お茶のフロア
「中国茶屋は三十五階にあるから、三十階直通のエレベーターに乗らないと」
三と大きく数字の書いてあるエレベーターに乗り込み、スワンは五階のボタンを押した。
「五階?三十五のボタンは無いの?」
「三十階のエリアしか停まらないから零から九の数字しかないのよ。三十一階に行きたい時は一のボタン。私達は三十五階に行きたいから五のボタンよ」
さっき直通って言ってたか。
エレベーターの扉は、真ん中が大きな丸にくり抜かれていて、そこだけガラスになっている。床以外の天井と壁三面はガラス張りになっており、地上に出ると外の景色が遠くまでよく見えた。
生国ではあり得ない速さでどんどん上がる。
二十九階迄エレベーターは一切止まらず、三十階からは降りる人、乗る人がいる度に止まる。
外を見ると太い道がまっすぐに伸びていてその先に建物が建っている。
「あの真ん中にある大きい建物は死国管理局よ。その管理局からそれぞれ傘の骨組みみたいににまっすぐ伸びている道を行くと、私達の学校や各区につながっているの」
私が建物をずっと見てるのに気づいたのかスワンが説明してくれた。
やっと三十五階に着いた。
扉が開くとデパートの入り口の時とは違い、お茶の匂いがぶわっと押し寄せてきた。
「うわー!いい匂い!」
私は思わず深呼吸をする。
「中国町ではこんなに沢山のお茶屋さんが無いからこんな匂いは味わえないのよ。中国茶屋はこっち」
きょろきょろと周りを見ながらスワンの後についていく。今歩いているのは日本茶屋、台湾茶屋、香港茶屋と、通るお店にはアジアの名前がついていた。
店員さんは男の人も女の人もみんなその国の民族衣装を着ていて、中国茶屋の店員さんもやはり中国っぽい民族衣装を着ていた。
アジアの民族衣装ってかっこいいな。
「いらっしゃいませ。スワン様。いつもありがとうございます」
スワンの名前を憶えていると言う事はきっとこのお店の常連なんだ。
「おはようございます。朝摘みの茶葉まだありますか?」
「はい、もちろんでございます。今お持ち致しますので少々お待ちくださいませ」
スワンが店員さんと話している間、私はお店の中を見て回る事にした。
お店には手を出しやすい安価なお茶から高価なお茶まで種類が沢山あった。
百グラム十一円・・え?違う十一万円だ!げ!高っ。
思わず声に出しそうになり口を押える。この量でこんな値段。こんなに高いのに、鍵付きのケースに入れなくてもいいのかと私の方が不安になる。その高級茶葉の隣の棚には、花が入れられている透明な急須が沢山並んでいた。
「わ。綺麗」
「ありがとうございます。それは、工芸茶といって、目でも楽しむことが出来るお茶なんですよ」
いつの間にか後ろにいた店員さんが急に説明した。
「あ、そうなんですか。初めて見ました。綺麗ですね」
「色々な種類があるんですよ。飲んだ後は、毎日水を換えれば一週間程度観賞用として楽しめます」
「へー・・・」
どうしよう。買う予定ないのに店員さんがずっと横にいて気まずい。
「すみませーん」
「はい!お客様。何かございましたらお声がけ下さい」
そう言ってお辞儀をし、店員さんは呼ばれたお客さんのもとへ向かった。
よし、今がチャンス。私は急いでスワンの元へと小走りで戻り、スワンのお会計を待った。中国のお茶って面白いな。日本ではこんなに色々な種類のお茶を見た事がない。
「いゆ、何か買うものある?」
「ううん。大丈夫。あのお茶綺麗だね」
私はさっきの工芸茶を指さした。
「あの花のお茶?確かに綺麗だけど正直あまり味しないわよ。見る専用って感じね」
中国茶屋を出た後、私達はインドやイギリス、世界各国のお茶屋を見て周りながら、電気機械製品のフロアへエレベーターで向かった。上へ上るにつれて、だんだんと嗅ぎ覚えのある匂いがしてきた。そして少し怖い羽の音もする。
「この匂いとこの音って」




