チョコの話
「はい。サービスよ」
チョコさんが鶏のから揚げを山盛りに持ってきてくれた。
「おいしそう!」
みんなでお礼を言って一斉に箸を伸ばした。
醤油と生姜とにんにくって最強の組み合わせ。おまけに出来立てだから衣がサクサク。美味しい…。
「チョコさんも一緒に飲みましょうよ!」
スワンがまるでおねだりしている子どもの様にチョコさんの手を握って腕を揺らしている。微笑ましい。
「じゃあ、一杯だけね。三人共おかわりは?」
チョコさんが自分の分のビールと三人のお酒を持って戻って来た。
確かチョコさんは永住人ってアムリが言っていたような気がする。
「チョコさんはどうして死国で暮らしているんですか?」
私が聞くとみんなも聞いた事がなかったのか知りたいと言い出した。
「そうね。簡単に言うと残してきた家族を見守る為よ。私達が死国にいる限り、家族を危険な事から守る事が出来るの。永住人は私達と同じ様に家族を見守りたい人や、他の理由が必ずあってここで暮らしてる。ただ死国で暮らしている訳ではないのよ」
なぜか私の目を見て話すチョコさん。私は、死国は生国よりも楽しく生きているよりは楽で、年齢制限がなければ絶対にこの世界で生きて行きたいと思っている。それを見透かさている様な気分になり、思わず目をそらした。なんだか自分が恥ずかしい。死国の人間はみんな自分の意思をしっかりと持っている。私とは大違いだ。
店にお客さんがいなくなり、お酒が飲める三人は飲めなくなるまで過ごした。と言っても飲めなくなったのはスワンとアムリだけ。ホラールはっずっとウォッカしか飲んでいないのに酔っている様子もなく、顔も赤くはない。とてもお酒が強い様だ。悪酔いもせず、笑い上戸でも泣き上戸でもないのがかっこいい。
「俺達もそろそろ帰ろうか」
「帰るのが面倒だわぁ」
机に突っ伏したままのスワン。
「今日はここに泊まって行こーよー」
アムリは起きてはいるが、目を閉じて今にも寝そうな勢いだ。
「チョコさん達に迷惑かかるから駄目だよ」
「私達は構わないわよ」
「道の途中で寝られるよりはここに泊まってもらった方が僕達も安心だしね」
姿は見えないがカウンターの奥の方から二人が答えた。
「いゆ、俺ちょっと電話してくる」
「うん。わかった」
チヒョンがお店の外に出て行った。
「いゆも泊まらせてもらおうよ。俺も二人が心配だからここに泊らせてもらうし」
「どうしよう。チヒョンが帰るなら私も帰ろうかな。自分のベッドで寝たいってのもあるし」
本当は私もみんなと泊まりたいけど、もしチヒョンが帰るなら一人で帰らせるのはかわいそう。だけど、チヒョンも泊まると言ったらホラールが嫌がるような気がする。
「チヒョンは何処に行ったの?」
「電話だって。外にいるよ」
「そっか。席をはずして電話だなんて。俺達には聞かれたくない話なんだね」
ホラールのチヒョンに対する言葉に少し棘を感じる。いつもの優しいホラールがどこかに行ってしまった。
「彼女かもよ!」
私はとっさにそう言った。
「彼女か。良いね。地獄から死国にきて美味しい物を食べたり飲んだりできるし、彼女とも一緒にいられるなんて」
私は馬鹿だ。馬鹿すぎる。よく考えれば他に良い言葉があっただろうに、また余計なこと言ってしまった。なんで私はよく考えて言葉を発しないんだろう。ホラールと二人で会話をする時はいつもうまい事言えない。何か他の話をしよう。
「ホラールってお酒強いね!」
「自分が飲める量を把握してるからね。いつもこの二人がこうなるから俺も一緒にこんな風に酔う事は出来ないし」
「そうなんだ」
どうしよう。会話が終わっちゃった。頭の中がプチパニック状態だ。スワンかアムリが何か話してくれないかと二人を見るが、気持ちよさそうに寝ている。気まずい時間が少し続いて、電話を終わらせたチヒョンが戻って来た。




