ほの字
「こんなハチマキで本当に頭痛が治るの?」
アムリは布の切れ端で出来たハチマキを両手で持ってびょんびょんと左右に引っ張っている。
デパートでお昼を食べてから私達は韓国町へ行き、薬屋さんに行くと「お金はいらないからこれを頭に巻いてあげなさい」とハチマキを渡されたのだ。
「韓国人がそう言うならそうなんじゃない?」
と言いつつも、私もなんではちまきなのか分からない。
寮についてチヒョンの部屋の扉をノックしたが返事がない。「開けるよ」と言ってホラールが扉を開けた。
「チヒョン頭痛に効く物貰って来たよ」
「いない?」
ホラールの脇の下からアムリが顔を出して中をのぞいた。
「うん。まだ帰ってないのかな」
「どこかで倒れてるとかじゃないよね?やっぱり一緒に帰ってあげたらよかったね」
布切れを机の上に置いて、私達は各自部屋に戻った。
夕飯の時間になってもチヒョンは戻らず、その後、何度か部屋に行ってみたがチヒョンはまだ戻っていない様だった。
「チヒョン大丈夫なのかしら」
「もしかしたら頭痛が治ってどこかに遊びに行ってるのかもしれないよ」
例のお姉さんの所にいるかも。
部屋のソファに座り、買ったばかりのスマートフォンを眺めながらスワンに返事をした。
厳密に言うとスマートフォンを見ているのではない。スマートフォンの画面に映っている、メッセージアプリのホラールのプロフィール写真を見ているのだ。
口元に手を寄せて笑っている彼の顔がイケメンで、更に少年っぽさも綺麗さもすべて持ち合わせていて、私の目を離させてくれない。あわよくば保存したいくらいだ。
スワンが近づいて来く気配がして、私は急いで今日みんなで撮った写真に画面を変えた。
「何見てるの?」
「今日デパートで撮った写真」
「さっきからそれを見ていたの?」
「うん」といって私は嘘をごまかす為、画面を閉じて机にスマートフォンを置いた。
「いゆって、ホラールの事好きよね?」
「えぇ!?」
思いがけない発言に私はスワンから少し離れた。
なんて答えるのが正解なんだろう。もしかして、私の方が先に好きだったのに!っていう少女漫画の展開になったりしないよね。スワンと仲が悪くなるのは絶対に嫌だ。
「因みに私は好きじゃないわよ」
私の考えが顔に出ていたのか、スワンは笑いながら言った。
「どうして分かったの?」
「ホラールと話してる時、いゆの顔がほんのりピンク色になるのよ」
「顔が?本当?自分じゃ分からなかった。実はチヒョンも知ってるの。チヒョンには自分から言ったんだけど」
もしホラールにも気付かれていたら恥ずかしい。明日からどんな態度で接したらいいか分からない。
「ホラールとアムリは気付いていないと思うわよ。それと、一つ言っておきたい事があるんだけど」
スワンは私の手を取って話しにくそうに顔を歪ませた。




