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晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
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大人


「あら!」


 チキン屋さんに入ると、店員のお姉さんがチヒョンを見て笑顔になったが私を見ると少し驚いた顔をした。


「ごめんなさい。いらっしゃいませ。三番テーブルに座って下さいね」


「チヒョン、あのお姉さんと知り合いなの?」


「いいや?人違いじゃない?」


 窓際の席に座り、テーブルに備え付けてあるタブレットでメニューを見る。


 なんだろ?私何か謝らせるような態度を取ったかな。


 もしかして、あのお姉さんチヒョンに片思いをしていて、私がチヒョンの彼女とだと勘違いしたのかも。

 

「チヒョン、思わせぶりな態度は駄目だよ」


「は?何の話?なあ、俺の好きな味でいい?辛いのが苦手とかある?」


「ううん、何でも大丈夫」


「おっけ」というとチヒョンは通話と書かれたボタンをタップした


「お姉さーん。注文します。フライドチキンと甘辛チキンをハーフでください。あとウーロン茶とビ

ール。いゆ、ウーロン茶飲み放題にする?」


「うん」


「ウーロン茶とビール、飲み放題でお願いしまーす。以上です」


「かしこまりました」


 チヒョンは通話終了ボタンをタップした。


「私、学食以外でご飯食べるの初めて」


「三人といる時はいつも学食だもんね。学食飽きない?」


「色んな国のご飯があるし、毎日メニューが違うからまだ飽きないよ」


「そっか」


 さっきのお姉さんが蛇口のパイプの部分とコップを二つずつ持ってやって来た。


「飲み放題の準備をしますね」


 お姉さんがテーブルの横にあるスイッチを押すと、机から蛇口のパイプとぴったり合いそうな筒が

二本出てきた。筒にはめられたシリコンキャップを外ずし、持ってきた蛇口のパイプをくるくるとねじの様に回してそれぞれ取りつけた。


 私は準備をしているお姉さんとチヒョンの顔をニヤニヤしながら交互にチラ見する。


「ちょっと出して飲んでみて下さい」


 チヒョンは取り付けられた蛇口の下にコップを置きボタンを押した。すると、チヒョンの方の蛇口からは金色の液体。私の方からは焦げ茶色の液体が出てきた。


「いゆ、飲んでみて」


 焦げ茶色の液体を渡された。きっとウーロン茶なんだろうけど、得体のしれない物を口に入れたくはない。が、一口飲んでみる。


「ウーロン茶の味がする」


「よかった。大丈夫です」


「料理はテーブルが開いて下から出で来るので、料理が出てく時はテーブルの上に物を置かないで下さいね」


 お姉さんが厨房に戻るのを確認してから、私はチヒョンに「ありがとう」と言った。


「いじめられていた話をした時に、私と一緒にあの人の悪口を言うんじゃなくて、あの時の私に頑張ったねって言ってくれて嬉しかった」


 自分の気持ちを言葉にするのはやっぱり少し恥ずかしくて照れる。


「嫌な事は考えないのが一番だよ」


「うん。でもね、さっきもそうだったんだけど、辛かった事や嫌な事って、夜寝る前とか、ぼーっとしている時にふと思い出しちゃうんだ。そして嫌な気分になるの。幸せだった時とか楽しかった時の思い出ってなかなか思い出さないし、思い出しても心がウキウキしないのに。どうせなら良い事だけ思い出したい」


「それは、いゆが大人になった証拠だと思うよ」


 大人になった証拠か。

 

 大人になりたくなかったのに、私はいつの間にか大人になっちゃってたんだなあ。


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