残る恐怖
やっと寮に戻って来た。
門を開けて敷地の中に入ると安心する。
「ところでチヒョンって、まあ。強そうには見えないけどさ、結構弱いんだね。さっき地獄の住人に蹴られて飛ばされてた時すごくびっくりした。あんなに力がなさそうな女の人だったのに。私チヒョンを助けに行かなきゃと思ったよ」
「いやいや。すごい力だったじゃん。馬鹿みたいに強かったじゃん。地獄の人間て魂を目の前にすると、ドーピングしてるんじゃないかってくらい力が強くなるんだよ。あんなの死国の人間では誰も敵わないよ」
冗談で言ったのに必死になっている。少し面白い。
「さ、早く部屋に入って」
私の部屋の前で止まりチヒョンが言った。
「心配だからちゃんと中に入ったのを確認しないと」
と、扉を開けて私の背中を押して中に入れた。
「ありがとう。おやすみ、チヒョン」
「おやすみ」
扉を閉め、まっすぐ部屋のシャワー室に向かった。
目を閉じて髪の毛を洗うと、さっきの出来事を思い出しとても怖い。後ろに何かがいそうな気がして何度も後ろを振り返ってしまう。
鏡に映った自分の首にはさっきの人の手形が爪痕までくっきりとついている。
シャワー後に服を手洗いしてみたが、さっきの臭いがきえずに残っている。そのまま洗濯機に放り投げてスイッチを押した。
急いで歯磨きをし、髪の毛をよく乾かさずに電気をつけたままベットに入り布団を被った。洗濯機の音がいつもより大きく聞こえる。
耳を塞ぐと、さっきの事をまた思い出してしまい怖くてなかなか眠る事が出来ない。
普段は気にならない音にまで恐怖を感じる。
私は怖さに耐え切れなくなり、小走りでチヒョンの部屋に向かいノックをした。扉に耳を当て、返事が聞こえた瞬間急いで扉を開けた。
「あれ?どこかに行くの?」
スーツを着てネクタイを締めているチヒョンが立っていた。
「お姉さんに呼ばれたから行かなきゃ」
「こんな時間に?」
「うん。で、どうしたの?何かあった?」
スーツのチヒョン新鮮。
「ん?別に?何もないけど。わざわざスーツで行くんだね」
スワン達もいないのにチヒョンもいなくなっちゃうんだ。と思いながらも、気づかれないように平気なふりをして答える。
「これがお姉さんに会う時の正装なんだよ。ちゃんとした格好をしていないと怒られるんだよね。もっとカジュアルな考えを持てばいいのに。てか、髪濡れてない?明日の朝大変なことになるよ」
「ちょっと乾かすのが面倒で」
「もしかして、さっきのまだ怖い?」
そう言われて、恥ずかしいけど「うん」と正直に言った。
「チヒョンと話しながら帰ってる時は平気だったんだけど、一人になったら少し」
まだ感覚が残っている地獄の住人に掴まれた方の肩を撫でた。
「でも大丈夫。部屋に戻るね。おやすみ」
そう言ったが本当は大丈夫ではない。やっぱりスワン達と一緒に泊まれば良かった。
私は静かにチヒョンの部屋の扉を閉めた。




