鈍感なチヒョン
次の日。
昨日、地獄の住人に会った事なんてみんな覚えていないかの様に、いつもどおりに起きて、いつもどおりに学食に行き、いつも通り授業に出て、いつも通りの学校生活を過ごした。
しかし、ホラールだけ、昨日までとは何かが変わっていた。
「明日、祝日で学校が休みだし、ご飯終わったら飲みに行かない?」
午後の授業を終えて、最後に学食に来たホラールが椅子に鞄を置いて言った。
明日は死国の建国記念日なのだ。
「良いね。久々に行こ!やった!」とアムリが喜んでいる。
「飲む?お酒を?」
「そうだよ。いゆお酒嫌いなの?」
「そうじゃなくて、アムリは未成年じゃん。ルーマニアはお酒は二十歳からじゃないの?」
「あ。そっか。いゆはここに来たばかりだからお酒飲めないじゃん」
「飲めるよ。私もう成人だし」
アムリは「ノンノン」と言って人差し指を顔の前で振った。
「死国では、生きてる時が未成年でも、死国で二年経てば死国のお酒が飲めるんだ。だから僕は飲めるの。いゆは成人だけどまだ三年経ってないからお酒は飲めないんだよ」
得意げな顔をした。
「なんで二年なの?」
「僕に聞かれても分からないよ。この国の法律で決まっている事だし」
「まあ、私あまりお酒好きじゃないから飲めなくてもいいけど」
「お酒以外の飲み物もあるから行こう。チヒョンも行く?無理しなくてもいいけど」
いつもは行こうとなれば自然とみんなで行くとなる。しかし、今日はわざわざ行くのか聞くなんて、少し嫌な感じ。
「うん。みんなが嫌じゃなければ」
しかし、チヒョンはそんな事を全く気にしていな様だ。その心の強さを見習いたい。
「別に嫌だなんて思ってないけど。じゃあ、行こう。俺は食べなくていいや」
前にスワン、ホラール、アムリの三人。後ろに私とチヒョンで並びお店に向かう。
「ホラールにあんな感じで聞かれたのに、一緒に行くって言うなんて、チヒョンすごいね。私だったら用事があるってごまかして行かないと思う」
私はチヒョンにだけ聞こえるように比較的小さな声で言った。
「あんな感じってどんな感じ?」
「なんか、あまり来て欲しくない感じだったじゃん」
「え?お前は来るななんて言ってなかったじゃん。いゆ考えすぎ」
口ではそう言ってたけど、きっと嫌だって思ってたと思うけどな。チヒョンって鈍感。




