本当の話
「僕が妹を守った話し、あれ、本当は嘘なんだ」
声を詰まらせながら話すアムリ。
「僕、妹をさらった奴に殺されちゃったの。きっと妹はそのまま売られちゃったと思う・・・僕がっ、僕が妹をっ。助けっ、なきゃっ、いけっ、なっかっ、たのっにぃっ」
最後の方は声を出して泣き出した。
目の前にいる傷だらけの人間に、こんな時なんと声をかけたらいいんだろう。私はただ丸くなっているアムリの背中をさする事しか出来なかった。
「雲がアムリの為に月明かりを消してくれているね」
夜さんはただ空を見ている。
壊れてしまった蛇口の様に、アムリの目からからどんどん涙があふれ出している。
「おや」
夜さんが遠くの方を見ている。
「また友達が来たみたい。今夜は賑やかだね」
夜さんの視線の先に誰かがいる。暗くてよくは見えない。段々と姿がはっきりしてきた。
「チヒョン?」
スーツを着たチヒョン歩いて来る。
「夜。久しぶり」
「久しぶり。まさか君達が知り合いだったとはね」
「お遊びじゃないのよってうるさいから、あの人には秘密にしておいて」
「分かってるよ」
「アムリはどうしたの?」
アムリの話をどこまで話していいものかと悩んでいると、夜さんが代わりに答えた。
「今まで頑張ってきた自分の為に泣いているんだ。そろそろ月も顔を出しそうだし、涙が枯れたら褒めてあげてよ」
「あ。月と言えば、夜。お前星食べただろ」
星が少ない理由は夜さんが食べたから?私はアムリの背中をさすりながら空を見た。
「お腹がすいちゃって。どうせ流星の時に流れる星だったから良いかなと思ったんだけど」
「月がお前の事探してたよ」
「ああ。通りで今夜は月が丸くないわけだ」
今度は星ではなく雲の隙間から顔を出す月を見た。
「見つからないように逃げないと。じゃあね、みんな」
チヒョンはただ手を上げ、私は夜さんに手を振った。
チヒョンはうずくまって泣いているアムリの隣に座り、ただ背中をさすり時折子どもをあやすようにトントンとしていた。
私はアムリの背中をさするのを止めて空を見上げた。
星を食べた夜さんを月が探しているなんて。月に怒られるのかな。月より夜さんの方が権力が上そうだけど。
しばらくすると、アムリの泣き声が聞こえなくなってきた。




