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晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
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地獄管理局の見学


 扉の方を見ると、出てきていたのはやっぱりアムリだった。


「アムリ!」


 私は小声でアムリの名前を呼んだ。


「あ。いゆ!なんか平気そうだね。臭くないの?」


 意外と大きい声で反応されて、先生に注意されないか心配になりそっちを確かめてから「勿論、臭いよ」と小声で答えた。


「何よこの臭い」


「うわ。本当。酷い臭い」


 スワンとホラールも扉から出て来た。


「スワン!」


「いゆ。ここ、酷い臭いね」


 スワン達が出てきて、最後の人が扉を閉めると、再び扉が開いてまた色々な国の人が出てきた。


「全ての学年が集まったのでこれから見学学習に入ります。一通り見たら自由行動に入ります。死国へ戻る扉には鍵がかかっており、ある時間にしか鍵が回せないようになっています。その時間が過ぎると自動で施錠され、鍵が回らなくなります。次にこの扉が開かれるのはまた見学学習のある三年後になります。一人が遅れたとしても、待つ事はしません。時間厳守で集合して下さい」


「置いていかれるって事か」


 チヒョンがぼそっと言った。その言葉を聞いて思わず私はチヒョンの制服の裾を掴んだ。


「どうした?あ、もしかして怖いの?」


「煩い」


 私はしっかりとチヒョンの腕を掴んだ。


「では、みなさんは私について来て下さい」


「みんな、またあとでね」


 スワン達に小さく手を振った。


『ここは、地獄の釜と呼ばれている鍋です。地獄の人間を煮る窯になりますが、鬼の風呂場にもなっています。この鬼の入った風呂のお湯はここに住んでいる地獄の住人達の料理に使われます』


 料理ってちゃんと出るんだ。


 イヤフォンからアナウンスが流れた後、先生の補足が入る。


「近付いて見てもいいですよ。でも覗き込みすぎて落ちないように気を付けて下さい」


 地獄の釜は、力士が三人一緒に入ってもまだ余裕がありそうな程大きく、かなり深い。そして、黒光りをしていて、絶対に風呂掃除をしていないだろうと思わざるを得ないくらい汚い。地獄に掃除という概念があるのかどうかは分からないけれど。


「なんか伝統のたれを引き継いでますっていう壺みたいだね」


 背伸びして中を見るが、釜が大きすぎて中が見えない。


「べたべたしてる」


 チヒョンは私が掴んでいない方の手を釜について中を覗き込んだ。


「ああ。皆さん。風呂には触らないように。地面と同じように血でべとべとしています」


 先生のその言葉に小さく悲鳴がわいた。それよりも、私は地面のべとべとの原因がわかりとても鳥肌が立った。


「この地獄の世界には手洗い場がないので死国へ帰るまで手は洗えませんよ」


 その言葉を聞き、チヒョンは自分の手を見てから私を見た。私は今まで掴んでいたチヒョンの腕をぱっと離した。


「絶対その手で私に触らないで。でも遠くにも行かないで!」


「では、次に行きましょう」


 観光客の団体の様に先生の後を歩く。どこまで行っても薄暗く気分までも暗くなってしまいそうだ。臭いのせいで気持ち悪くなってきた。口の中が胃液で酸っぱい気がする。


 次に来たのは、腰くらいの高さの長方形の台が等間隔に並んでいる所だった。先程の地獄の釜以上に汚く黒光りしている。台の横には、地獄と不釣り合いな程ピカピカに輝いている刃物が何種類もあった。綺麗過ぎて鏡にも使えそうだ。


 私はそれを見ただけで何をされる所なのか大体予想がついて、チヒョンの汚れていない方の制服の裾をとっさに掴んだ。


『作業場です。ここは鬼が地獄に来た人間の手、足、首、体などをバラバラにする所です。この後に、地獄の釜に入れられぐつぐつと煮られます。別名、地獄の鬼の遊び場と言われています』


 やっぱり私の予想が中っていた。


「アナウンスにあったように、ここは作業場となっています。自分の命を無駄にしたのですから、鬼達が煮ても焼いてもいいでしょう、と言う事で、ここはその下準備の部屋になっています。腕などを切り落とされても意識はあり、鍋に入れられるのですが、痛みに耐えられず、気絶して目が覚めると、腕、足全部が戻った状態で再びこの台に戻ってきます。毎日、ここで切られてバラバラにされるか、重労働をさせられるか、それの繰り返しです。昔は作業中の見学がありましたが、見学中に吐いたり、気絶したりしてしまう生徒が多くいたので、作業見学は全て中止になりました」


 クラスメイトの男の子がその話を聞くなり吐いてしまった。私も貰いゲロをしそうになり、吐いている姿を隠すようにチヒョンの後ろに隠れた。


「あら。大丈夫ですか。先週朝ご飯は程々にと言ったのに、しっかり食べてきましたね。全部出しちゃいなさい」


 先生がその子の背中をさする。その様子を見ていた別のクラスメイトが「俺はちょっと見てみたかったな」と言うと、その周りのつるんでいる連中達も便乗して嘲笑った。


 どこの世界にも人を馬鹿にするような人っているんだな。嫌な感じ。


「あなた」


 先生にもそのこおばが聞こえたのか、ゆっくりと振り向いて立ちあがると、ケラケラと笑っているクラスメイト達を指差した。


「自由行動の時に悪魔に気をつけるように。この見学学習ので時折、生徒が消える事があります。消えるのは決まってあなたみたいな生徒です。悪魔にそそのかされて、好奇心でついていくと地獄の住人にされてしまいます。ここの住人になりたいのであれば別ですが。私達は一切探しにはいきませんよ」


 それを聞いて嘲笑っていたクラスメイト達は委縮し、他のクラスメイト達もさっきより静かになった。


「あなたは胃の中身を全部出ましたか?それでは次に行きましょう」


 私達の学年は、地獄管理局に戻り建物の中の見学(ここはとても綺麗で外のように臭いも無く、働いている人達は普通の人間に見えた。しかしみんな笑顔がなく、態度も心も冷たそうだった) を見学し、地獄の住人になった時につけられる地獄人の証をつける部屋の見学もした。


 それから閻魔大王様と言う、日本の地域では一番偉いらしい人の話を聞いた。間に布のような仕切りがあり、直接見る事は出来なかったが、そのシルエットは簡単に踏みつぶされてしまいそうなくらい大きかった。


 質問タイムなんてのもあり「この仕事をしていて一番辛いことは何ですか?」なんて聞いている人がいた。因みにその答えは聞かない方がいいと思う。


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