百パーセント
「お帰り。彼女?」
チヒョンが「え?」と聞き返すと「彼女と電話してたの?」と、もう一度ホラールが言った。その顔は少し怖い。
「いいや。そんなわけないじゃん」
私は冗談でも「そうだよ」と言ってくれなくて良かったと心の底から思った。
「俺、明日朝早くから用事があるから先に帰るね」
「じゃあ、いゆをよろしく。チヒョンが帰るなら一緒に帰るって。この世界も昔と違って今は夜も危ないし」
ホラールはチヒョンに向かって危ないという言葉を強調して言った。
「了解。ホラールはスワン達をよろしく」
「いゆ。寮についたら連絡してね」
ホラールは、チヒョンの事を無視して私に向かって言った。
「…うん。分かった」
無視しなくたっていいのに。チヒョンはなんとも思っていないのか、帰る準備をしている。
「準備出来たなら行こ」
チョコさん達に挨拶をして私達はお店を出た。時間がかなり遅いので町中のお店は閉まっており、来た時と比べると静かで真っ暗だ。
学校のあるエリアから離れると、季節は秋から冬に変わりかけの様で少し肌寒い。各町は生国の国ごとの季節になっていると言うが、ここの飲み屋町は何処の国の季節になっているんだろう。
「寒いの?これ着る?俺のぬくもり百パーセント。はいっ」
チヒョンは着ていたカーディガンを脱いで私に渡した。
「え。いいよ。大丈夫」
「せっかく脱いだんだから、俺の優しさ受け取ってよ。今ぬくもり九十パーセント。だんだんぬくもりが減っていくよ」
そう言ってカーディガンを私の肩にかける。
「ありがとう」
肩に掛けられたカーディガンの袖に腕を通した。確かにチヒョンのぬくもりのおかげで温かい。
「いゆはさ」
チヒョンがまっすぐ歩く方向を見ながら話した。
「俺が地獄の住人だって聞いて何とも思わない?ホラールみたいに」
やはりチヒョンも昨日迄とは違うホラールの態度に気が付いている様だった。そりゃそうだよね。
「うーん。もし私がホラールと同じ立場だったら分からないけど、今は何とも思わない」
「そっか。昨日までは優しかったのに、ホラールの態度が冷たくてちょっと悲しいんだよね。アムリはホラールがいる時はあまり話しかけてくれなくなったし」
と言っているが、そこまで悲しそうには見えない。
「でも、少し酷いと思うんだ。きっとペトラちゃんを死国に連れてきたら、今みたいな態度をチヒョンに取らないでしょ?」
誰にでも優しかったホラールが、あんなにも変わってしまってビックリした。あれが本当のホラールの姿なのか、今はただ心に余裕がないだけなのか。
「俺はホラールの事、理解できるよ。今の俺の立場で言える事ではないけど」
「前は五人でいる時は心地の良い仲だったのに、今はあんまりいい心地が良いとは感じないんだ。すごく居心地が悪い」
「生国に戻りたくなった?」
「んー、どうだ」
「すみません!」
私は体が飛び上がるほど驚いた。足音もなく、いきなり声とともに後ろから肩をつかまれたのだ。




