幸せの感じ方
「僕はね、生国にいた時、世界で一番幸せだと思って生きていたんだ。
一緒に暮らすことは出来なかったけど、一応両親はいるし、快適ではなかったけど眠る場所もあるし、健康だし、とても少ないけど自分でお金も稼げるし、気持ちのいい風を感じる事も、綺麗な星を見る事も鳥の声も聴ける。なんていったって、僕を頼りにしてくれる可愛い妹もいたから。
でも、スワンやホラールの生国での話を聞くとさ、たまに僕って本当に人間だったのかなって感じちゃうんだ。同じ人間のはずなのに、生活がこんなにも違うんだってびっくりするの。生きていた時の僕が馬鹿みたい感じる。本当はね、僕って何でこんなに不幸なんだろうって、生きている時に心のどこかでは感じていたの。でも、少しでもそんなことを思ったら、何かに心も頭も支配されちゃうと思って、その何かに負けないように自分に嘘をついて、気づかないふりをしていかないと、生きていけなかったの。毎日、他の人とは違って僕はこんな所ろが幸せなんだって考えてたの。でも、今日は過去の事なのにすごく気分が重くて、僕の人生は不幸で、僕自身も、世界で一番幸せじゃなかったんだなって事しか考えられなくなっちゃった」
アムリは背中を丸め、自分の爪を触りながら地面に向かって話している。
「僕の人生って、何であんな人生だったんだろう。すごく辛かったなぁ。僕になる前の僕は地獄の人間だったのかな。悪い事をして人間になったから、その幸せを失って生きていくしかなかったのかな」
笑顔で話しているが、地面にぽたり、ぽたりとアムリの目から大粒の涙が落ちて行く。
心が小さくなる気持ちになった。私は体ごとアムリに向いて、「それは違う」と否定した。
「アムリ。食の好みがある様に、感じ方って人それぞれだし、その時々なんだよ。私は今日、みんなで芝生の上に寝転んだ時に幸せを感じたの。幸せなんて、みんなの基準に合わせなくていいと思う。自分が幸せなら、思いっきりその幸せを感じなきゃ。私は、生国にいた時、あの時は幸せだったのになって思う事が良くあったんだけど、その時はリアルタイムで今の幸せを感じる事が出来なかったの。だから、その時に幸せだと思えていたアムリはすごいと思う。けれど、今日、アムリが幸せだなと感じていた日々が、幸せじゃなかったと思ったのなら、今が過去一番幸せな時なんじゃない?今が幸せなら、過去の自分を慰めてからでもいいからさ、幸せを精一杯感じたらいいと思うよ」
私の言葉に、夜さんは頷いている。
私ったら、自分よりも色んな経験をしているアムリに対して、何カッコつけた事を言っちゃってるんだろう。明日、今言った事を思い出したら恥ずかしくなりそう。
アムリはもう泣いているのに、それ以上泣かないように我慢をして顔を歪ませている。




