綺麗事はクソな説教
本を読んでも、全くヒントになりそうな事は書いていない。目次を見て関連のありそうなページを見ても同じだった。しかも分厚いうえにつまらない。だんだん飽きてきた。
昼食後ということもあってか、とても眠い。
前に座っているチヒョンを見ると頬杖をついて真剣に読んでいる。
「本に飽きたの?」
本から目を離し、チヒョンが小さく笑って私を見た。
「うん。少し」
「帰る?」
「いや。ホラールの為に何かしなきゃ」
今は何が出来るかは分からないけど、本を読めば何かしらヒントが見つかるかも。
読んでいた本を閉じて、もう一冊の本を手に取った。
目次を見ているとチヒョンの手が伸びてきて、パタンと本を閉じられた。
びっくりして思わずチヒョンを見る。
「いゆ。今回の事に関しては、本を読んでも答えは出ないし、何度も言うけど、俺達には何も出来ないよ。何かをするには、その代償か必要なんだ。ペトラはホラールに会う為に悪魔と契約したって言ってただろ?」
「その契約の内容ってどんな内容なんだろう」
「さあ。それは俺もわからないよ」
その契約には書類があるのかな。契約書読んでみたいな。
「あ!クーリングオフ!クーリングオフがあるじゃん!」
8日間以内なら契約破棄ができるはず。何でそんな簡単なことを思いつかなかったんだろう。
ところがチヒョンはため息をついた。
「だから、ペトラはホラールに会う代わりに悪魔と契約をしたって言ってただろ?二人が会えたのは偶然だけど、もう会ってしまったからクーリングオフなんて無理だって言われるだろうし、会って無かったとしてもそれは不可能だよ。悪魔は常識や優しさなんて持っていない、クーリングオフなんてものないだろうし、簡単に契約破棄なんて出来ないんだよ。もし、いゆが代わりに契約をするならペトラとの契約は無くしてやるって言われたらどうするつもり?できるの?」
そんなの無理に決まっている。
「出来ないだろ?いゆがしようとしている事はたやすい事じゃないんだよ。何かをする時は、それなりの犠牲と覚悟が必要なんだ」
「うん」
「どうにかしたいっていう気持ちはわかるけど、もう少し大人にならないと。これは、頑張ればどうにかなるって子ども見たいな考えじゃ解決できない問題じゃないんだよ。いゆももう大人なんだから、人生の全てが頑張り次第で上手くいくわけじゃないのは理解できるだろ?どうにもならない事が、生国にも死国にもあるんだから。諦める事も受け入れたくない現実もきちんと見ないと」
「うん」
「帰る?」
私は返事をせずに頷いた。
「ん。帰ろう。本は俺が返してくるよ」
図書館を出てから、私は一言も話さなかった。話さなかったというより、自分はまだ子どもだと言われたようで恥ずかしかった。
確かに、昔は頑張れば何だって出来るものだと思っていた。しかし、就職活動はうまくいかず、頑張っても自分の思い描いた結果にはならない事があるという事は学んだ。なのに全く成長していない自分。結局、自分はまだ子どものままなんだ。
「ごめん。俺のせいで元気が閉じこもっちゃったみたいだね」
チヒョンが私の腕を掴んで立ち止った。
「ううん。違うの。チヒョンの言う通りだなと思って。それに、さっきの話しを聞いたら、次の自分の為に頑張る意味もないんじゃないかなと思って。どうせ、今頑張ったとしても、次の私は全部覚えてないし」
何だか、何もかもがどうでもよくなった来た。なぜ、今の私が次の私の為に頑張って勉強をしなければならないのか。
私になる前の私は、きっと死国で今の私の為に何もして無かったはず。だから私の人生は辛い事が多かったんだ。
「ごめん。そういうつもりで言ったんじゃないんだ。頑張る事は大事だよ。それは自分のエネルギーにもなるし。もし、自分の思い描いていた結果が出ないなら、それは、その結果に対する頑張りが足りなかったか、ただ頑張る方向が、正しく自分のゴールに向いてなくて遠回りしているだけかもしれないよ。だけど、その頑張りは違う所で力を発揮する事もある。自分が期待していた結果がでなくても頑張りは無駄じゃないよ。無駄な頑張りなんてどこの世界にも無い」
ふてくされている今の私には、綺麗事なんてクソな説教にしか聞こえない。
「そもそも、いゆが思っている事と、今回の事とは話は別だよ。ただ俺は今回の悪魔の件に関して、いゆには関わって欲しくなくて言っただけなんだ。俺もどうにかしてあげたい気持ちはあるけど、この件はホラールに任せよう」
チヒョンって冷たい。友達なら助け合いって必要じゃないの?
あの後ペトラちゃんがどうなったのかもになる。彼女は無事なのだろうか。




