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晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
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チヒョンのニオイ

 

 日曜日。


 私達は朝ご飯を食べてから、電車で就任式が行われる気候シティに向かった。

 

「就任式は午後からだから、その前にそこら辺を見てまわろっ!」


 受付のお姉さんに貰ったリーフレットを見て、アムリはどこに行こうか悩んでいる。


 私達もリーフレットを広げる。


「風雷館はどう?今日就任式をする雷の神様が仕事する館だって。風の神様の仕事場もあるみたい」


「就任式の前に雷の神様の事を知られるし丁度いいわね」


 風雷館に向かいながらアムリがリーフレットに記載の説明書きを読み始めた。


「神々は生国人の愚痴、讒謗を聞く事により溜まったうっ憤を気候シティの風神の袋に貯め込みます。風神はその袋が一杯になる度に生国に流していますが、うっ憤に袋が耐えきれずに破裂すると台風や竜巻となり生国に被害をもたらします。自然災害って僕達が神様に与えてるストレスだったんだね。知らなかった。うん?神様達もストレスが溜まるの?」


「ストレスがたまらない生き物っていないんじゃないかな。私もよく色んな人から愚痴を聞かされてたけど、体力うのか聞いた後は疲れて気分も重くなるし嫌だったよ」


「話した相手は気分が軽くなって、いゆは気分が重くなって可哀想ね」


「俺は愚痴って気を使わない相手にしか言えないから、いゆも、その色んな人達にとってはそんな存在だったんじゃない?」


「チヒョンにそう言われても、私はそんな都合よく考えられない」




 風神館に近付いて行くと、気球の様な丸い大きな物が見えてきた。


「あれ何だろう。気球かな?僕気球に乗りたい!」


 段々と全貌が見えるとそれは白い風船で、四角い白の建物の上から出ている。私はリーフレットを開いてそれが何なのか探した。


「あ!あそこにあるのが、さっきアムリが言ってたうっ憤を溜める袋なんだって!」


「なんだ、気球じゃないのか」


「あんなに膨らんじゃって、建物事そのまま飛んで行っちゃいそうね」


「あれってどのくらい貯められぅわぁっ」


 いきなり服の裾を引っ張られ、後ろに倒れそうになった。振り向くと下には地獄探知犬がいた。


「人間、よく会うな」


「あ。こんにちは」


 正直、地獄探知犬達の顔は覚えていないので、みんな同じに見えるが、よく会うなと言われたので学食で声をかけられた地獄探知犬だと思う。


「あ。俺ちょっとトイレ行って来る」


 犬嫌いなチヒョンは足早にその場を離れた。それをみんなでふふふと笑う。


「さっきの小僧は何者だ?」


「友達だよ。動物が苦手なんだって」


 そう答えたが、地獄探知犬は聞いているのかいないのか、ずっとチヒョンを見ている。


「おい」


「はい。隊長」


「ニオイがあったよな」


「はい。普通の人間のニオイではありません」


「俺達を見て逃げたのも怪しいな。行くか」


 その一言で地獄探知犬達は遠吠えをし、チヒョンが逃げていった方へと一斉に走って行った。私達以外の近くにいる人達も何事かと騒いでいる。


「何で追いかけて行ったの?地獄探知犬の言うニオイってまさか地獄の臭いじゃないよね?」


 みんながまさかとアムリを見てスワンが口を開く。


「そんなはずないじゃない。チヒョンが地獄の住人だったら別でしょうけど」


 アムリがチヒョンに電話をしたが出ない。


「僕、近くのトイレに行ってみる!」


「俺も行くよ」


 二人が走って行った。


 前に学食で探知犬った時、かすかに地獄の住人の臭いがして来たと言っていた事を思い出した。そしてその時、チヒョンは犬が苦手だといって探知犬から逃げて隠れたいた。その時の臭いも、もしかしたら。


 スワンもそれに気づいのかハッとしたような顔をして私を見た。


 二人が戻ってきたが、チヒョンはトイレにいなかった様だ。


「もしかして、チヒョンって動物が苦手なんじゃなくて、地獄の住人だから地獄探知犬から逃げてるのかな。僕達が見学学習に行く前にどんなとこか話してたら、地獄はいいところじゃないって言ってたよね?」


「でも、まだ確定じゃないし。違うトイレにいるのかも。探しに行こうか」


 アムリが手に持っていたスマートフォンが鳴った。


「あ!チヒョンからだ!もしもし?・・・うん。わかった。ねぇ、チヒョンっ!あ。切れちゃった。チヒョンが先に帰っててだって」


「気になるわね」


「うん。どうする?僕達、このまま楽しめる気分じゃないよね」


「寮に帰ってチヒョンを待ちましょ」


 私達は就任式を見ずに寮に戻り、チヒョンからの連絡を待った。しかし、いつまでたっても連絡は来ず、夕飯時を食べ終わった後にも連絡は無かった。


「またチヒョンと連絡が取れないなんて。どうしていつも私達に心配をかけるのかしらね」


「部屋に戻ってるといいけど」


「チヒョンがいたとしても、地獄の住人なの?なんてさすがの僕も聞けないな」


 みんなは色々な事を言っているが、いつも一緒にいるチヒョンが地獄の住人な訳がない。そもそも地獄の臭いなんて全くしないし、見た目も全然違う。


 私は三人の会話には混ざらず、ただ話しを聞きながら一緒に寮に向かった。


 階段を登り切ると、廊下の壁にもたれかかっているチヒョンが見えた。


「チヒョン!今までどこにいたの?」


アムリの質問には答えず、チヒョンはただ一言「みんなに大事な話があるんだ」とだけ言った。


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