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「おはようございます。今日の授業を始めます。最初にもお話をしましたが、この学校は七年生迄あります。死国で好きな事を学び、その技術を身につけ、その特性を持って生まれ変わります。生まれ変わりの試験に合格したら、すぐに手続きをして頂きます。特に希望が無い場合は、試験を受けずに手続きだけをします。しかし、生まれ変わるのが嫌で手続きをしなかった場合、やる気がないとみなされ地獄に強制的に送られます。そんな人は今迄に見た事ありませんけどね」
「もしそうなったらどうなるんですか?」
クラスメイトが質問した。
「地獄で一年間過ごした後に、動物に生まれかわります」
動物と聞いてクラス中がざわめいた。
「といっても今の記憶を持ったままの食用の動物ではありません。動物になるのが嫌であれば、地獄で三十三年間過ごせばまた人間の魂になります」
「死国にいる動物達は、元々人間だったんですか?」
別のクラスメイトが質問した。
「いいえ、みんなではありません。その命が出来てからずっと動物だった魂もいます。皆さんが元々なんの魂だったかは、遺伝子検査すればわかりますよ。気になるのならば医務室で遺伝子検査をしてみて下さい」
自分は船仂家のご先祖様の生まれ変わりだと思っていたが、もしかしたら違うかもしれない。ちょっと遺伝子検査興味があるな。私は元々何処の国のどこの人間だったんだろ。もしかして動物だったのかな。なんか珍しい遺伝子だったらいいな。あ、ホラールはもしかして妖精の生まれ変わりだったりして。
昨日のホラールの姿を思い出し自然と顔の筋肉が緩んだ。最近ホラールの事を考えると顔がにやける所まで来てしまった。一人でいる時は気を付けないと。私はにやけ顔を隠す為に顔を手で覆った。好きな人がいるって心がうきうきして楽しい。
ホラールの事を考えていたら授業は違うテーマになっていた。私は自分の両頬を小さく叩いた。
午前の授業が終えてから私は早速パスポートを作る為、死国管理局に向かった。行き方が分からずチヒョンも一緒に来て欲しかったのだが、用事があると断られてしまった。
学生ならバスは無料で乗れるよ、とチヒョンが教えてくれたので、学校前のバス乗り場から、乗り換えなしで死国管理局まで行ける直通バスに乗った。
相変わらず死国管理局には人が沢山いる。人の間を潜り抜けて何とか受付に着いた。意外と受付は混雑していない。
「あの、パスポートを作りたいんですけど」
「はい、かしこまりました。では、そこの記入台でこちらの紙の太枠で囲まれた所だけを記入して下さい。学生の方ですよね?」
「はい」
「学生証のコピーをとらせて頂きたいのでお預かりさせて頂きます。後でお返しするので申請書に記入していて下さいね」
私は学生証を渡し、紙を受け取ってから記入台に移動した。記入するのは、名前と生年月日と死亡年月日、身分証明カードまたは学生証の番号。
『続いてのニュースです。死国と生国があらゆるところで繋がってしまう問題で、地獄と繋がっている可能性もあるとし』
人々の話声で賑わう死国管理局だが、ふとテレビの声が気になった。これ、初めて学校に行った時に先生が言ってたやつだ。
『地獄の住人が生国に不法入国している可能性があるとし、死国管理局が地獄の番犬を派遣すると発表をしました』
地獄の番犬って名前からして強そう。トゲトゲの首輪をした土佐犬ドーベルマンが浮かんだ。
町中に怖そうな犬が沢山いるなんて怖いかも。
『続いていてのニュースです』
早く書いて学食に行こう。
必要箇所二記入をし、窓口に向かった。
「これ、お願いします」
「はい。こちら、お預かりしていた学生証です」
身分証カード番号を書いていない事を思い出し、一度提出した紙を戻してもらい、番号を記入してまた提出をした。
「では、こちらに来てこの椅子にお座りください。いまから虹彩認識と指紋認識と輪郭認識のデータを取りますので、じっとしていて下さいね」
生国でパスポートを作った時より色々とデータを取られている。
「以上で終わりです。今日の午後五時迄には仕上がりますので、それ以降でしたら、いつでも来ていただいて大丈夫です」
思ったより早く終わり、暇になってしまった。こんな時にスマートフォンがあれば死国について調べて出かけることが出来て便利だったな。
「俺、明日の用事が無くなったから明日デパートに行こうよ」
夕食時、一人だけご飯も取りに行かず、
ずっとスマートフォンをいじっていたチヒョンが言った。
「え!そうなの?うんそうしよう!明日行こう!何時に行く?僕達は平気だけど、スワンは朝早いの苦手だよね」
誰にも一言も話をさせない様に、アムリが間を入れずに言う。
「私が起きた時間」
いつもぎりぎりまで寝ているスワンらしい答え。それに了解している二人だが、結局何時に起きたら良いんだろう。
「俺この後約束あるから先行くね」
チヒョンが立ちあがり、コップに残っていたコーラを一気に飲み干した。
「また?午前の授業が終わった時もどこかに行ってたよね?どこに行くの?」
「おデートです」
チヒョンが満面の笑みで答えた。
「本当に?」
アムリが驚いた顔で聞いている。
「うん。お姉さんが俺に会いたいってうるさくってさ。もう、可愛くてたまらない。じゃ、みんな、また明日」
チヒョンはこちらを一度も振り返らず学食を出て行った。




