表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
71/137

落ち着きのないチヒョン


「さっき、死国管理局にいただろ?」


「いたいた。めちゃくちゃ怖がって子だね」


 探知犬達がげらげらと笑いながら言った。犬も笑えるんだ。


 スワンが「知り合いだったの?」と聞いてきたので「知り合いじゃないよ」と答えた。


「結構後ろの方にいたのに、よく私だってわかったね。あの時、その場であの人が食べられるかと思った」


「俺達は探知犬だ。地獄に住んでいる番犬達とは違う」


 番犬とは違うって事は、あの後ペトラちゃんはもしかして。


「食べる気になれば人間も食べるって事?」


 ペトラちゃんの名前は出さずにそれとなく聞いてみる。


「人間だって犬食べるだろ。それと同じだよ」


 という事はやっぱり食べるのかも。


「私は食べないよ。犬は一緒に暮らす家族の様な存在だし」


「私中国に行った時に食べた事あるわよ」


 信じられない。犬を食べるなんて残酷。私の表情を見てスワンが理解できないという顔をした。


「いゆって、牛も豚も鳥も魚も食べるでしょ?それと一緒よ。犬だけはかわいそうだから食べちゃダメなんて考えおかしいわよ」


 スワンの言う通りかも。牛や豚、その他の生き物を心から愛してる人にとったら、人間が食べる為に生き物を殺す行為は残酷なんて言葉じゃ足りない。


「そっちの子怖いこと言うね。でも、俺も同じ様な考えかな。命に優越はないよ。俺達も人間も他の動物もみんな同じ命を持っているんだからな」


「だからきちんと感謝しながら、私達は残さずに食べるのよ」


「俺達はドッグフードで十分だけどな」


「ドッグフードも残さずに食べるのよ」


「そんな事、重々承知だよ」


「ところで、ここにはどうして来たの?地獄の住人だと疑われているのかと思った」


 さっき、私を君と呼んだ地獄探知犬に聞いた。


「ははっ。お前は地獄の臭いがしないから連れて行かないさ」


「俺達がこの仕事をしているのは、鼻が優れているからなんだ。あいつらの臭いはシャワー浴びたって、香水をまとったってごまかせない。体に染みついてるからな」


「その臭いをたどってここに来たんだけど」


「どこにもいない。かすかな臭いだったから学校の生徒に紛れているわけじゃないのか?」


「食に飢えているだろうし、飯を食ってすぐに出て行ったのかもな」


「戻るか」


「おい、みんな戻るぞ」


「はい!隊長!」


 先頭にいたのは隊長だったのか。隊長だと分かると口調もそれっぽく感じる。


 隊長が先頭に向かって一、二歩進んで振り返った。

 

「人間達、もし地獄の住人にあったら遠吠えで知らせてくれ」


スワンが「オッケー」と返事をすると地獄探知犬達は学食を出て行った。


「スワン、遠吠え出来るの?」


「冗談に決まってるじゃない」


 そう言うとスワンは歩きだした。スワンも地獄探知犬も冗談を言うなんて、すごく意外。


「地獄の住人って地獄と同じ臭いなのかな?」


 先に歩くスワンの横に並んでなんとなく聞いた。


「あんな臭い人間がいたら人間の嗅覚でもすぐにわかりそうだけど。ところで、ご飯とみそ汁だけ?おかずはいらないの?」


「あ、忘れてた。先に戻ってて。おかず取ってくる」


日本食のコーナーに戻り、サバの味噌煮を選んですぐにみんなの席に向かった。チヒョンはまだ戻ってきていない様だ。


「いゆおかえり。ねえ、さっき前に並んでる人達が言ってたんだけど、日曜日、日本の雷の神様の就任式があるんだって!僕、雷の神様ってよく知らないけど。神様ならすごいって事だよね?みんなで行こうよ!」


「太鼓を叩く姿が見られるのかな?私も行きたい!」


 あの絵を小学生の時に初めて見た時、あの太鼓はどうやって鳴らすのか寝る時まで考えいたのを思い出した。


「なんで神様が太鼓を叩くの?日本の神様はバンドを組んでいるの?」


 アムリが不思議がっている。


「日本に、昔の人が描いた風と雷の神様の有名な絵があるんだけど、そこに太鼓も一緒に描かれているの」


 アムリがスマートフォンで雷神と検索をし始めた。


「本当だ、太鼓だ!この太鼓どうなってるの?背負ってるの?あ。チヒョン遅かったね。ご飯は?お腹空いてないの?」


 何も持ってきていないチヒョン。どこからか走ってきたのか息が少し荒い。


「ちょっと、トイレ行ってて」


「長かったわね」


「うん。お腹痛くて」


 チヒョンは落ち着きがなくキョロキョロしている。


「誰か探してる?」


 ホラールも回りを見ている。


「いいや。何を食べようかなと思って。ところでさ、あの、地獄探知犬ってもういない?」


「うん。僕達が席に着くころにはもうどこかに行ったよ。どうして?」


「あ。いや。実はさ」


 もういないと言っているのに、チヒョンはまだ探している。


「あのー・・・俺、犬が苦手なんだよね」


「え?」


 私達は一斉にチヒョンを見て笑い出した。


「チヒョン可愛い!僕、犬大好きだよ!」


「もし、遠くにいたとしても犬を見つけたら教えて。子どもの頃に噛まれて追いかけられてから、怖くて。どんな小さくて見た目が可愛くても本当に無理なんだ」


「分かったよ。ご飯取りに行ける?僕もついて行こうか?」


 ニヤニヤしてアムリが言った。


「うん。怖いからさ、俺の代わりに取ってきてくれない?肉が食べたいな」


「え?あ!チヒョン、そう言えば日曜日はみんなで天気館に行くことになったから。明日も授業があるし、早く食べて早く寝よ!僕も早く食べなきゃ。あー。食べるのに忙しい!」




「みんな、おやすみ」


 その後、地獄探知犬が現れる事なく、チヒョンも落ち着いてご飯を食べられたようだ。


 


「チヒョン。良い犬の夢、見られるといいわね。みんなもいい夢を」


「チヒョン。いい夢を」


「チヒョン!犬が夢に出てきたら僕助けに行ってあげるね」


 みんながチヒョンに挨拶をしてそれぞれの部屋に入った。


「最悪、ずっといじられそう」


「おやすみチヒョン」


 私もチヒョンに挨拶をして部屋に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ