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ep.2-92 腕試ししたくないなぁ

何か嫌な予感がする


「(ブランドン)

 あの2人から聞いたんだが

 中々な大立ち回りをしたそうじゃないか?」


地下水路のことかな?


「(マティア)

 特別

 大した事はしていませんよ。」

「(ブランドン)

 そうか?

 聞いたところ

 中々な魔法と剣術を使うそうじゃないか。」

「(マティア)

 必要に応じて

 実力行使しただけです。」

「(ブランドン)

 必要に応じてなんていえるってことは・・・

 余裕があったんだろ?

 その能力を見込んでなんだが・・・

 俺と手合わせをしてもらえないか?」


やっぱりね


嫌なんだよなぁ

自分の技や能力を見せびらかすの


いざという時に

実力がバレていると

自分の身を守れなくなるんだよなぁ


「(マティア)

 出来ればお断りしたいんですが・・・

 なんか・・・

 この雰囲気だと

 断れそうにもなさそうですね。」


周りを見渡すと

海兵たちが腕組みをして

私の事を凝視している


「(マティア)

 はぁ・・・

 分かりました。

 1度だけなら・・・」

「(ブランドン)

 よしっ

 そうと決まれば

 早速やろうか。」


私たちは

10mほどの間合いをとって

相対した


ちょうど

レベッカが艦へと帰ってきたところで

甲板上がお祭り騒ぎになっていて

何事かとエドワードさんに尋ねると

手合わせを始めるところだと聞き

一瞬止めようかと考えたが

自分たち一族の事を

容易く切り伏せた男の実力を

観察することにした


私は

さっきと同じように

構えることもなく

右手にだらっと木剣を持った


この艦の最強クラスはどんなものか


ブランドンさんがじりじりと距離を詰め

6mぐらいの距離になった所で


「(ブランドン)

 シングル(一重)スピード(速力)ブースト(強化)!」


その瞬間ブランドンさんが

2倍速までとはいかなかったが

4割り増しぐらいのスピードで間合いを詰めながら

突きを入れてきた


私は少し驚いたが

木剣で受けずに左方向へと躱した


「(ブランドン)

 くそぉ・・・

 躱されたか。」

「(マティア)

 魔法も使って不意打ちですか?

 残念ですが

 まだまだ魔法が粗削りで足りないですよ。

 それに・・・

 スピードを増した分

 剣の握りが若干甘い。」

「(ブランドン)

 まだまだ終わっていないぜ!」


周りの海兵たちは

艦の最強兵が

覚えたてとはいえ

魔法を付加させた一閃を

魔法を使わずに避けられた事に驚愕した


そのまま通り過ぎたところで反転して

再び構えて同じ距離から

今度は左脇に剣を溜めて

左から右への腰の高さ程の

横薙ぎの一閃を入れてきた


私は

今度は右足を1歩引いて

木剣を上向きにして

横薙ぎを受けた


これだけでなく

さっきのブライアンたちと同じように

連続技を繰り出してきた


だが2撃目は

私は木剣で受けもせず

切先が届かないギリギリのところに

バックステップで回避し

がら空きになった

ブランドンさんの背中目掛けて

踏み込んで木剣を振り下ろすと

ギリギリ

私の木剣と背中の間に

右手で持った木剣を

遠心力を使って

なんとか私の振り下ろした木剣と

ブランドンさんの背中の間に挿しこんで

背中全体を使うようにして受けた


「(ブランドン)

 あぶねーっ!

 なんちゅう読みだよ!」

「(マティア)

 そうですか?

 ブランドンさんも

 身のこなしの良さとか

 最後の防御の時

 ちゃんと刃が体に当たらないように

 木剣の向きを変えているところは

 凄いと思いますよ?」


成程ね

さっきの2人の横薙ぎと突き

それから連続技は

この人の太刀筋に似ているな


「(マティア)

 さっきの2人の戦い方を教えたのは

 ブランドンさんですか?」

「(ブランドン)

 そ・う・だ・よっ!」


今度は一文字ずつの発音に合わせて

振り下ろしの1撃から

連続で縦横の斬撃を入れてきたが

同じように避けると

今度は警戒したのか

連続技は使わず再び距離をとった


「(ブランドン)

 お前・・・

 どんだけ強いんだよ!?」


段々とヒートアップして大騒ぎになっているのに気付いた暴れ姫が

なんとも良いタイミングで艦へとやって来た


「(暴)

 なんじゃえ?

 なんかの余興かえ?」

「(グレイ)

 これはアテラ様

 いいタイミングでいらっしゃいました。

 丁度

 うちの白兵戦最強が

 マティア君に挑んでいるところです。」


暴れ姫にとっては

余りにも滑稽だったのだろう

不敵な笑みを浮かべて


「(暴)

 無駄な事はやめておけ。

 あやつに敵うものは

 人間でも1人か2人いればいい方じゃろう。」

「(グレイ)

 彼は其れほどなのですか?」

「(暴)

 そうじゃのぅ・・・

 わっちの最速の突きを

 初見にも関わらず

 ちゃんと見極めて受けるか払うことが出来る

 数少ない者じゃからの。」

「(グレイ)

 彼は

 エルフ最強のあなたの剣を

 難無く受けることが出来るのですか?」

「(暴)

 難無くかどうかは分からんが・・・

 『そうじゃ』

 と言っていいじゃろうの。

 ほれ・・・

 お前さんとこの海兵は

 息があがっているようじゃが

 あやつの方は・・・

 なんともなっておらんじゃろ?

 まあ

 勘違いしている奴には

 いい薬になるじゃろ。」


次々と繰り出される技を

私は

躱したり

受けたり

攻撃を受け流したり

していく


「(ブランドン)

 くそっ・・・

 何事も無いかの様に・・・

 全部・・・捌かれる・・・」


それを見ている周りの者たちは

あまりもの実力差に落胆するもの

まだいけると激励するもの

自分だったらどうしたらいいのか観察するもの

それぞれの思いがその現場に注がれていた


だけど

明日の準備とかで忙しいから

そろそろ終わりにしないと

睡眠不足になりそうで体に響きそうだな


「(マティア)

 さあ・・・

 それじゃあ・・・

 行きますよ。」


私は木剣を脇差しの位置に構えて

ブランドンさんの斬撃を躱しながら

その時を待った


「(ブランドン)

 どうしたどうした!

 まともに動くのは口だけかー!?」


私の一言から30秒後くらいに

そのタイミングが訪れた


ブランドンさんに疲れが見え始め

斬撃を避けると踏ん張りが甘くなったり

踏み込みを含む体のキレが悪くなってきた


左からの横薙ぎを避けると

ブランドンさんが踏み留まれず

少し距離が空いて

振り向きざまに上段に振りかぶりながら

突っ込んできた


私は右足を右斜め前へと大きく踏み込み

ブランドンさんの振り下ろしに合わせて

彼の右脇腹に木剣を叩き込み

剣道の面抜き胴の要領でそのまま

ブランドンさんの左後方へとすり抜けた


右脇腹に木剣を打ち込まれたブランドンさんは

いとも簡単に急所に一太刀を入れられたことに

実力差を痛感させられ

木剣を振り下ろした体勢から立ち直し

直立状態のままフリーズした


「(グレイ)

 勝負あり!

 そこまでだ!」


この手合わせを見ていた者たちは

拍手をするもの

それに加えて喝采をあげるもの

呆然と立ち尽くすもの

それぞれの姿があった

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