぐ中、張り出される試験結果を見て一息ついた。






放課後、香織は図書室にいた。試験が終わり、部活が再開された。

今日は幸い由梨乃や他の友人達から部活の助っ人に呼ばれなかった為、一緒に帰宅する由梨乃の部活を待っている間、時間潰しに訪れていた。


試験が終わり、先日読んでいた本の続きを読もうと部屋の隅の椅子に座ってパラパラとページをめくっていた。

すると、前の席に座る人物がいた。誰もいない図書室でわざわざ自分の目の前に座るのは誰だと思い顔を上げれば、会いたくなかった顔があった。


「邪魔して悪い。」

「そう思うならそこに座らなければ良いだけでしょ。」


目の前に座った優介を無視しようと、香織は再び目線を本に移した。


「いや、相変わらず香織は勉強頑張ってるんだなと思って。」

「転校早々私と由梨乃の間に割って入って来た誰かさんが言うと、嫌味にしか聞こえないけど。」

「まあこの学園に戻って来て最初のテストだから結構頑張ったんだけど。まさか中等部の最初の試験と同じ状況になるとは思わなかったけど。」


香織も優介も、中等部の頃のことは忘れていなかった。

香織は本を閉じ、鞄に仕舞い始めた。


「高等部に進学してから部活辞めたんだってな。エースで大会でも活躍していたのに。」

「そういうあなたは葵君からサッカー部に誘われていたじゃない。やったら。」

「そんな暇ねえよ。ちょっと色々と調べものしててな。『あの家』のこととか。」

「関係ないことには首を突っ込まない方が良いんじゃない。」

「始めたからには最後までやり遂げたいからな。気になることもあるし。」

「そう。でも私は関係ないから。」


二人は、お互いが過ごした中等部時代のことは覚えているのだ。

香織は鞄を持つと、優介を置いて図書室を出て行った。


高校の定期試験は5教科ではありませんが、面倒なので5教科で統一します(笑)

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