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晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
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処理


 地獄の住人は馬乗りになり、細い腕を伸ばすと、私の頭と首を地面に押さえつけた。


 スワンがペトラちゃんに襲われた時と同じだ。


 頭が割れてしまいそうなくらい力が強い。頭が地面にめり込んでいく。首で塞き止められている血で、顔が膨らんで破裂しそうだ。


 けれどチヒョンの言う通りにぎゅっと目を瞑る。


「目をあけろおおおお!」


 怒り狂った不気味な声で地獄の住人が叫ぶ。私の体は金縛りにあったかの様に動かない。


「いゆっ!目をっ開けるなぁっ!そっちに行くから!」


 遠くの方で、チヒョンが何とか声を絞り出して叫ぶ。


 私は更にギュッと目をつぶった。


 頭に爪が食い込んでいる気がする。痛い、怖い。もう、嫌だ。生きてても死んでても辛い目に合うなんて。全部から解放されたい。魂をあげたら私はどうなるんだろう。魂をあげるのが痛くないなら、目を開けちゃおうかな。この痛みと恐怖から解放されるなら魂なんてあげたっていいかも。もういい。もう何でもいいや。どうせ私は死んでるんだし。


 開いた目に入って来る私を苦しめる地獄の住人。目が合うと驚いた顔をし、直ぐに嬉しそうな醜い顔をした。


 何でこんな目に遭ってるんだろう。初対面なのに私が何をしたって言うの?ぼーっとする頭の隅に怒りがわいてくる。このままこの人の思い通りになるなんてむかつく。


 地獄の住人を睨みつけてからぎゅっと目を瞑り、手を握り締めて全身に力を込めた。


 思いっきり声をだして起き上がろうとした時、チヒョンの声じゃない何かが聞こえてきた。そして、ほんの少し体が持ち上がったかと思うと、突然 掴まれていた頭と首から手がぱっと離れ、そのまま地面に落ちた。


 動物の唸り声が聞こえた途端、すぐに身の毛がよだつような女の人の悲鳴が聞こえた。


「いゆっ。見るなっ!」


 気になって声が聞こえた方を見ようと起き上がったが、駆け寄ってきたチヒョンが抱き込むように私の視界を遮った。今度は耳をつんざきそうな叫び声が聞こえる。いつの間にか震えていた自分の手で両耳を塞いだ。


「もう大丈夫。地獄の番犬が来たから。大丈夫だよ」


 かすかに耳元で聞こえるチヒョンの声。私の背中を優しくさすってくれている。悲鳴と唸り声がだんだんと小さくなる一方で、段々と強く感じる血の臭いと生臭さ。そのせいで吐きそうになる。


「兄ちゃん達、大丈夫か」


 塞いだ耳に届く低い声。チヒョンの肩越しに見ると、地獄で見かけた時と似たような狼が五匹いた。


「さっきの人は?どこに行ったんですか?」


 地獄の住人は何処にもいない。ただ、地面は黒く濡れて光ってる。


「俺達地獄の番犬が処理をした」


 地獄探知犬じゃないんだ。


「それより、兄ちゃん達もなんかニオイがするな。さっきの地獄の女の臭いか?」

 

 地獄の番犬の一匹が鼻をひくひくさせながらしゃがんでいる私達の周りゆっくり回る。


 地獄の番犬の言う通り、さっきの地獄の住人の臭いだと思ったが、私はチヒョンの地獄の臭いだと気付いた。


「別のニオイもあるな。どこかで嗅いだ事のあるニオイだが」


 やっぱりそうだ。まずい。どうしよう。



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