違う声
聞き覚えのある声に目を開けるとスーツ姿のチヒョンが立っていた。私が落ちてきた部屋を見上げている。
「チヒョン!」
差し出された手を取り、私は立ちあがった。
「なんで窓から降りてきたの?普通に出入口から来たらいいのに。脱走?悪い事したの?」
「いや。そうじゃなくて!」
「ちょっと!」
部屋で聞こえた声とは別の声が聞こえる。チヒョンの手首をぎゅっと掴み声の主をきょろきょろ探す。
「人間!」
さらに違う声だ。
「チヒョン。私、幽霊の声が聞こえるの」
チヒョンにだけ聞こえるくらいの小声で言った。
「幽霊?」
「しっ!幽霊に聞こえちゃうから小声で話して。さっきも部屋で声が聞こえて、怖くて。そしたらゴキブリがいてそれでビックリして窓から落ちちゃったの」
その話を聞いて、チヒョンはははっと小さく笑った。
「多分、その最初の声は幽霊じゃないと思うし、今も怒っている声が聞こえていると思うけど」
チヒョンは私が落ちた植木を指差した。
「植木?植木がどうしたの?」
寮の周りに植えられている植木がクッション代わりになってくれたようだ。私が落ちた部分が不自然に凹んでいる。
「そっちの人間!」
「はい」
知らない声にチヒョンが返事をした。
「その子はどこの国の人間なんだね?まったく。謝罪もできない国からやってきたのか!」
「いゆ。植木達にごめんなさいを言わなきゃ」
笑顔でそういうチヒョンだったが、ふざけているようには見えず、私はとりあえず植木向かって「ごめんなさい」と謝った。
「全く!こっちは気持ちよく寝ていたのに」
「そうよ!とんだ迷惑だわ」
二人の声に私は怒られている。訳が分からずチヒョンを見ると「この世界の命のあるもの全てと会話ができる事忘れた?」と言われた。私は植物話せる事を思い出し、落ちた所の植木に向かって今度はきちんと謝った。
「ごめんなさい。この子虫に驚いてしまったみたいで」
「わたしのせいなんですー!」




