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晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
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チヒョンの正体


ホラール達の部屋に入り、私とスワンとアムリはソファ、ホラールはソファのひじ掛けに座り、チヒョンは向かい合わせに窓際に腰かけた。


「大事な話って何?」


 みんなを代表してアムリが聞く。


「実は俺、癌で死んだんじゃないんだ」


 チヒョンは、私達の後ろの壁一点を見つめて言った。


「じゃあ、もしかして、自殺したって事?」


 チヒョンは一度アムリを見てまた壁に目を戻した。


「そう。アムリの言う通り、俺自殺したんだ」


 その言葉に一番最初に反応したのはホラールだった。


「冗談じゃなくて?本当に自殺?」


「うん。ほら」といって、チヒョンは前髪を手で上にあげてみんなに額を見せた。そこにはペトラちゃんと同じあの地獄人の証がくっきりと焼き押されていた。


「チヒョンは自殺したのにどうして死国にいるの?」


 ホラールは瞬きをせずにチヒョンを見る。


「代行っているだろ?あいつらは死国の人だけじゃなくて地獄の人とも取引をするんだ」


「えっ?」


 ホラールが立ち上がった。


「代行が言ったんだ。もう一度生まれかわりたくはないかい?って。俺、生きている時、精神的にまいっちゃってて、死んだら今の状況から解放されるって思うようになったんだ。でも、実際は死んだ方が辛かった。なんの幸せも楽しみも感じなくて、なんで自殺なんてしたんだろうって本当に後悔をした。きっと、俺が死んだ時、周りの人を悲しませたり、迷惑をかけたと思う。死国に来たら生き返られるわけじゃないけど、もう一度生まれかわりたくて。俺、その話に乗ったんだ」


「それって可能なの?地獄にいる人間は誰でも?」


 ホラールの目に小さな光が灯った様に見えた。


「いいや。俺に声をかけたのは気まぐれだって。俺はただ運が良かったんだ」


 それを聞いたホラールは力なくひじ掛けに座った。


「でも、僕チヒョンから地獄の臭いを感じた事ないよ」


 私もそうだと頷いた。


「俺がいつも食べていたチョコのおかげなんだ。あれ特殊なチョコで、それを食べると地獄の臭いをチョコの匂いでごまかしてくれるらしくて、たまに代行から買ってたんだ。いつも探知犬を見かけたら念の為に隠れたりするんだけど、今日は間に合わなかったし、チョコも持ってなくてタイミングが悪かった」


「チヒョンがたまに会ってた人ってもしかしてその代行の人なの?」


 アムリが質問をした。


「うん。探知犬のニュースを見て、もっと臭いがごまかせるチョコをその人から買ってたんだ」


 乱れた前髪の隙間から見える地獄の証。それを見ても、私はチヒョンが地獄の住人だと信じられない。というか信じたくない。


「地獄の生き物が次生まれ変わるには、それと引き換えに百パーセントの確率で必ず何かを失うんだ。だけど、俺はまた生きたい。どんな苦しい事があったとしても、今度はちゃんと命を無駄にせずに生き抜きたいって思ったんだ」


 チヒョンの言葉を聞いて、私はドキンとした。今まで一度も一生懸命生きたいなんて思った事が無い。むしろ死にたいと思った事の方が多い。今じゃ、できればずっと死国にいたいとさえ思っている。


「まあ、必ず何かを失うリスクを持って生まれ変わる方が地獄にいるよりはましよね」


「地獄ではみんな辛くて、すぐにでも地獄から抜けられる今の記憶を引き継いで生まれ変わる短命の虫や食用肉の命に生まれたがるんだ。でも、希望がすぐに叶うわけもない。地獄の住人ってここの住人より人口が多いし、見張りの鬼が意地悪もするから地獄管理官に希望の書類が渡っていないことも多い。地獄管理官も特にそれを取り締まろうとはしない。地獄にいる人間はそんな風にどうでもいい存在なんだ」


「でもそんな所に行くような事をしたのは自分じゃない」


「ペトラを」


 うなだれていたホラールが口を開き、

みんなは静かに続きをまった。





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